貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
株価20分ディレイ → リアルタイムに変更

8905 イオンモール

東証P
1,799.0円
前日比
+7.0
+0.39%
PTS
1,797円
20:04 04/23
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
24.8 0.88 2.78 6.90
時価総額 4,094億円
比較される銘柄
三井不, 
東建物, 
オープンH

銘柄ニュース

戻る
 

きちり Research Memo(3):店舗展開と、PFS事業の育成により持続的な成長拡大を推進


■事業概要

2. きちり<3082>の強みと成長戦略
弊社では競争が激しい外食業界の中で、同社を成長余地の大きい企業の1社として注目している。理由は、収益性の高い業態開発力を持っていること、関東圏での出店余地が大きいこと、出店拡大のために必要となる人材の採用力と育成力に優れていることに加えて、外食企業のIT化を支援するクラウドサービス展開型のPFS事業が育ちつつあることなどが挙げられる。

(1) 業態開発力
同社は主力の「KICHIRI」を2002年に出店以降、現在までブランド・コンテンツ活用型店舗も含めて19業態の開発を行ってきた。また、対象となる出店エリアや店舗コンセプトについても都市型から郊外型、非日常型から日常型と多彩な業態開発を行っていることが特徴となっている。

特に、ここ最近では「いしがまやハンバーグ」やダイニングバーの「ajito」「igu&Peace」など収益性の高い業態の開発に相次いで成功している。社内で業態開発に関わる人材が育ってきたことが要因と考えられる。例えば、「KICHIRI」では出店費用等の投資回収期間が平均3年程度かかっていたものが、「いしがまやハンバーグ」や「ajito」では14~15ヶ月で回収を実現した店舗もあり、営業利益率も「KICHIRI」を上回っている。こうした業態開発力の高さを評価して、商業施設等のデベロッパーから声が掛かるケースも増えている。

2017年6月期に新規出店した7店舗のうち、2016年10月に「ららぽーと湘南平塚」に出店した「MEET COMPANY with Bellmare」や、同年12月に愛知県の「イオンモール長久手」に出店したとんかつ専門店「黒豚とんかつ コシヒカリかまど炊き 鬼おろし とん久」、2017年6月に東京・大手町に出店した「GOOD MEAT STOCK?肉屋バル?」などもその一例となる。このうち、「MEET COMPANY with Bellmare」は湘南ベルマーレサポーターを中心としたスポーツファンの集いを創るレストランをコンセプトとして出店したが、オープン以降、客数はスポーツファンだけでなく一般客も来店するなど好調に推移し、客単価も「いしがまやハンバーグ」よりもアップしている。同店舗では「いしがまやハンバーグ」で培った店舗運営ノウハウに加えて、料理メニューも石窯焼きによるハンバーグだけでなくステーキも取りそろえたことなどが顧客支持を集めた要因となっている。とんかつ専門店についても厳選した食材による高品質な料理を提供することで、オープン以降客足は好調に推移している。同社では今後も新たな付加価値を提供できる業態開発を積極的に進めていく予定となっている。

(2) エリア展開
同社では、関東エリアで47店舗の出店を行っているが、今後200店舗まで出店余地はあると見ている。その根拠としては、関西エリア(京阪神+奈良県)で乗降客数2万人以上の駅数が312駅、出店店舗数が40店舗となっているのに対して、関東エリア(関東圏+茨城県)では同条件の駅数が903駅と約3倍あるためだ。単純に3倍すれば120店舗だが、1駅に複数店舗出店できる新宿等のターミナル駅が関東圏には多いため、居酒屋業態だけでも200店舗は可能で、これに「いしがまやハンバーグ」を筆頭としたレストラン業態を中心に多様な業態開発を進めていくことで、更なる拡大も十分可能と見ている。

