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8424 芙蓉総合リース

東証P
13,390円
前日比
-250
-1.83%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
9.4 0.94 2.91 3.85
時価総額 4,056億円
決算発表予定日

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芙蓉リース Research Memo(4):上期業績は減収ながら増益となり過去最高益。ノンアセット収益拡大が業績けん引


■決算動向

3. 2019年3月期上期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の2019年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比2.3%減の2,957億円、営業利益が同3.9%増の182億円、経常利益が同4.2%増の196億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.4%増の127億円と減収ながら増益となり、利益面では過去最高益(上期ベース)を連続更新した。

売上高は、海外の大口案件の剥落により減収となったが、前年同期に次ぐ2番目の水準(上期ベース)を確保した。また、事業本来の業績を示す「差引利益」については、前年同期比3.8%増の362億円(同13億円増)と順調に拡大。大口の不動産リースの満了・売却により「営業資産残高」が一時的に減少し、「資産粗利率」も横ばいで推移したものの、ノンアセット収益※の拡大が「差引利益」の伸びに大きく寄与した。一方、「契約実行高」については、アクリーティブを中心としたファクタリングビジネスが好調に推移したが、不動産リースにおける大口ブリッジ案件の減少や航空機のデリバリー遅延等により前期同期比で減少した。もっとも、下期には複数の航空機実行等により積み上げを見込んでいる。

※資産回転型ビジネス(リース資産の入れ替え等を目的とした流動化取引)に伴う売却益の計上や手数料収入の増加。


また、経常利益については、外貨借入の増加(航空機事業の拡大に伴うもの)による資金原価増や貸倒戻入益の剥落などがコスト増加要因となったが、「差引利益」の伸びや持分法投資利益※の増加により増益を確保した。

※2018年3月にM&A(持分法適用関連会社)したカナダのピックアップトラック(法人向け小型商用車)のレンタル・リース会社によるもの。


その結果、ROA※については1.83%(前年同期は1.82%)にやや改善。前述のとおり、ノンアセット収益の拡大がROAの改善につながったと言える。

※経常利益(年換算)÷営業資産残高(平残)。


財政状態については、「営業資産残高」が大口ブリッジ案件の満了・売却等により一時的に減少した半面、「現金及び預金」が増加したことから総資産全体では前期末比0.4%増の2兆4,402億円とほぼ横ばいで推移。一方、自己資本は内部留保の積み上げにより同2.7%増の2,599億円に増加したことから、自己資本比率は10.5%(前期末は10.2%)とわずかに改善した。また、有利子負債は同0.5%増の19,753百万円に微増したが、有利子負債(リース債務を除く)の長期比率は52.7%(前期末は51.1%)、流動比率も144.2%(前期末は141.1%)と高い水準にあり、財務の安定性は維持されている。

各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。

(1) 不動産
2018年9月末の営業資産残高は、大口を含むブリッジ案件の満了・売却により前期末比9.1%減の3,290億円(前期末比330億円減)と一時的に減少したが、想定どおりの進捗である。また、契約実行高についても、競争激化の中で収益性が落ちてきたブリッジ案件を厳選した結果、前年同期比72.4%減の226億円と大きく減少した。その結果、営業資産残高に占めるブリッジ案件の割合は37%(前期末は42%)に低下した。ただ、上期までのROAは1.8%と横ばいにとどまっており、ROAの改善は今後の課題と言える。同社は、過熱するマーケットにおいても適切なリスクリターンを追求し、着実な資産の積み上げを継続する方針である。特に、遊休不動産を保有する企業のCRE戦略※がますます重要となるなかで、同社の強みとする土地情報持込型提案営業をさらに強化し、案件の付加価値(収益性)を高める戦略を進めている。上期の主な実績には、「川崎キングスカイフロント 東急REIホテル」(水素エネルギーを活用したホテル)などがある。

※企業が保有する不動産の有効活用。


(2) 航空機
2018年9月末の営業資産残高は、為替レートの影響もあり前期末比1.2%減の964億円とわずかに減少した(為替レートの影響を除けば微増)。ただ、前期のデリバリー遅延分の取り込みや新規海外エアライン向け案件の積み上げにより、保有機体数は31機(前期末比7機増)と順調に拡大している。また、ROAは2.1%(前期は1.9%)と改善した。競争激化により利回りが低下傾向にあるなかで、目利き力を生かし、一つひとつの案件を丁寧に選別しながら購入していることが奏功しているようだ。今後も英国ALMの更なる活用も含め、取引エアライン・取引国の拡大を推進する方針である。

