【経済】中国の防空識別圏:東アジアの地政学リスクが金融市場の錯乱要因にも
中国が防空識別圏を独自に設定したことをきっかけに、金融市場でも東アジアの地政学リスクが高まる恐れが出てきた。
中国が識別圏を設定した直後の25日には、米軍がB52爆撃機を中国への事前通告なしに圏内に派遣していたことが判明。また、日本では航空各社が顧客の安全確保を第一優先するため、中国側に飛行計画を提出していた。
日本政府は計画書の提出をやめるよう各社に要請したが、万が一、民間航空機が爆撃などに遭遇すれば、世界第2位と第3位、および第1位の米国をも巻き込んだ緊張が一気にエスカレートし、金融市場も大荒れになることは容易に想像できる。
英フィナンシャル・タイムス(電子版、27日付)もこの点に言及しており、日米欧の金融緩和に気を取られている間に、金融市場では地政学リスクがより鮮明化してきたと警告。確かに、金融市場は政治リスクを軽視しているとの感触があり、シティグループは先週、米国株式相場でボラティリティが最も高まるきっかけは“政治イベント”だとのリポートを発表している。
シティの分析によると、恐怖指数(VIX指数)が日中で目立って上昇したイベントは2月のイタリア選挙、エジプト政治の混乱、北朝鮮の戦争威嚇、米財政協議のまごつきに伴う格下げなど。来年にも米国で財政バトルが再燃するとあり、あらためて政治リスクが金融の錯乱要因になることが想定できる。
日本株式相場でも欧米投資家のリスク回避が圧迫要因になる可能性は十分にある。外国人投資家の間では、日本株投資へのリスク要因のひとつに“チャイナリスク”が挙げられており、これまでの靖国参拝などを超えるサプライズとなる防空識別圏の設定、およびその後の政治的緊張の高まりには十分な注意が必要になろう。
また、中国が保有している1兆2938億ドル(9月末現在)の米国債の一部を売却するような事態は、米国側としてはどうしても避けたい。中国が大量の米国債を人質として扱う可能性もゼロではなく、米国債売却による金利上昇で、米連邦準備理事会(FRB)が緩和策から抜け出せないというケースも想定できる。
《RS》
提供:フィスコ