【経済】【中国の視点】不動産バブルは20年前の日本より深刻、値崩れは下期に加速も
中国の不動産バブルが20年前の日本より深刻だと指摘されている。野村資本市場研究所の関志雄シニアフェローはこのほど、年収に対する住宅価格の比率について、北京市が19倍、上海市と深セン市が17倍を超えていると指摘。これは1980年代後半の東京の比率を上回っていると警告した。
また、不動産投資の利回りについて、大都市では2.0-2.5%にとどまり、1年の定期預金金利3.3%(上限)と貸出金利6.0%を下回っていると指摘された。関氏は、今年に入ってから住宅の成約件数が大幅に減少しており、住宅価格の下落が下期から加速する可能性が高いとの見方を示した。
米イェール大学の金融学部教授の陳志武氏も、中国の家計資産のうち、79%が不動産投資に回していると指摘。不動産価格の下落に伴う家計資産の大幅縮小の危険性を警告し、投資の分散を呼び掛けている。
関氏は、不動産市場が調整に入ることがもはや回避できないと指摘。今後は国内の鉄鋼業などを圧迫するほか、海外の鉄鉱石やエネルギー、造船業などにも悪影響を与えるとの見方。また、地方政府の財政収入のうち、不動産取引税などが10%を占めているため、地方政府の財政収支も圧迫されると強調された。
ただ、中国は日本のように20年以上の経済停滞に陥る可能性が低いとの見方が優勢。為替市場の自由化や一人当たりの国内総生産(GDP)、金融システムなどに大きな違いが存在していることが挙げられている。
《ZN》
提供:フィスコ