(3) 海外
2018年9月末の営業資産残高(海外事業における関連会社への出資額を含む)は前期末比1.7%増の950億円と増加した。ROAも0.7%(前期は0.6%)とわずかに改善した。海外は、オーガニック(自律的成長)とインオーガニック(M&Aや提携等)の2つの成長軸を進めているが、2018年3月に持分法適用関連会社となったピックアップトラックのレンタル・リース会社(カナダ)なども寄与しているようだ。また、上期においては、シンガポール現地法人の恒常有人化の決定や、中国国内での日本円建てリース取引の実行(同社初)など、オーガニック戦略での成果を残すことができた。特に、前者においては、ASEAN地域のクロスボーダー営業拠点として、当面はシンガポール及びインドマーケットへの営業に注力する構えだ。ただ、今後の事業拡大やROA改善に向けては、インオーガニック成長が不可欠とみており、M&Aにも積極的に取り組む方針である。

(4) エネルギー・環境
2018年9月末の太陽光発電事業の営業資産残高は前期末比12.7%増の222億円と増加した。福島地区で2ヶ所(発電量合計38MW)が新たに稼働したことにより、現在は全国32ヶ所においてメガソーラー(合計140MWdc)が発電中である。したがって、発電容量は中間目途値(2020年3月末の発電容量135MWdc)を前倒しで達成した。加えて、発電容量60MWの超大型事業(福島地区)も着工済みである※1。なお、ROAは8.3%(前期は5.1%)に大きく改善しているが、季節要因(夏場は太陽光発電の稼働が高まる)によるものであり、通期では6.0%前後の水準に落ち着くものとみられる。また、特筆すべき活動として、RE100※2に日本の総合リース会社として初めて加盟した。同社グループの使用電力を2050年までに100%(2030年までに少なくとも50%)、再生可能エネルギーで調達するほか、太陽光発電事業の更なる拡大による地域貢献、再エネ・省エネに関するソリューション及びサービスの提供、再エネ普及に資する新技術を保有するベンチャー企業との連携などに取り組み、持続可能な社会への貢献と企業としての継続的な成長を目指していく。

※1 「帰還困難区域」での事業は日本初となる。
※2 事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる国際的な企業連合。


(5) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、主な活動として、「ヘルスケアアドバイザリー室」を新設し、医療法人向け経営支援型アドバイザリー業務を開始した。これまで中古医療機器の買取販売、診療報酬ファクタリング、医療ベンチャー等の企業への出資などを通じて事業領域の拡大を進めてきたが、それらの幅広い商品ラインアップやサービス機能により様々なソリューション提案を実施し、病院経営層が抱える課題解決に向けたコンサルティング業務を強化するところに狙いがある。特に、競合厳しいリース単品のセールスからソリューション提案への転換により収益性の改善を目指す方針であり、提携地域金融機関や特色あるパートナー企業との協業により事業拡大を目指す。

(6) 新領域
アクリーティブが展開するFPS(売掛債権早期支払サービス)及びFPSメディカル(診療・介護報酬債権早期支払サービス)が業績の底上げに貢献しており、特に、FPSメディカルがグループ連携(提携地域金融機関との協業)により大きく伸びている。また、2018年10月には、一括請求サービス事業を提供するインボイスを連結子会社化※し、BPO事業の強化にも着手した。インボイスを中核企業として位置付け、今後も経営資源を積極的に投入する方針である。特に、同社グループの顧客基盤(財務・経理部門との接点)への即効性の高い営業を推進する戦略とみられる。また、既存サービス(リース物件に対する固定資産税の納付、保険の付保、資産管理サービス、車両のメンテナンス等)との組み合わせにより、経理周辺の面倒な事務作業を対象とした業務受託サービスを展開し、顧客企業の生産性向上(特に、人手不足の解消や働き方改革)への貢献を目指す。

※日本政策投資銀行との共同買収(同社の出資比率60%)。取得価額は約100億円(のれんは未確定)。なお、インボイスの直近(2018年3月期)の業績は売上高1,369億円、経常利益46.5億円であり、安定的に推移している。


以上から、上期の実績を総括すれば、業績面で好調に推移したことに加え、各戦略分野についても概ね順調に進展したと言える。特に、「医療・福祉」における「ヘルスケアアドバイザリー室」の新設や、「新領域」におけるインボイスの買収については、今後の事業拡大に向けた方向性を示した点においても大きな成果と評価することができるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《RF》

 提供:フィスコ

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