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【経済】解散には大義がある。ただし、郵政解散相場のようになるには条件がある


複数の報道によると安倍首相は消費税再増税の延期と衆議院の解散・総選挙の意向を固めた模様である。これに対して野党などからは、今回の衆議院の解散には「大義がない」という批判がなされている(少し前までは「堂々と受けてたつ」と言っていたようだが・・)。 しかし、憲法解釈論的には衆議院を解散すべき時(してもよい時)とは、「重要な政策について、前の総選挙時から事情が変化し、新たに国民の承認を得るべき場合」が挙げられている。 今回の消費税増税により景気が予想以上に悪化し、法律で予定していた消費税再増税を実行できないのではないか、という事態はまさにこれに当てはまる。 消費税再増税という国民経済について重大な影響を及ぼす事項について、予定通り実行するのかしないのかあるいはどのような形で将来実行するのかについて、「現時点の」民意を問うということである。消費税再増税についてはいわゆる「景気条項」がある為、新たに民意を問う必要はないという見解もありうるところだが、専門家の間でも意見が真っ二つに分かれ、与党のなかでも異論が多数あったのであるから、これについて主権者である国民の意見を聞くというのは至極まっとうなことだ。少なくとも安倍首相が独断で決めるよりは国民の信を問うほうが民主的であろう。 消費税再増税に関するワン・イシュー選挙となった場合は、同じく郵政民営化のワン・イシュー選挙で大勝した小泉内閣時の郵政解散相場を思い起こさせる。郵政解散相場では衆議院解散時のみならず解散後も継続的に株式相場は大きく上昇した。しかし、郵政解散相場は単に郵政民営化への期待で相場が上昇したわけではない。郵政民営化を端緒として、小泉改革により日本全体の構造改革が大きく前進することを期待して上昇したのである。 今回の解散が郵政解散相場のような展開になるためには、安倍首相も消費税再増税延期を示すだけではなく、いわゆる第三の矢がしっかり飛んで改革が行われ、景気回復の道筋がつき、これにより将来的には財政再建も着実に行われるであろうことを示す必要がある。 なお、野党第一党の民主党は解散風が吹く前は「消費税再増税を予定通り行わないのはアベノミクスの失敗を意味する」として予定通りの実行を迫っていたが、解散が確実視されるようになったとたん「消費税再増税凍結」の方針に転じた。これで争点がややぼやけた感じはあるが、与野党は延期なのか凍結なのか(どのように将来財政再建するのか)と、デフレ脱却や景気回復の方法と併せて、明確なビジョンを提示して国民の信を問うべきである。
《YU》

 提供:フィスコ

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