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【特集】週刊ダイヤモンド今週号より~亀山は知っている 液晶王国シャープ栄光と挫折の10年


「世界の亀山モデル」。地名そのものがブランド化するという日本の家電史上まれに見る成功を収めたシャープ<6753>の亀山工場。週刊ダイヤモンドは今回、メディアとしては初めて亀山工場の「心臓部」に入ることが許されました。設立から10年、液晶事業の栄枯盛衰を目の当たりにしてきた亀山工場に、シャープが何につまずきどのように再起を図ることができるのかという教訓を問います。

亀山第2工場に入ることが許されたのは5月21日。生産ラインを間近で見るには真っ白な防塵服とマスクで全身を包まなければなりません。構内に足を踏み入れると、まずVIPたちを乗せる電動カートがお目見えします。鉄筋コンクリート5階建て、総床面積279,100平方メートルもの広さがあるためです。

その後目にしたのはシャープが世界で唯一量産する「IGZO液晶」。畳3枚分ほどの極薄のマザーガラスがヒビ1つなく製造装置内をくぐり抜けていきます。IGZO液晶の大きな特徴は2つあり、1つは安い生産コストでスマートフォンやタブレット向けに高精細な液晶パネルを作れること、もう1つは独自の技術で省エネルギー性能を高められることです。

この新しいディスプレイには、競争力を失ってしまった液晶テレビ用の製造装置がふんだんに利用されています。つまり大きな設備投資をしなくても、簡単な「リフォーム」によりもっと高収益を狙える中小型液晶工場に変身させるというのがシャープの狙いなのです。しかし、安定生産の肝となる新材料の配合レシピ、繊細な小型パネルを生産するための作業精度など難題も多く、大量生産に至るまでの道のりは長いものでした。

IGZOの4文字は、その登場時から会社の経営方針に振り回されてきました。2011年4月20日、ある新聞が1面トップで亀山工場が大型案件を失注したと報じました。内容は事実ではありませんでしたが、そこで指摘されたテレビ用液晶の販売不振や過剰在庫の問題などはまさに的を射たものでした。

焦った経営陣は翌21日、液晶事業の健全性をアピールしようと、「まだ学会レベルの段階だった」(関係者)というIGZO液晶の実用化を公式に発表します。本来は徐々に市場を広げるはずだったIGZO液晶はすぐに利益貢献すべき存在として矢面に立たされ、四半期ごとに「予定より遅れている」と悪者扱いされることになりました。

それから約3年。経営再建下のシャープにとって、ついに離陸したIGZO液晶は今度こそ会社の運命を背負っていると記事は結んでいます。

《NT》

 提供:フィスコ

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