【経済】自国通貨の減価を狙った通貨戦争が勃発、一部では日本の長期デフレを教訓に
日本が経験したデフレ進行の背後には円高があります。欧州中央銀行(ECB)が7日の金融政策理事会で、大方の予想に反して利下げを決定したのは、日本の二の舞にならないという強い警戒感を背景に、ユーロ高修正を狙った可能性が高いとみられています。もちろん、ドラギ総裁はECBの金融政策が為替を目的としたものではなく、ユーロ圏が日本のような長期デフレに陥ることはないと強調しています。
さて、世界各国では最近、自国通貨の価値を低下させる政策(口先介入など)が目立ってきています。日本でも、日銀の黒田総裁が打ち出した異次元の金融緩和を受け、急速に円安が進行したのは記憶に新しいところです。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のスティーブンス総裁は豪ドル相場について「不快なほど高い」との認識を示したほか、ニュージーランド(NZ)準備銀行もNZドルの価値を下落させるために利上げを先送りする可能性に言及。チェコ中央銀行は通貨コルナ相場を押し下げるため、11年ぶりに外国為替市場でコルナ売り介入を実施しました。
韓国では主力産業である輸出にダメージを与える通貨高は容認できず、公表はしていませんが、相場上昇局面では韓国銀行(中央銀行)などがウォン売り介入を行っている可能性が高いとみられています。また、中国でも外貨準備高が過去最高を更新するなど、ホットマネー(熱銭)の流入を当局が必死に防いでいる様が伺われます。
こうした各国・地域の動きを見ると、自国通貨の減価を狙った「通貨戦争」があらためて勃発したとも読み取れそうです。
通貨戦争下での為替相場はどうのような動きになるのでしょうか?ゴールドマン・サックス証券は最新リポートで、通貨戦争への回帰により、為替相場は狭いレンジでの値動きになるとの見方を提示。政策発動や口先介入、覆面介入などで名目為替レートが安定し、相場のボラティリティ(変動性)が低下することが理由だと説明しています。
(フィスコ・リサーチ・レポーター)
《RS》
提供:フィスコ