【特集】週刊ダイヤモンド今週号より~“やってみなはれ”世界へ 佐治サントリーの25年 凄味と死角
1兆6000億円を投じた巨額M&Aと、初の創業家以外からの社長招聘という2つの大きな賭けを打ったサントリーホールディングス。今週号の週刊ダイヤモンドでは、サントリーの強みや課題に迫る中で、サントリー食品インターナショナル<2587>(SBF)の「特茶」ヒットに表れている現場の強さを追っています。
2013年9月末、全国のスーパーやドラッグストアにSBFの社員がわらわらと現れては大量のペットボトルを陳列していました。営業担当の社員だけではなく、本社の総務・人事部門、開発センターなどから集まった数千人が店頭で新製品のトクホ(特定保健用食品)緑茶「特茶」を積みました。
通常は営業現場にいない社員を動員して一気に陳列する“一夜城作戦”は、勝負商品の発売の際には何度も行われました。社員が店頭の重要さを再認識したり、店頭の情報を日常業務に生かす狙いがあり、特茶では過去最高の人数を動員しました。
サントリーにとってここ数年で最大の大型商品である特茶は、「サントリーの“事業一貫”がよく機能した商品だった」と北川廣一SBF執行役員は言います。事業一貫とは、研究、開発、生産、マーケティング、営業、広告それぞれの担当が、一つの事業をやるために一体となって動く様を表した用語です。7年にわたる研究から生まれた特茶をどう店頭で売れる商品にするか、“全員野球”に近い一大プロジェクトが繰り広げられました。
果たして特茶は大ヒットし、13年は3カ月で300万ケース、14年は1~5月で500万ケースを売りました。長年トクホの茶飲料首位の花王<4452>「ヘルシア緑茶」をあっという間に抜き去ったのです。
清涼飲料首位の日本コカ・コーラが停滞しているのに対し、SBFは毎年連続で売上高とシェアを伸ばしています。鳥居信宏SBF社長は「20年までに売上高2兆円、国内トップを目指す」と宣言していますが、「首都圏に限ればすでに国内トップではないか」という観測もあります。
記事ではサントリーの課題として「追うのは得意だが追われるのは不慣れ」とも指摘していますが、特茶の成功は総員で課題を突破するSBFの力量をまざまざと見せつけています。
《NT》
提供:フィスコ