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9025 鴻池運輸

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決算発表予定日

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鴻池運輸 Research Memo(7):2030年に目指す姿に向けた基盤づくり(1)


■中長期の成長戦略

鴻池運輸<9025>では、2016年3月期~2018年3月期を対象とした前中期経営計画(前中計)において、売上高3,000億円、営業利益150億円を目標に取組みを進めてきたが、大幅な未達におわった。何故この前中計の目標が達成出来なかったかを踏まえ、新しい中期経営計画(新中計)を発表した。この新中計は2030年に向けたビジョンを達成するための基盤づくりとなるものであり、この成否が将来にむけた同社にとって大きな試金石となりそうだ。以下が今回の新中計の概要である。

1. 2030年のビジョンに向かって
昨年に発表された2030年のビジョンは以下のようになっている。

(1) 2030年までの考え方
同社では、2030年以降は構造的な人手不足の深刻化や、製造・物流プロセスの技術的なイノベーションなどにより、これまでの同社の仕事の仕方だけでは通用しなくなるとの危機感を持っている。そのため、2030年までにリスクを取って機会を捉え、トライ&エラーを重ねながら、事業と経営を見直さなければ持続的に成長できないと認識している。そのためには投資も必要であるが、単に設備投資等を増やすのではなく、投資に対するリターンと資本コストを意識した投資、すなわちROEとROICの向上を意識する必要があると考えている。

(2) 2030年に向けた目指す姿の策定
本計画のビジョンを要約すると以下のようになる。

□志向する方向とKPI
■2030年までに「10事業本部」以上を目指し事業を多角化する
?売上高  3,500~5,000億円規模
?売上高比率 物流:サービス=40:60
国内:海外  =80:20
?営業利益率 5%以上
?ROE 10%以上

事業本部については、既存の事業本部である鉄鋼から環境・エンジニアリングを、食品から食品プロダクツを独立させ、さらに新規事業、既存事業の深耕業務など追加することで10事業本部以上を目指す。

(3) 成長への考え方:「バリュー」・「バリューアップ」・「グロース」
前中計を含めた過去の経営計画では、策定において、まず定量的目標ありき、いわばトップダウン型であったが、その結果として計画と実績に乖離が生じたとも言える。そこで今後は、以下のような考え方に基づいて成長の考え方を再定義し進める計画だ。
○バリュー(実体) :既存事業の延長線だが、保守的な見通しやマイナス要因も視野に入れる。
○バリューアップ :既存事業の深耕化や、達成の確実性が高い成長・改善を行う。
○グロース :新規事業の開始やM&Aを進め、ビジョンに基づいた大胆な「チャレンジ」を行う。

そしてバリュー、バリューアップは各事業本部で、グロースは新事業開発本部(2018年4月発足)が担当することで、責任の所在を明確にしている。特に新事業開発本部においては、本部長に、鴻池忠嗣氏(取締役兼専務執行役員)が就任しており、新事業に対する同社の本気度が表れている。

(4) 売上比率の考え方:「海外:国内=20:80」および「物流:サービス=40:60」
既述のように同社では、2030年にグループ売上高3,500?5,000億円を目指しているが、このうち20%を海外で獲得する計画だ。(現状は5%)これを達成するために、二つの大きな戦略を遂行する。まずは地域戦略により、メリハリをつけたグローバル展開を行っていく。次に、単なる物流だけでなく、空港、メディカルを中心としたサービス請負を本格展開する。

もう一つは物流とサービスの売上比率だ。現在の同社では、物流とサービスの売上高比率が約50:50だが、2030年にはこの比率を40:60にする計画だ。これを達成するために、さらなる成長が期待出来る空港、メディカルを伸ばすことに加えて、新たに事業分けされた環境・エンジニアリングにも積極的に取り組む計画だ。

2. 前中期経営計画の振り返り(総括)
(1) 売上高/営業利益
2016年3月期から2018年3月期までの業績は、増収増益を達成したものの、最終年度である2018年3月期は売上高2,767億円、営業利益110億円に止まり、目標である売上高3,000億円、営業利益150億円を大きく下回った。

(2) 設備投資
次に設備投資だが、当初の計画では初年度190億円、次年度135億円、最終年度167億円、総額492億円を計画していたが、実際には270億円程度に止まり、計画を大きく下回った。その要因は、積極的な投資が促進されるように、経営ビジョンや方向性についての議論が足りなかったためと考えられる。

(3) 前中期経営計画未達成要因の総括:4つの要因
以上のような事から同社では、前中計未達成について以下のように総括している。

i. 経営ビジョンや方向性について、議論の不足
ii. 事業実態について多面的な視点からの、分析の不十分
iii. 経営監督・業務執行に関する責任と権限の明確化が不明瞭
iv. 部門の垣根を越えたマーケティングの不足

これらの反省点を踏まえて、同社では次に述べる新中期経営計画を策定し、2030年に目指す姿に向かって取り組んでいくことを発表している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《MH》

 提供:フィスコ

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