【特集】ネットイヤーグループ<3622>収益成長をもたらす市場領域が「オムニチャネル」
ラジオNIKKEI マーケットプレスの『フィスコ presents 注目企業分析』10月16日放送において、ネットイヤーグループ<3622>を取り上げている。主な内容は以下の通り。
■会社概要
インターネット技術を活用したデジタルマーケティング支援事業を手掛ける。顧客は大企業向けが中心。子会社のトライバルメディアハウスはソーシャルメディアに関する分析・コンサルティング分野で業界トップクラス。
■デジタルマーケティング支援事業とは
デジタルマーケティングとは、企業活動において自社Web サイトを中心に、既存メディアや営業、コールセンター、店舗などと連携させるマーケティング手法で、企業や自治体などのクライアントに対して、新たなデジタルマーケティング戦略を提案・実践していくことで、クライアントが目標とするブランド力向上や売上成長、業務変革の推進などの成果を導いていくサービスとなる。
■同社の特徴的な部分
同社の特徴は、Web 上での「ユーザーエクスペリエンス(UX)」を高めることに焦点を当てたシステム開発・設計を行っていることにある。ユーザーエクスペリエンスとは直訳するとユーザー体験のことだが、ここでは「自社Web サイト上に利用者が訪問した際に体験すること、また体験して興味・関心も持ってもらうこと」を指し、「ユーザーエクスペリエンス」を高めることで、商品の購入につなげる、あるいはその企業のファンになってもらう、ということが最終的な目標となる。
■サービスの具体的な内容
サービスはクライアントごとのカスタムサービスとなる。一般的に開発期間は3 ヶ月程度、長いものでも1 年程度となっており、通常のシステム開発会社と比べると短い。プロジェクト管理も比較的容易で、開発納期が遅延することはほとんどない。また、システム開発部分に関しては大半を外注しており、売上原価に占める外注比率は50% 前後で推移している。受注単価は少額のもので10 万円から、高額のもので100 百万円を超えるものまでプロジェクトの内容に応じて様々だが、最近では「データ分析・活用」を採り入れたマーケティング手法の需要が高まっており、プロジェクトの規模も大型化する傾向となっている。
■具体的なクライアント先
クライアントの業種としては、情報通信業や消費財メーカー、外食、小売業界などが比較的多い。現在のアクティブクライアントは単独で約200 社、トライバルメディアハウスを合わせて400 社程度となっている。2014年3 月期において、売上構成比で10% を超える顧客はないが、ここ数年はKDDI<9433> が毎年10% 以上の主要顧客となっていた。2014 年3 月期においても10% 弱の売上構成比だったとみられる。その他の主要顧客としてはLIXIL グループ<5938>、伊藤ハム<2284>、スターバックス コーヒー ジャパン<2712>、ニコン<7731>、NEC<6701>、三井不動産<8801> 等が挙げられ、大企業が売上げの中心を占めていることも特徴となっている。
■2015年3月期の業績見通し
15年3 月期の連結業績は、売上高が前期比10.2% 増の5,900 百万円、営業利益が同11.3% 増の210 百万円、経常利益が同9.9% 増の210 百万円、当期純利益が同69.2% 増の100 百万円となる見通し。
2015 年3 月期の事業方針としては、デジタルマーケティングサービスの強化、データ活用サービスの強化、社内体制の強化と3 つを掲げ、収益基盤の強化による業績の拡大を進めていく戦略。
■具体的な戦略
デジタルマーケティングサービスでは、特に需要が拡大しているデータ活用・分析分野のサービスを強化していく方針だ。自社Web サイトやSNS、リアル店舗などのユーザーデータを一元管理し、最適なコンテンツを配信するためのDMP (Data Management Platform) だけでなく、運用サービスの提供も行っていく。
データ活用サービスでは、企業のすべての活動をデータ化し、分析していくことで、マーケティング領域においては顧客企業のROI (投資対効果) の最大化、カスタマーサポート領域においては顧客満足度の向上、社内業務領域においては、生産性の最大化をそれぞれ目標にして、事業強化を進めていく。
■今後の成長戦略について
今後の同社の収益成長をもたらす市場領域として「オムニチャネル」が挙げられる。オムニチャネルとは、企業の実店舗のほか、自社サイトやソーシャルメディア、EC サイトなどあらゆる販売チャネルが連携することで、場所や時間を選ばずに希望する商品を注文でき、希望する場所で商品を受け取ることができる体制を構築することであり、デジタルマーケティング手法の1 つとなる。
同社ではこの「オムニチャネル」を「完全な顧客主義」として捉えており、まさに同社が提唱してきた「ユーザーエクスペリエンスデザイン」が活きる領域であるとみている。流通業界の構造という観点から見ると、従来は供給者側の効率化を追求した「サプライチェーンマネジメント」が構築されてきたが、オムニチャネルでは「デマンドチェーンマネジメント」という消費者側の視点にたった流通構造に変遷していく。
■「オムニチャネル戦略」での注目点
「オムニチャネル戦略」のなかで、今最も注目を浴びているのが流通業界最大手のセブン&アイ・ホールディングス<3382> のプロジェクトである。2014 年度から総額1,000億円をかけて、グループ全社のオムニチャネル構築を実現していくというもの。第1 ステップとして、2015 年度までにグループすべての商品をすべての店舗で受け取り可能なシステムの構築を計画している。Web 上でもグループの統合EC サイトを構築する予定。第2 ステップとしては2016 年度までに、ネットを活用してコンビニエンスストアなど各店舗でグループ商品の買い物ができるようにする。さらに、2017 年までには店舗をメディア化し、単に商品を売る場としてだけでなく、利用客がまた来店したくなるような店舗づくりに変えていくことを計画している。
■このプロジェクトの中での同社の役割
同プロジェクトの参画企業としては日本オラクル<4716>、ヤフー<4689>、グーグル、NTTデータ<9613>、NEC<6701>、三井物産<8031>、チームラボ、電通<4324> などそうそうたるメンバーのうちの1 社に同社も選ばれている。主にプロジェクト体制の構築支援や顧客シナリオ設定、Web サイトの概要設計などで同社は携わる。このため、2015 年3 月期の業績においても、セブン&アイ・ホールディングス向けの売上げが伸びるとみられる。
日本最大の流通グループであるセブン&アイ・ホールディングスがオムニチャネルに本格的に取り組むことで、同業他社でも今後同様の動きが出てくることが予想され、同社にとってのビジネスチャンスも、より一層拡大するものと考えられる。
■子会社の動向
2013 年8 月にはグループウェア「rakumo (ラクモ)」を手掛ける日本技芸を子会社化した。日本技芸に関しては2015 年3 月期中に単月ベースでの黒字化を見込んでいる。カギを握るのは「rakumo」のサービス利用者数となる。損益分岐点はID 数で20 万件(2014 年3月末15.9 万件)となっており、順調にいけば2015 年3 月期末頃には達成するものとみられる。
ラジオNIKKEI マーケットプレス
『フィスコ presents 注目企業分析』毎週月・木曜14:30~14:45放送
《TM》
提供:フィスコ