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【市況】【井上哲男のストラテジー・アイ】


「45日ルールのウソ」

 外国人の先物残高、裁定買い残、信用買い残高などの需給残高に大きな不安材料が無いときは、テクニカル指標による相場の予想が有効であることは以前述べた。しかし、テクニカル分析が絶対的であるかというとそうではない。

 「テクニカルが効かない」とか「チャートが壊れた」と言われたことが、私の計測では過去20年間に3回ある。それは、「欧米の金融機関に信用不安が連鎖した2期間」と「米国で共和党と民主党の財政協議が不透明感を増した時期」である。具体的には、前者が「サブプライム問題(リーマン・ショックを含む)」と「欧州財政危機」であり、後者は2011年8月の米国株の急落である。

●“本当の”ヘッジファンドがもたらす需給

 「10月は鬼門」とよく言われる。今年8月の寄稿で「日経平均の今年の高値1万6400円。時期は10月、11月の大型ファイナンスが終わってから年末までの期間」と書いたが、やはり、10月は日米ともに大型ファイナンスの影響を受けたといえる。しかし、それは『鬼門』の理由ではない。

 よく「45日ルール」という言葉を目にする。新聞にも引用されるが、これは、ヘッジファンドの決算期が12月末で、その解約通知は45日前までに行うので10月中旬にかけて株式市場に売りが膨らむ、というものである。

 実際にヘッジファンドの運用にあたった私からすると、これは大きな誤解であると言わざるを得ない。12月末決算のファンドとは、基本的に分配金を余裕をもって3月の決算前に入金させたい日本の金融機関向けのファンドに多く見られるが、その他のヘッジファンドの決算期は10月末から11月末がピークなのである。つまり、もう解約の通知は終わっており、その通知を受けたファンドが換金売りを行うのがこの時期なのである。

 ただし、解約を行った投資家はその資金を他のヘッジファンドに移すことになる。そのため、新たな資金の入ったファンドのポジション組成が始まる11月中旬以降は、日本の9月末決算を見て組み入れを変更する欧州の年金の動きと相まって、往々にして相場が強含む傾向にある。つまり、10月から年末までは需給要因が非常に強い相場となる傾向があるのだ。

●テクニカルが教える「底打ち」

 となると、現在が冒頭に書いたチャートが壊れる条件下でない以上、テクニカル分析は有効であると考えられる。

 今まで、いくつかのオリジナルなテクニカル分析サインを紹介してきたが、○ダウの25日移動平均からの乖離率-4.5%、○同50日移動平均からの乖離率-4.5%、直近16営業日における100ドル以上ダウの終値が前日比で動いた日数12日以上、○ダウの9日/3日のストキャス(ファスト%K、%D)、(スロー%D)の3つとも10%未満でSRI14日が36%未満、25日移動平均からの乖離が-2.5%未満のダウ5サイン、など、年に1~3回程度しか示現しないサインが先週後半に相次いで点灯した。相場は底を打ったと考えている。

 今回の急落の原因となった「欧州の景気停滞が与える世界景気の不透明感」であるが、今年5月まで続いたユーロ高の影響により欧州の景気停滞はまだ続くであろうと思われるものの、前回も書いたようにECBには国債買い入れと銀行への資金供給(TLTRO)(本来はこれ以上期待インフレ率を下げたくないので使いたくはないが)という切り札が残っており、底割れは避けられると考えている。

 最後に相場が安定して上昇トレンドに回帰したと判断されるタイミングをやはりテクニカル・サインから予想する。「(ダウの50日移動平均-100日移動平均)/ダウ現値」が底を打って上昇に転じるタイミングは、相場の大底からやや遅れて示現することを繰り返してきた。もし、現在のダウの水準が連日変わらなかったとしたら、その反転は12月初旬に起きる。

2014年10月23日 記

スプリングキャピタル株式会社 代表
井上哲男

(「チャートブック週足集」No.1997より転載)

(「株探」編集部)

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