【経済】日本の右傾化で日本株が買いにくくなる?アジアの緊張に世界が注目へ
中国の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)の常務委員会は27日、9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」とする法案を採択しました。
中国ではこれまで、1945年9月2日に日本が降伏文書に調印した翌3日を抗日戦争勝利記念日と位置づけていました。また、南京大虐殺については江蘇省や南京市で追悼式典を独自に行っており、どちらも記念行事として定められていた訳ではありません。
日本を含む東アジアの緊張の高まりに対し、欧米など海外からの注目度が徐々に高まっています。きのう27日にも北朝鮮が短距離ミサイル4発を発射したことで、地政学リスクの高まりから円相場が下落する場面が目立ちました。
米ウォールストリート・ジャーナル(電子版、26日付)では、「アジアの緊張が日本のナショナリズムを高めている」との長文記事を掲載。日本の平和主義は根深く残っているとする一方、東京都知事選では田母神俊雄氏が特に20代から支持を受けたことなどを紹介。ナショナリズムが政治の世界にもじわりと浸透していると報じています。
安倍首相が推進する経済政策「アベノミクス」に対する先行き不透明感に、こうした「日本の右傾化」が暗い影を投げかけています。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、アベノミクスの動機が「富国強兵」なら日本株は買いにくくなると指摘しました。アベノミクスが日中関係を含む東アジアの地政学的リスクとも関連しているならば、海外投資家が抱く日本株の見通しに影響を与える可能性があると。
上野氏はまた、国内外でアベノミクスを日本の外交・安全保障政策と結びつけて捉える見方が増えつつあるとも指摘。安倍首相はデフレ脱却と経済再生の実現で高支持率を維持していますが、これを土台にして憲法改正などのシナリオを描いている可能性があります。
市場の心配は経済政策の優先順位が下がることで、経済政策が外交・安保政策と一体不可分という構図が急速に浮上しています。このため、上野氏は経済政策優先で日本株は買いとの発想が可能な一方、地政学的リスクとの関連から買いにくいとの発想も可能になると警告を発しています。
(フィスコ・リサーチ・レポーター)
《RS》
提供:フィスコ