【特集】ダイコク電機 Research Memo(11):10年後に連結売上高1,000億円、経常利益100億を目指す
■中長期成長戦略
(2)10年後以降の長期計画
10年後以降の長期計画では、アミューズメント業界全体に情報分析サービスを提供する企業に業態転換する、という目標を掲げている。具体的には、ビッグデータの収集と分析サービスを提供する事業を立ち上げる。
ビッグデータの収集・分析は、現在、ITC(情報通信技術)分野で最も注目されている技術。普通のコンピュータでは不可能なくらいの大量のデータ(ビッグデータ)を収集・分析し、ビジネスばかりでなく、気象予報や災害予測、犯罪防止などにも生かそうという概念である。たとえば、橋に大量のセンサーを付け、交通によって生じるゆがみなどの膨大なデータを日々収集し、それを分析することによって、補修の方法や建て替えの時期などを正確に把握しようといった使い方など想定されている。
ダイコク電機<6430>が目指すサービスは、アミューズメント施設での来場客一人ひとりの動きをデータ化し、分析することである。大量のデータを蓄積・分析することによって、アミューズメント施設での人間の行動心理が解析できると同社は考えている。行動心理が解析できれば、来場客の行動が予測できるようになる。来場客の心理を先回りして手を打つことによって、売上を伸ばすことが見込めるほか、経営不振の施設がある場合は不振の原因を明確にし、適切な対策を立てることができるようになると見込まれている。
すでに同社は、情報システム事業の主力サービスとして、パチンコホール向けに来店者の行動を捉えて分析するサービスを行っている。今後はこれをさらに精密化し、ビッグデータの収集・分析ノウハウを確立する。その後、サービス領域の拡大を図り、アミューズメント業界全体に提供できるサービスに育成していく。
サービス事業化のメドとなる10年後まで、積極的な投資を行っていく。
10年という期間は、現在の不確実性の高い経済環境では実現が困難である。しかし同社は、「顔認証システム」を10年間の開発期間を経て事業化するなど、将来を見越した研究開発分野を見極める力を持っている。ビッグデータの関連技術は世界中で研究開発が進められており、その発展は目覚しいものがある。同社の研究開発実績とこれら周辺技術の発展動向を考えると、それが絵物語に終わらない可能性は十分にあろう。
なお、中長期計画では、10年後に連結売上高100,000百万円、経常利益10,000百万円をひとつの目安としている。これは、足元の同社の平均的な事業実績の約2倍にあたる。これについてはホールコンピュータの次世代システム開発が進捗し、パチスロ遊技機でもヒットを出すサイクルにメドがつきつつある。長期計画についてもビッグデータに加え、カジノにおける取り組みが出てきたことで、事業展望に厚みが増した。
このような状況下、株価はPBRで1倍を下回り、配当利回りも4.5%と高水準。これまでの努力が業績の飛躍という形で結実しつつある状況下、それへの認知次第で水準訂正の余地を残す格好となっている。
(執筆:客員アナリスト 柄澤 邦光)
《FA》
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