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【特集】システムインテグレータ Research Memo(7):今期の成長率は将来の成長を見据えた投資期間として一時的に鈍化


■今後の見通し

(2)2015年2月期業績見通し

2015年2月期の業績見通しは、売上高が前期比2.4%増の3,640百万円、営業利益が同4.2%増の450百万円、経常利益が同3.8%増の451百万円、当期純利益が同2.9%増の280百万円と4期連続で最高業績を更新する見通し。ただ、成長率としては一時的に鈍化する計画となっている。市場環境の好調が続く一方で、「開発、生産体制の強化」が課題となってきており、人員の増強や開発環境の整備を進めるほか、新製品の開発に重点を置くなど、今期は将来の成長を見据えた投資期間としての位置付けとなる。

○開発、生産体制の強化

開発、生産体制に関して見ると、2014年2月期に自社の開発要員で全従業員の8割に当たる約90名程度(期中平均で前期比13.7名増)、パートナー企業数は52社(前期比11社増加)とそれぞれ増強を図ってきたが、今期もさらに強化していく。足元の需要が旺盛なことが背景にある。特に「GRANDIT」関連の引き合いは強く、開発要員の稼働率もほぼ100%に近い水準となってきている。

このため、システムインテグレータ<3826>では今期に約20名の増員を計画している。ソフトウェア業界では、ここ数年エンジニア不足が続いており、採用環境も難しくなっているが、同社は2014年1月に東証マザーズ市場から東証第1部市場へ上場を果たした効果で、従来よりも採用が進みやすくなったとしている。実際、3月以降の中途採用で既に6名入社しており、4月の新卒入社6名を含めて12名を増員したことになる。今後も中途採用を募集しながら、開発要員の増強を図っていく計画だ。

一方、パートナー企業に関しては現在の取引先を維持し、今期は各パートナー企業との取引量を拡大していく方針となっている。特に、2013年に業務提携した中国の大連百易軟件有限公司を今期は活用していきたい考えだ。中国オフショア市場は人件費の上昇で従来よりコストメリットが薄れているものの、人件費に関しては日本の半分以下の水準であり、技術力やコミュニケーション能力もパートナー企業として十分な水準にあると判断、当面は小規模な案件から始め、徐々に取引量を拡大していく考えだ。

さらに、開発環境の整備も今期は進めている。既に、2014年5月に本社を移転し、フロア面積を1.5倍に拡張したほか、大阪支店においても8月に移転を予定している。従来手狭になっていた1人当たりの作業スペースも広くなり、生産性の向上につながるものとして期待される。なお、移転に当たって発生する費用の一部は前期に特別損失(2百万円)として計上済みであり、2015年2月期に関しても費用としては軽微な水準となる。

○新製品開発について

同社は新製品として、2012年12月にO2Oマーケティングのツールとなるスマートフォン用ポータルサイト構築サービス「モバポタ」、2013年6月にアプリケーション設計支援ツール「OBDZ」を発売しているが、今下期を目途に、EC分野でのオムニチャネル対応製品をクラウドサービスとして提供する予定としている。また、「SI Web Shopping」に関しても、同時期に機能を拡張した新製品を投入する予定で、今期はこうした新製品開発に人的リソースを重点的に投下していく方針となっている。

○製品別売上見通し

2015年2月期の製品区分別売上見通しでは、「GRANDIT」関連が前期比15%増、「OBPM」関連が同30%増と前期に引き続き業績のけん引役となる。また、「SI Object Browser」関連は新製品の「OBDZ」の売上増分が上乗せ要因となり若干の増収を見込む。一方で、「SI Web Shopping」関連は大型案件が一巡するほか、機能を拡張した新製品の投入を第4四半期に予定していることもあって減収を見込んでいる。ただ、総利益ベースでは前期に発生した赤字案件がなくなるため増益となる見通しだ。その他売上に関しては、前述したように特定顧客のシステム開発案件が一部売上げに計上されるものの、前期比では減収となる見通し。3月以降の滑り出しに関しては、「GRANDIT」「OBPM」ともに好調を持続しているようだ。

○「OBDZ」「モバポタ」の状況について

「OBDZ」に関しては、今4月にVer.2.1をリリースし、製品としての完成度も高まったことで、今後の販売増が期待される。ただ、営業体制は「OBPM」と同一の部署が担当しており、現在は「OBPM」の需要が旺盛なことから、営業リソースが不足しているのが課題となっている。こうした状況を打破するため、同社ではGRANDITコンソーシアム内での「OBDZ」正式採用に向けた働きかけを現在行っている。コンソーシアム内での採用が決まれば、普及スピードが高まることも予想されるだけに、今後の動向が注目されよう。

「OBDZ」の特徴はソフトウェア開発におけるアプリケーション設計工程において、設計書の作成からアウトプットまでを自動化したことにあり、従来比で生産性を1.5倍程度に向上する効果が期待できる。ソフトウェア業界の人材不足が慢性化するなかで潜在的な需要は大きいとみられ、売上高の規模としてはいずれ「OBPM」と肩を並べる水準まで成長することが予想される。

一方、「モバポタ」に関しても、トライアルで数社が使用し、集客や売上アップなどの効果が高いコンテンツの分析など試行錯誤を繰り返しながら製品改良を進めてきたが、ようやく今上期中にも正式契約が見込める段階に入ってきたようだ。クラウドサービスでもあり、売上としての寄与は微々たるものだが、O2Oマーケティング戦略が重要視されるなかで、対象市場としては小売店やショッピングモールなどの商業施設だけでなく、アミューズメント施設や公共施設など裾野が広いだけに、成長ポテンシャルは高いと言える。ただ、成長市場であるがゆえに競争も激しく、認知度の向上や販売提携も含めた営業力の強化が今後の課題となってこよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《FA》

 提供:フィスコ

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