【経済】NYの視点:経済鈍化に伴い深刻化する中国シャドーバンキング問題
14年に入り、中国経済の成長鈍化懸念に加えて、常に問題視されているシャドーバンキングなどを含めた同国の金融システムが危機に陥り、世界経済の回復を抑制させるとの懸念が広がっている。
元中国人民銀行のアドバイザーは「中国が米国型の金融危機に陥る可能性はない」と強調したが、懸念は払拭していない。上海の短期金融市場で翌日物金利は再び上昇に転じた。年初には翌日物金利で一時2.75%まで低下していたが3.7%まで上昇。中国人民銀行は市場を緩和させるため、過去2日間にわたり4000億元の資金を市場に供給した。しかし、短期金融市場の逼迫は改善しない。1月31日に満期を迎える中国の理財商品30億元がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があることやシャドーバンキング問題がさらに深刻化する様相を示していること、旧正月の祭日を控えて資金需要が増加傾向にあることも影響している。
市場の大半は中国工商銀行(ICBC)も携わった高利回りの信託商品5億ドル規模(30億元規模)がデフォルト(債務不履行)に陥るかどうかに注目している。報道によるとこの資金は非上場の石炭会社「山西振富能源集団」向けの融資に充てられたが、その後にこの会社が負債まみれだったことが判明。ICBCは償還の責任を負わないことを発表、万が一31日の期限に償還がなければデフォルトに陥り金融システムにも影響を与えることになる。
懸念はこれだけではない地元紙CNRの報道によると塩城市(イエンチョン市)で最大の農業協同組合への預金者が過去数週間にわたり数百万にわたる預金の引き出しができない状況にあるという。地域の農業の競争力を高め、貯蓄者は大きなリターンが得られるとし預金者を募った。ところが、経済の鈍化を受けて借り手は返済を放棄、預金者は預金の引き出しに奔走したため資金が枯渇。店舗のドアは閉ざされたままになっている。
中国のシャドーバンキング問題は経済成長が上向きであるときは問題がなかったが、成長の鈍化につれて投資家、預金者が資金の引き出しに回っているため深刻化しつつある。もともと14年度の新興諸国経済が停滞するとの見通しだったが、世界経済を主導すると見られている米国や日本の経済が果たして可能性のある中国の金融不安や新興諸国経済の鈍化を相殺できるほど強まるかどうかに焦点が集まる。
《KO》
提供:フィスコ