【市況】高岡隆一の【今日のポイントとヒント】 「手足を縛られ始める安倍総理」
●日銀と国民の間で難しい立ち位置
何となく元気がない、そんな感じを受ける東京市場だ。
8月8日、オバマ大統領がイスラム国空爆を発表、驚いた日本株は大きく下げたこの日、25日騰落レシオは78.03%で底打ち。その後は株価反転とともに騰落レシオも上昇し100%回復となる。
今回なら10月17日を下値に株価は反転。同日の25日騰落レシオは69.42%で底を打つが、その後の戻りが緩慢だ。
騰落レシオの戻りが鈍いのは、値上がり銘柄数の増加が鈍いということ。日経平均ほど上昇傾向の銘柄は意外に少ない、こういうことを表している。
もちろん、何らかのキッカケで全面高となり、25日騰落レシオが急上昇する局面がくるかもしれない。しかし、現時点ではそうした動きが見られていない。
これは今の株価水準を魅力的と考える投資家の買いが少ないか、今後の企業業績に不安感があり、1年後、2年後、今の株価が今後の利益推移と比較して割安と言えるか自信がない、ということだろう。
今日も日銀総裁と副総裁が参議院の委員会で答弁している。消費税を上げないと日本の信頼に傷が付き、国債の値崩れなどが起こった場合、国も日銀も対応は不可能で増税は避けられない。こうした趣旨の答弁をしている。
この発言は以前も同じ内容を語っており、目新しさはない。ただし、日銀は増税やるべし、国民は反対。総理はこの中間にあり、対応が非常に難しい。ここを市場が嫌気し始めている可能性はある。
●日本株の突破口は移民策しかない
今後、総理が増税を決断した場合、日銀の追加緩和も加われば短期的な株価は上がるだろう。が、有権者の反対を押し切っての増税だ。次の選挙は危ないだろうし、支持率が下がると安倍降ろしが自民党内で活発化する。下手をすると、改革に後ろ向きの新総理誕生、こうしたシナリオだって十分あり得る。
小泉→安倍の後、福田→麻生→選挙で大敗→民主党政権。国民が嫌う改革を進め失敗すると、必ずその反対方向の政権が誕生するのは、過去の例を見ても明らかだろう。
つまり、安倍総理の求心力の低下は、反改革派の勢力拡大・反改革的な政権誕生→外国人売りに繋がる。
では、増税を見送った場合はどうだろう。構造改革の遅れが懸念されるし、法人税改革にしても赤字法人への課税など増税部分を景気悪化を理由に縮小させれば、財源が少なくなり、減税規模も小粒になる。
これも改革の遅れ→外国人売り、つまりどっちに転んでも総理の手足が縛られマイナスの影響、こういう構図が意識されているとすれば問題である。
安倍+黒田両氏によるデフレ克服策。全ての政策やアプローチの仕方がよいとは思えないが、もしこれが失敗に終わると日本人の性格からして、5年や10年は非改革を支持。円高万歳・物価下落大歓迎、そして気づけば借金は1000兆円が1500兆円に。消費税10%増税が待っている。
こういうことがないよう、国民に解りやすいデフレ克服の必要性の説明、これに尽きると思う。
そして毎年、日本人が減少する人数分だけ移民を受け入れて人口水準を維持する、こういう意外性のある、そして少子化対策にも増収策にも直結する政策が打ち出されれば、「買い、買い、買い」で年末を迎えられると思うのだが……。
(10月28日 記)
情報提供:高岡隆一の株価天気予報
(「株探」編集部)