【経済】強引にバブル崩壊を先送りできる中国
中国各地で不動産価格に陰りが見えてきたことから、すわ不動産バブルの崩壊かと、中国不動産バブル崩壊論がかまびすしい。各地で開発したにも関わらず入居者がほとんどいないいわゆる鬼城(ゴーストタウン)も多数発生している。地方政府や不動産会社が理財商品で集めた巨額資金をこうした無理な不動産開発・融資に注ぎこんだ結果、資金を回収できないことが懸念されている。かつて日本列島全体で盛んに行われたハコモノを作るための公共事業にも少し似ている。双方とも巨大なモノを政府主導で作ることにより需要を作り出すが、その後投資に対するリターンは生み出さない。投資に対する直接的なリターンが生み出されないものについては、理財商品によりお金を投じた投資家へのリターンは期待できず、デフォルトするものも出てくるだろう。
ただ、近く中国全土で不動産価格が暴落して日本のバブル崩壊のような事態になるかどうかは分からない。中国は今でも自由主義・資本主義経済とは全く異なる。例えば既に一部で不動産価格を引き下げて販売することを禁止するなど、共産主義・統制経済の側面も強く有している。もし、全面的に不動産価格を引き下げて販売することを禁止すれば、不動産価格に政府保証をつけるようなものだ。また、バブル崩壊を回避するためであれば再度常軌を逸した金融緩和と経済対策を打ち出してくる可能性がある(日本と違って中国政府には財政的な余裕がある)。中国は民主主義的な手続が必ずしも必要がなくこれらを共産党一党支配の下、即時に強引にすすめることができる。
中国は絶対に日本と同じ轍は踏まないと決意しさえすれば、強引にバブル崩壊を先送りすることが可能なのである。中国のバブルが崩壊するとしてもそれは5年後や10年後かもしれないし、あるいはバブルが崩壊する前にモラルハザードから新たなバブルがやって来るかもしれない。
中国経済については指標等もどこまで信じられるか全く分からないことから、政府の動きを目を凝らしてよく観察しておくほかない。
《YU》
提供:フィスコ