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2016年07月12日19時00分

日経平均は飛び立った、ヘリコプター・ベン“東京来襲” <うわさの株チャンネル>

三井不 <日足> 「株探」多機能チャートより

―バーナンキ氏、11日黒田総裁・12日安倍首相訪問の意味―

 12日の東京株式市場は、前日の大反騰の余韻冷めやらぬなかで買い優勢でスタートし、その後日経平均株価は一気に上げ幅を拡大、午前10時前には500円を超える上昇で1万6200円台に乗せる異彩の上げ足をみせた。週明けからの2日間で日経平均の上昇幅は1000円をゆうに超え、市場関係者の間でも驚きの声が上がった。大引けこそ386円高とやや伸び悩んだものの、12日の取引時間中につけた高値1万6237円62銭は、英国EU離脱決定に伴うショック安(ブレグジット・ショック)前夜である6月23日の日経平均終値(1万6238円35銭)とほぼ合致、すなわち全値戻しである。

●最善の形でかみ合った歯車

 振り返って7月第1週(4日~8日)はブレグジット・ショック第2波に怯え、リスクオフの象徴として進行した円高を横目に日経平均は下値模索の動きを強いられていた。ところが週をまたいだ12日、米雇用統計と参院選という2つの大きなイベントを通過したことで東京市場の視界は突如として変わった。

 日本時間8日夜発表の6月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が事前の市場コンセンサスを大幅に上回ったことで、米国景気の強さが確認されNYダウが急伸、気がつけば史上最高値が目前となっている(S&P500は11日時点でザラ場、終値ともに最高値更新)。これが、世界的なリスク回避ムードの流れを完全に堰(せ)き止め、東京市場の出遅れ感が浮き彫りとなった。

 さらに、10日に投開票された参院選は自民党が56議席を獲得、公明党の14議席と合わせて70議席を確保し、過半数の61議席を大きく上回る大勝を収めた。これは“想定の範囲内”といってしまえばそれまでだが、「外国人投資家は少なくとも政権が安定し、信認を得たアベノミクスが強力な経済対策というかたちで新たな活力を生み出すことに期待を寄せた」(国内準大手証券ストラテジスト)という。米雇用統計と参院選、2つの歯車が想定し得る最善の形で噛み合ったことで、株価トレンドの明確な変化を生み出したのである。

●隠れ主役はバーナンキ前FRB議長

 しかし、12日の東京市場の様変わりの背景には、実はもう1つ大きなイベントがあった。それは、バーナンキ前FRB議長の日銀訪問である。

 週明け11日は日経平均が一時700円を超える上げ幅を記録したが、その上昇エンジンとして急速に円安方向に押し戻された為替動向が大きな影響を与えた。「バーナンキ氏は11日午前に日銀を訪問したことが伝えられており、黒田日銀総裁と意見交換、もっと分かりやすく言えば追加緩和政策についてアドバイスした可能性が市場筋の間で取り沙汰された」(国内ネット証券マーケットアナリスト)と指摘されている。

 バーナンキ氏といえば、「ヘリコプター・ベン」の愛称でも知られるように、景気を刺激するためにあたかもヘリコプターから紙幣を舞い落とすがごとく、市井にお金をばらまき、政府の赤字をまかなうために中央銀行が国債買い入れなどの形で紙幣を発行する、ヘリコプターマネー理論支持で知られる。

 「日銀のマイナス金利政策よりもバーナンキ氏の日銀訪問のほうが為替の円安効果をもたらすというのは皮肉な話だが、実際に足もとの為替はそれで動いた。もちろんこれはバーナンキ氏本人への期待ではなく、28日、29日に予定される日銀の金融政策決定会合での量的追加緩和を渇望する今のマーケットのニーズを反映したもの」(国内ネット証券マーケットアナリスト)という。次回の決定会合では展望リポートも公表され、このタイミングでの追加緩和の可能性はかなり高いという見方がもっぱらだ。

●ヘリコプターマネー期待で金利敏感株が全蜂起

 「物価上昇率2%という明確な目標を掲げながら、むしろ物価が下落しているような状況にあって、日銀は躊躇することなく追加緩和を実施する義務がある」(前出の国内準大手証券ストラテジスト)という声がある。この義務を果たす上でマイナス金利政策が少なくとも株式市場の拒絶反応を引き起こすことは、今年1月下旬の決定会合後の経緯で証明されている。とすれば、伝家の宝刀ヘリコプターマネーの出番という思惑もあながち行き過ぎた希望的観測ではない。「国債買い入れは保有残高が年間80兆円相当に達する現状、その規模と効果自体に限界も感じられる。ここは市場関係者を唸らせるようなETFのドラスチックな買い入れ枠拡大が必要」(国内投資顧問)という指摘も出ている。

 12日の東京市場では、銀行やノンバンク、証券、保険、不動産と見事なまでに“日銀プレー”の対象業種が値上がり上位に並んだ。これまでは欧州の金融株下落や英国の不動産ファンドの解約急増の流れを嫌気して、内需にもかかわらず売り叩かれたセクターであるが、相場の地合いの変化に合わせ、にわかに復権を果たした格好だ。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、三井住友フィナンシャルグループ <8316> 、みずほフィナンシャルグループ <8411> のメガバンク3社は株価の上昇はもちろん、売買代金で任天堂 <7974> とトヨタ自動車 <7203> に次いで上位5傑に食い込んだ。

 また、デベロッパー最大手の三井不動産 <8801> が5%を超える上昇、三菱地所 <8802> 、住友不動産 <8830> も値を飛ばした。アイフル <8515> 、アコム <8572> も物色人気となるなど、個人投資家の短期資金も存分に回転を利かした形跡がある。

●心機一転、 アベノミクス開眼に期待

 今回の参院選勝利でアベノミクスが信認を得たという解釈の是非はともかく、安倍首相のモチベーションが上がっていることは事実だろう。新規国債の追加発行を財源とする大規模補正予算の検討が伝わるなか、マーケットは久々に外国人投資家の活力を取り込み上値追いのダイナミズムをみせている。バーナンキ氏は11日の日銀訪問に続き、12日午後3時ごろに官邸を訪問し安倍首相と議論を交わしたもようだ。

 アベノミクスがその概念と共に打ち出した3本の矢は、大胆な金融政策、積極的な財政政策、そして成長戦略の3つである。バーナンキ氏との会談でこの3本の矢が再び輝きを放つことになるのかどうか、政府・日銀の一挙手一投足に注目が集まるところ。今まさに年後半相場を左右する岐路に差しかかっている。

(中村潤一)


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