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【市況】【植木靖男の相場展望】


「新年は年前半に好材料を織り込む」

●年前半高・後半安の傘型相場

 新年を迎える。市場を吹き抜ける風は順風である。新年相場への期待は大きいようだ。とはいえ、筆者の長い経験でいえば、年末高く終わっても、新年1月相場は存外振るわないことがある。気を引き締めて新年相場に対処したい。

 新年1年の大まかなスケッチはどう描けるのであろうか。13年はN字型といってよい。14年はこれに対し目下の処は前半高く、年央にかけて高値を形成、後半は下り坂の傘型になりそうだ。

 ただ、前半に思わぬ伏兵が現れて年央に向け安くなれば、後半高に転じる公算もありそうだ。

 いうまでもなく、昨今の株価を左右するのは、米国の株価と為替とみている。米国の株価は09年3月に6547ドルの底値をつけ、その後はほぼ一貫して高く、年足は5年連続の陽線となりそうだ。5年上昇は上限とみてよいだろう。

 では、新年のどの時点で高値をつけるのであろうか。現状、そのカギを握る長期金利は再び上昇中で、13年5月の水準にほぼ並んできた。FRBによる緩和縮小が月100億ドルにとどまっている間は、株価にとって大きな弊害はなく、政策金利もゼロ周辺に抑えることから直ちに長期金利が急上昇することはないにしても、ジワジワと上昇に向かうことは想像に難くない。

 株価はやがてこれを主要なマイナス材料として受け止めることになろう。それはおそらく年央あたりとみられる。

 加えて、米国の金融緩和縮小が新興国に影響を与えることも考慮する必要があろう。新興国は足が地についていないにもかかわらず外資の導入で急発展しただけに、外資が逃げると直ちに通貨安、インフレに襲われる。世界経済にとって、新興国の景気減速はわが国輸出にとって大きなマイナスである。

 わが国はこうした海外情勢を睨みつつ、景気を拡大していかなければならない。最大の焦点は、4月消費増税後の景気の落ち込みを最小限にすることである。政府は景気対策、金融政策などあらゆる手段を講じて景気ダウンを阻止しようとするであろう。

 株価はこうした“なんでもあり政策”が市場に受け入れられ、上昇基調を強めることになるとみられる。

 しかし、一連のアベノミクス政策には、いうまでもなく光の部分と影の部分が存在する。年央までは光の部分をまず優先して株価は織り込もうとするに違いない。だが、遅かれ早かれ光の部分を株価が織り込んでしまえば、次は影の部分を織り込むことになる。かくして、14年相場は年前半高、後半安と大きく分けることができよう。

 もっとも、前半でも新年1月相場については自律反落もあるとみている。13年8月安値からみれば早や1月で5ヵ月を迎える。株価が高値圏にあれば調整することになろう。また、年後半にも相応の反発局面があろう。ただ、それは中間反騰であり、年央とみられる年初来高値を上抜くまでには至らず、いわゆる二番天井ではないか。

●第一幕の高値突破の銘柄に注目

 では、年前半の物色対象はどう考えたらよいか。参考になるのは06年から07年にかけての今回と酷似している局面である。

 通常なら、第二幕での活躍株は第一幕で雌伏していた業種、銘柄と考えやすいが、案に相違して第一幕で活躍した業種、銘柄が第二幕でも健闘したのである。具体的な形態としては、06年4月の第一幕の高値を早々に突破した業種、銘柄だ。

 今回にあてはめると、13年5月高値を上抜いたものということになる。具体的な銘柄を主力株の中から拾うと、まず工作機械のオークマ <6103> だ。工作機械の受注は内外とも伸びている。設備投資の復活を期待させる。

 金融からは三井住友FG <8316> だ。主力銀行の中で唯一、13年5月高値を突破していることに注目したい。

 ロボット関連では安川電 <6506> がおもしろそうだ。賃金上昇の中国では、これからロボットの需要が急拡大すると予測されている。

 着実に下値を切り上げるソフトバンク <9984> も妙味ありだ。水準の高さを嫌気する向きもあるが、かつては19万8000円があった株だ。

 電機からは三菱電 <6503> 、5月高値に並び始めた銘柄としては重工業のIHI <7013> 、川重 <7012> 。また、毎度くどいようだが、証券界の将来を示唆する日本取引所 <8697> も株価全般の先行指標として見逃せない。

2013年12月27日 記

「チャートブック月足集」No.363より転載
(「株探」編集部)

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