【市況】【北浜流一郎の乱にチャンスあり!】
●「米金融緩和の縮小懸念が重しに」
残念ながら東京市場は7月、8月と低迷続きとなってしまった。8月は出だしが良かっただけに期待したのだが、結局、月足チャートは陰線のままに終わった。
この軟調さは、何に起因するものか。最も重荷になったのは、米国の量的金融緩和の縮小観測を巡っての思惑交錯になる。中央銀行であるFRBは量的金融緩和の縮小方針をすでに表明している。ところが、株式市場はそれは困るという立場だ。
サブプライムローン融資の行き過ぎによる経済と株式市場の崩壊から間もなく5年。FRBがとんでもない規模の量的金融緩和を実施したことで、世界経済も米国株式市場も持ち直してきた。
最近、米国の主要経済指標は、景気の好調を示すものがほとんどとなっている。そのため、FRBとしては一日も早く緩和策を縮小したいのは理解できる。しかし、市場には市場の都合がある。これまで5年間、緩和に慣れ切り、それにより多大な利益も上げてきただけに、ここで緩和を縮小されては、これまでのような美酒は飲めなくなるのが明らか。
そのため、経済の好調を示すデータが出てくると、金融緩和の縮小懸念を理由に株が売られたりするほどだ。
われわれ日本の投資家にとって、望ましい展開は、米国経済の復活を示すデータ発表→米国株高→ドル高(=円安)だ。ところが、この行程がきちんと機能しないのだ。好データ発表→米国株安→ドル安となってしまうことが多い。その背景には前述したように、金融緩和の継続を望むウォール街の金融大手がある。だが、じゃぶじゃぶの資金供給による恩恵の享受にも間もなく限界がくる。
量的金融緩和は、遅くとも年内か、あるいは年明け早々にも縮小される可能性が高く、いまはわれわれもそれを待ちたいところだ。緩和縮小ならドルは上がりやすく、円は下がりやすくなるからだ。
●「イベント控え動きづらいが…」
ただ、目先の市場は米国によるシリア攻撃を恐れている。この点で思い出すのは、やはり2003年3月に起きた米国を中心とする多国籍軍によるイラク攻撃だ。緒戦は簡単に勝利してしまったが、その後の泥沼状態はいまも続いていると言ってよい。それを考えると、今回も同様になるのではないか。こんな危惧に駆られるのは当然だ。
しかし、株式投資と戦争との関係は、一般常識とは異なるところがある。開戦と同時に株が上がってしまうことが多いのだ。このため、今回もあまり神経質になることはない。英国が攻撃に参加しない方針を表明している以上、米国も単独では攻撃しづらいだろうし、たとえ攻撃しても限定的なものになると見てよい。
そのため、ここでの投資は、攻撃開始を懸念して株が下げたら、そこで拾っておく作戦が有利になる。それに9月2日から始まる週は週末に大きなイベントを控えていて、動きにくい。
大きなイベントとは、週末に予定されている米国の雇用統計発表と、もう一つ国内では9月7日に東京が2020年のオリンピック開催地に決まるかどうかが分かる。
私は東京に決まる確率は極めて低いと見ているのだが、それでも決まってくれるなら東京市場は急反発、消費税の来年4月からの引き上げも決定的となるだろう。
いまはこれらのイベントを目前にしているため、どの銘柄も値動きが重くなってしまうものの、それにこちらも同調しないようにしたい。
そこで、注目はまずは個人向けスマホからの撤退を検討ているとされるパナソニック <6752> だ。赤字部門からは撤退した方がよいのだ。
消費税増は決まる雰囲気なので、実施前の駆け込み需要を考えると、株価は高値圏ながらTOTO <5332> はなお魅力的だ。
8月27日、130万株の自社株買い実施を発表したスタンレー <6923> の押し目も見逃さないようにしたい。
高値圏にあるものの、粉ミルク、ヨーグルトの需要が絶好調の明治HD <2269> の押し目狙いを。そして、現在調整中のシートベルト、エアバッグに強いタカタ <7312> だ。
2013年8月30日 記
「チャートブック日足集」No.1484より転載
(株探ニュース)