【市況】【鈴木一之の相場展望】 「日本列島大改造が進行中」
●世界の旅行者に評価される東京
ダウ・ジョーンズ社の伝えたところでは、「世界の旅行者満足度ランキング」において東京は、ニューヨークやスペインのバルセロナなどを押さえてランキングのトップとなったそうだ。
アメリカの旅行サイト「トリップ・アドバイザー」が5万人を超える世界中のサイト利用者にアンケートを行った結果である。世界の主要都市37ヵ所を対象に、実際にそこを訪れた人が体験に基づいて評価しあった結果だという。
東京が選ばれる上で特に評価のポイントの高かった点が「人々の親切さ」、「タクシーのサービス」、「街の清潔さ」だそうだ。まさに東京の居住者、日本人が評価してもらいたい部分が上位に並んでいる。
2020年の東京オリンピックに向けて、わが国は海外からの観光客を年間2000万人まで増やそうと目論んでいる。ビジネスや流行の中心ではあっても、東京は日本の中では人口ばかり多くて慌ただしく忙し過ぎ、少しスレたところがある。
その東京ですらここまで外国の旅行者から評価されるのであれば、東京よりもずっと親切で自然が豊かで特産品が豊かな地方都市は、外国人旅行者からはもっと高く評価されることだろう。
「アベノミクス」の期待醸成力が切れかかり、東京株式市場は再び世界のマーケットの騰勢から置き去りにされかかっている。3月期決算企業の決算発表を終え、今期の業績見通しは全産業ベースで2%にも届かない低い経常増益率にとどまった。
日銀の追加的な金融緩和はいくら望んでもかなえられず、買い進む手掛かりがほぼ払拭されてしまった焦燥感が株式市場の内外から聞こえるようになってきた。
そこに届いた一報が「世界の旅行者満足度ランキング」である。
今の日本には円安のおかげもあって、外国人旅行者が目立って増えた。玄関口ともなる東京駅のコンコースには、朝早くから欧米人、アジア人を交えて、とにかく外国人観光客だらけである。春から初夏にかけての観光は時期としては申し分ない。
政府観光局の公式発表によればこの4月の外国人観光客は123万人に達し、2ヵ月連続で過去最高を達成したそうだ。羽田空港が国際線枠を4割も拡充した効果がフィリピン、タイ、台湾などの東南アジアからの旅行客の増加につながっており、気まずいムードの中国からも前年比9割増のペースで旅行客が増えている。
外国人観光客のおかげもあって都心のホテルの稼働率は9割に達し、ほぼ満室状態である。百貨店の免税売上高も4月は過去最高を記録した。日本ではアクティブシニア世代を中心に国内旅行が引き続き活発で、ゴールデンウィークを過ぎても旅行代理店は客足が衰えない。
●嵩上げが続く日本の内需景気
これら国内外旅行者の動きも加わって、消費税引き上げ後も個人消費の最前線では大きな落ち込みがほとんど見られない。日本の内需景気は着実に嵩上げ状態を続けている。
内需景気と言えば、都心部ではあいかわらず大規模なオフィス再開発が続いている。東京の中心、中央区日本橋の「コレド日本橋」は以前は白木屋、昭和の時代は東急百貨店日本橋店だったところだが、そのコレド日本橋の周囲3方面の古いビルがぐるっとすべて立て壊されてしまった。容積率の緩和に合わせて最先端のオフィスビルと商業施設に建て替えられるらしい。
日本橋高島屋の裏手も、これまで都心の超一等地の割に長らく平屋のこじんまりとした古い民家が密集して建っていたが、そこにもこの春より工事の足場が組み立てられた。とうとうここも再開発が始まるようだ。
人手不足が深刻化している建築業界だが、大手ゼネコンに関してはきちんと人手を確保して、膨大な工事量の需要をさばき切って今期も増収増益基調を維持する見通しである。ビルを静かに壊しては耐震基準を強化した上で建て替える。ゼネコン大手50社の前期の国内受注総額は12兆円強に達し、前の年から18%も増えたという。
老朽ビルの立て替え、大規模な商業施設、東京オリンピックに向けたホテル建設。まさに21世紀の列島大改造時代が着実に始まっている。
高値を更新したJR東海 <9022> 、OLC <4661> を筆頭に、大成建 <1801> 、大林組 <1802> 、文化シヤタ <5930> 、西尾レント <9699> に注目している。
2014年5月22日 記
(「チャートブック週足集」No.1975より転載)
(「株探」編集部)

米株