とはいえ、主力の「KICHIRI」の店舗数について見ると、2015年6月期の44店舗をピークに直近は43店舗と足踏みが続いている。これは居酒屋業態全般が厳しい市場環境下にあるなかで、「いしがまやハンバーグ」など好調なレストラン業態の出店拡大に優先的に取り組んできたことが要因となっている。ただし、同社の条件にかなうテナント物件が出てくれば、「KICHIRI」についても出店を検討する方針であることに変わりなく、中長期的に見れば店舗数の拡大余地は十分あると言える。

一方、大型商業施設を中心に展開している「いしがまやハンバーグ」やオムライス業態の「3 Litlle Eggs」については坪当たり売上高が大きく、デベロッパーからも引き続き高い評価を受けている。このため、新規オープンする商業施設を中心に今後も出店が拡大していくことが予想される。なお、2016年6月に同社として初めてイオンモール<8905>に「いしがまやハンバーグ」を出店している。イオンモールは「ららぽーと」と比較して、平日と休日の集客数の差が激しいことや、客単価が低いこともあってオープン当初は苦戦を強いられ、2017年6月期上期の収益悪化要因となったが、集客力アップのためランチメニューを導入するなどの取り組みを行った結果、下期以降は黒字化するなど軌道に乗っている。同社ではKPIとして従業員1人当たり月額50万円の利益をボーダーラインとして、多店舗展開をするかどうかの判断材料としており、この水準を超えればイオンモールでの多店舗展開も進めていく方針となっているが、現状はまだその水準までには達していないようだ。

同社では今後も「業態開発×エリア拡大」を進めていくことで、年間10店舗前後のペースで出店を継続していくことを基本方針としている。

(3) 人材採用力と育成力
ここ数年、人手不足により退店を余儀なくされる飲食チェーン店が多くあるなかで、同社は人手不足の影響をさほど深刻には受けていない。これは、同社が早くから正社員の採用強化を進め、必要な人材を確保してきたことが要因となっている。新卒採用者数で見ると、2015年春の71人から2016年春は84人、2017年春は79名と高水準の採用を続けている。新人社員については、当初は主に店舗に配属されるため、1店舗当たり新人社員1人を配属でき、アルバイト数名分を賄うことが可能となる。正社員数比率の上昇によって、売上高人件費率はここ数年、上昇傾向ではあるものの、安定した店舗運営ができる要因ともなっている。同社では、2018年春も100人の新卒採用を予定している。

同業他社が人材確保に苦労するなか、同社が順調に新卒社員を採用できているのは、独自の教育制度やキャリアプランに加えて、飲食店舗展開事業やPFS事業(ブランド・コンテンツ活用型、クラウドサービス展開型)等の多彩な事業ポートフォリオを展開していることが要因と考えられる。また、アルバイトスタッフ(パートナー)に対しても、学生を対象とした就活支援制度や退職者に対するパートナー卒業式を毎年開催するなど、自由闊達な雰囲気と同時に、関わる人すべてを大切にする「おもてなし」スピリットが浸透している企業としての認知度が向上していることも一因と考えられる。

人材育成力に関しては、「きちりMBA」制度や立候補制度など同社独自の制度を導入している。「きちりMBA」の講師は社内スタッフで構成されており、全従業員が受講可能となる。プログラムは「理念研修」から「ビジネススキル」や「おもてなし」といった日々の現場で必要となるスキルを身に付けることができるほか、「マネジメント」や「リーダーシップ」など幹部候補制向けのプログラムなども用意されており、これらを受講することで社員一人ひとりのスキルが向上している。

(4) PFS事業の拡充
PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型、クラウドサービス展開型の2つの事業形態により事業拡大を進めている。とりわけ、クラウドサービス展開型については2016年に入ってIT企業等との戦略的業務提携を積極的に進めて、サービスメニューの拡充を図っている。同社のプラットフォーム上にITを活用した新たなサービスメニューを加えることで、顧客数の拡大だけでなく顧客当たり売上単価をアップし、事業の一段の成長を目指していく戦略となっている。なお、業務提携する際に資本出資を同時に行うケースもある。

