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【特集】クマ出没・被害急増で政府が対応強化、「鳥獣対策」関連株を総ざらい <株探トップ特集>

クマの個体数が増加し、全国各地で人的被害のリスクが高まっている。ハンター不足が続くなか、AIやIoT機器、ドローンなどを活用した被害防止策が、今後拡大すると見込まれている。

―冬眠明けで目撃情報が増加の一途、AIなど最新技術駆使し人間との共存の可能性模索へ―

 桜前線が北海道に到達し、北国でも春が本番を迎えている。緑が映える季節に差し掛かるなかで、全国各地で冬眠明けのクマの目撃情報が増加している。北海道や東北、北陸を中心にクマが大量に出没し、人的被害が統計開始以来、最多となった昨年度以降、住民の不安が高まった地域もあり、政府は被害防止に向けた支援を強化する姿勢を鮮明にしている。人工知能(AI)など最新技術を駆使して、人間の生活圏にクマが侵入しないように管理をする取り組みも加速しており、関連製品やサービスを持つ上場企業の業績にポジティブな影響をもたらしそうだ。

●最速の「出没警報」発令

 秋田県は4月18日、例年に比べてツキノワグマの目撃件数が大幅に上回っているとして、県内全域に「ツキノワグマ出没警報」を発令した。4月の警報発令は2016年の運用開始後、最も早い。同日には岩手県の山中で男性がクマに襲われ、同県における今年初となる人的被害が発生。京都府では福知山市にある国道沿いのレストランの倉庫にクマが侵入したとの通報があり、騒ぎとなった。

 環境省によると、昨年度のクマの襲撃による被害人数は219人。その前の年度の75人を大きく上回り、統計開始以来で過去最多となった。手入れが行き届かない里山が増え、ハンターが不足する状況下で、クマの繁殖能力は高く、個体数そのものが増加していると推測されている。首都圏でも昨年度は、東京都において八王子市やあきる野市、奥多摩町などでクマを目撃したとの報告があった。

 暖冬傾向となった今年は、冬眠明けの時期が早まり、エサを確保するためのクマの行動が早速、活発化している。特に冬眠明けは親子連れのクマが多く、子グマを守るべく母グマが凶暴化し、人的な被害をもたらすリスクが高まる時期だ。地域によっては市街地であっても早朝や夜に1人で歩くことがないように、注意を呼び掛けているところもある。

 こうしたなか、環境省は4月、都道府県などへの広域的な管理を支援することを目的に、ツキノワグマとヒグマを「指定管理鳥獣」に追加した。16日の閣議後の記者会見で伊藤信太郎環境相は、都道府県に対する交付金について、拡充への意欲を示したという。

●電気柵の設置拡大へ機運高まる

 ハイキングや登山、渓流釣りやキャンプなど、アウトドア型のアクティビティーを楽しむうえで、自衛策として鈴やクマよけスプレーを携帯するといった需要も拡大している。 ホームセンター大手のDCMホールディングス <3050> [東証P]はキャンプ用品とともにクマ対策商品を取り扱っており、クマ被害が相次いだ昨秋には、クマよけスプレーや山歩き用の熊ベルの売り上げが急増した。大手各社のなかでも、アレンザホールディングス <3546> [東証P]が運営するホームセンター「ダイユーエイト」は東北や北関東を中心に店舗展開しており、クマ対策関連品の購入ニーズは高いと見込まれる。

 電気柵を設置してクマの行動範囲を制限することも、有効な解決策の一つとなっている。株式市場において、鳥獣対策関連株の筆頭格とされている前田工繊 <7821> [東証P]は、グループ会社の未来のアグリが、バッテリーと大容量ソーラーパネルを用いたセンサー付き電気柵を販売する。人の居住する地域に侵入する「アーバンベア」の問題が深刻化するなか、クマの侵入を感知するシステムについても開発を進めている。

 道路資材を手掛ける積水樹脂 <4212> [東証P]は、獣害対策用品として農作物を野生動物による食害から守るための獣害柵を製品群に持ち、幼齢木を食害から保護するための資材についても、全国各地で採用が進む。漁網を主力製品とする日東製網 <3524> [東証S]は、陸上関連事業において、獣害防止ネットを販売。同社の製造能力は国内最大級という。日本製鉄 <5401> [東証P]グループで線材加工品を展開する日亜鋼業 <5658> [東証S]も、自社製造の亜鉛めっきを使用した獣害対策用フェンスを供給している。

●クマ検知AIシステムの拡販も期待

 クマの生息域の拡大に伴い、市街地に侵入する個体が増加するなか、エサが容易に入手できることを学んだクマから人間の生活圏を守るには、狩猟者の力に頼らざるを得ない現実もある。全国的にハンターの高齢化が進むなか、北海道では狩猟免許の取得を目指す人が増加するなど、変化の兆しも出ているようだ。大手企業でも小田急電鉄 <9007> [東証P]が、初心者のハンターと獣害に頭を悩ます農林業者をマッチングする「ハンターバンク」事業を展開。狩猟に興味を持つ人々に対し、基礎を学ぶ機会を提供している。狩猟分野を収益の柱とする上場企業にはミロク <7983> [東証S]がある。株式の流動性は高くはないが、同社の猟銃のうち上下二連銃は最大市場の米国でトップシェアを誇る。

 テクノロジーを獣害対策に活用する取り組みも加速している。防犯・監視カメラのダイワ通信 <7116> [東証S]は、クマ検知AIシステム「FACE BEAR」を製品群に持つ。約5万枚以上のクマの画像・動画データをもとにAI技術を組み合わせ、専用サーバーと防犯カメラを活用し、クマが出没した際に高い精度で検知。光や音で威嚇をしつつ、専用アプリなどによりリアルタイムで出没情報を通知する。北陸電力 <9505> [東証P]も傘下の新価値創造研究所で、クマ自動検出AI・通報システムを手掛けている。

 3月26日に東証グロース市場に上場したソラコム <147A> [東証G]は、同社のIoT機器を利用し、野生動物捕獲用のわなの見回り業務を効率化するための装置を群馬県とともに実用化に取り組んだ実績を持つ。このほか、獣害対策としてはALSOK <2331> [東証P]がICT機器や防護フェンスなどの設置や管理などをサポートするサービスを展開。セコム <9735> [東証P]も傘下のパスコ <9232> [東証S]と「セコムドローン」を活用したシカ食害対策の実証実験を実施した過去があり、関連銘柄に加わりそうだ。

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