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9702 アイ・エス・ビー

東証P
1,300円
前日比
-1
-0.08%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
9.9 1.26 3.23 460
時価総額 148億円
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アイエスビー Research Memo(7):新規連結のアートの貢献と継続事業のオーガニック成長で売上高が大きく拡大


■中長期の成長戦略

2. 『ITサービス事業へのシフト』
(1) 全体像
アイ・エス・ビー<9702>では、第1の経営施策である「ITサービス事業へのシフト」の具体的なアクションとして、新事業の展開を挙げている。新事業は、ソフトウェア開発やシステム構築などの旧来の事業を既存事業として、それ以外の事業を言う。具体的には、公共ブロードバンド無線など7つの事業(商品・サービス)を展開してきた。

2016年12月期においてはここで大きな変化があった。1つは、市場が当初見込んだほどには大きくないことが明らかになったファインレセプトについて、関連する固定資産の償却や貸付金の貸倒引当金処理を行い、同事業から実質的に撤退したことだ。もう1つは、セキュリティシステム事業を手掛けるアートを完全子会社化したことだ。

こうした事業の取捨選択の結果、2017年12月期においては、以下のような陣容で新事業が構成されることになる。これらのうち、アートの事業、MDM、caretiveは黒字化している。それ以外の事業はまだ赤字であるが、Wi-SUNは売上高が一定規模を超えてきているほか、公共ブロードバンド無線やdataSampler、L-shareも需要の本格立ち上がりが期待される状況にあり、事業ポートフォリオのクオリティは着実に改善していると言える。

(2) アートについて
同社は2017年1月27日付で出入管理のセキュリティシステムを手掛けるアートとその子会社を3億円で完全子会社化した。出入管理と言っても定義の仕方により市場は大きく変化するが、アートが携わるのは“カギに関わる入退室”で、オフィスやビルの部屋・区画に、カードキーをかざしてアンロックし入出するシステムが典型的な商品例だ。この市場は年間約120億円の市場規模と推定されている。アートは年商約30億円でシェアはトップクラスである。競合はパナソニック<6752>、東芝<6502>、三菱電機<6503>などが並んでいる。同社の製品は、自社ブランドのほか、セキュリティシステム企業へのOEM供給などの形態で市場に供給されている。

アートはハードウェアの開発に強く、ソフトウェアは外部に発注していた。この点で、今回のM&Aは、ソフトとハードが組み合わさる完全補完関係にあり、非常に効率的であると言える。アートは病院や大学などの市場で強みを持ち、高シェアを獲得しているのも特長だ。一方で、競合相手に大企業が並んでいるため、事業環境は決して楽観はできない。大型商業ビルなどの案件では大手ライバル企業が圧倒的強みを発揮することも多いと聞く。

弊社では、今回のM&Aについてはポジティブに考えている。前述したハードとソフトの融合によるシナジー期待が理由の1つだ。また、金融や公共など多方面に情報サービスを提供する同社の販売力が活用できる点が2つ目だ。同社は大手SI企業の下請けをすることも多く、そうした大手SI企業経由での販売ルートづくりも将来的には期待できるだろう。3つ目は新事業で同社が有するWi-SUNやdataSamplerなどの技術との融合で、新商品や新サービスを創出できる可能性がある点だ。この実現には一定の時間を要するとみられるが、同社は新商品・サービスの開発を急ぐとしている。

(3)新事業の業績見通し
前述のように、2017年12月期から売上高の分野別内訳の分類区分が変更され、「新事業」として独立して開示されるようになった。2016年12月期の新事業の売上高は330百万円だったのに対し、2017年12月期は3,574百万円が計画されている。全社売上高に占める新事業の売上高構成比も2.5%から21.0%に躍進し、一気に存在感を増してくると期待される。

肝心の利益貢献については、2017年12月期の売上高目標が達成されれば、利益面でもプラス貢献が期待できると考えている。アートは従来から黒字が定着しているものの、のれんの償却が発生する見込みだ(本レポート作成時点ではのれんの額は確定していない)。これをこなして黒字貢献するためには、前期比増収は必達の要件となる。この点は、販売面でのシナジー活用がいかに早期に実現して売上高を伸ばすかにかかっていると弊社では考えている。アートと同社との技術融合の新商品については、その本格的収益貢献は来期からになるとみている。

アート以外の新事業については、MDMとケアティブは黒字が定着している一方、他の事業はまだ赤字とみられる。2017年12月期はアートを除く新事業の売上高が600~700百万円と想定されている。2016年12月期実績の330百万円からほぼ倍増となる。会員数が順調に拡大を続けるMDMや、営業が本格化する公共ブロードバンド無線、Wi-SUNやdataSamplerの商業利用などがこの予想の背景にあるとみられる。この売上高の水準が実現されれば、アートを除くベースでも、新事業の営業利益黒字化は充分可能性があると弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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