具体的な取り組みとしては、2016年3月にiPadを活用したSaaS型POSレジシステム「ユビレジ」を展開する(株)ユビレジと資本業務提携を行い、「ユビレジ」をサービスメニューに加えたほか、2016年8月には(株)フィスコ仮想通貨取引所、及びカイカ<2315>と仮想通貨決済分野で業務提携を発表した。「Anchor Point」(グリル料理をメインとしたレストラン)にてビットコインの試験的導入を2017年1月より開始した。また、9月にはFinTechベンチャーの(株)BearTailとの業務提携を発表した。BearTailが既に商品化している「Dr.経費精算」※を同社が導入するだけでなく、請求書についての自動データ化機能について両社で共同開発し、自社での導入及びPFS契約企業への販売を行っていく予定となっている。電子帳簿保存法の改正によって、2016年1月よりカメラ撮影した領収書の電子データ保存が認められるようになったのに続き、2017年1月から請求書についても認められるようになったことで同機能を共同開発し、プラットフォームサービスのメニューに追加する計画となっている。同サービスの利用によって、店舗ごとに発生する請求書や領収書などの帳簿管理にかかる業務量を大幅に軽減できることになるため、顧客ニーズは大きいと見ている。既に、試験的に一部企業で導入しているが、バージョンアップを進めながら2018年夏頃に本格的にサービス提供していく考えだ。

※「Dr.経費精算」…スマートフォンで領収書を撮影し、スマートフォンアプリまたはWebブラウザからアップロードするだけで自動データ化され、入力オペレータが同データの入力代行を行うサービスとなる。従来と比べて経費精算にかかる手間が大幅に削減できるといったメリットがある。


2016年11月には(株)BECとHRテック分野における資本業務提携契約の締結を発表した。BECはバックオフィス業務を自動化し、効率的に管理できるサービス「Gozal(ゴザル)」の開発・運営を行っているベンチャー企業で、今回の提携ではBECの開発ノウハウを生かして、人事関連業務(入社や保険手続き)の効率化に寄与するクラウドサービスを共同開発し、同社のPFSサービスのメニューに追加していく計画となっている。

そのほかにも、2016年8月にサントリーグループで外食事業(2017年6月末254店舗)を展開するダイナック<2675>と戦略的業務提携を締結し、両社の収益構造改革を推進していくことを発表している。具体的には、両社において購買、物流及び間接業務に関する合理的な仕組みづくりについての共同調査・研究活動、先進的技術の導入可能性に関する共同検証活動などを行っており、今後、提携を通じて収益性向上につながるソリューションサービスの開発を目指していく考えだ。なお、ダイナックの一部店舗において同社のPFSサービスを活用しているが、業績に与える影響は軽微となっている。

また、2015年に三井物産<8031>、EATALY(イタリア)と合弁会社、イータリー・アジア・パシフィック(株)(出資比率34.0%)を設立し、国内でEATALY事業※を展開しているが、2017年8月にJR東京駅構内に中規模コンセプト店「EATALYグランスタ丸の内」を新規出店している。オープン以降、客足は好調に推移しているようだ。同社は、EATALY店舗に対してクラウドサービス展開型のサービスを提供している。今後、EATALY店舗が増えてくれば連結業績を開始し、その中で持分投資利益として収益貢献する可能性がある。

※生ハムやチーズ、ワイン等のイタリア食材の物販機能と、レストラン・カフェ等のイートイン機能を併せ持つ複合型店舗「EATALY」を運営している(2017年8月末時点で店舗数は3店舗)。


同社では、このように自社の店舗運営で培ってきたプラットフォーム、運営ノウハウ等を同業他社や飲食業界以外の法人企業等にサービス提供することで、PFS事業を飲食店舗展開事業と並ぶ収益柱に育成していくことを目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均