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中村潤一の相場スクランブル 「“日銀会合後”躍り出る低位株、次に来るのは?」


株式経済新聞 副編集長 中村潤一

 秋の空模様は変わりやすいといわれます。とりわけ今年は、あの猛烈に暑かった夏の余韻すら束の間のうちに押し流してしまうような台風ラッシュ。株式市場も嵐の予感なきにしもあらずで、2016年相場も最終コーナーに近づいています。

 9月第1月曜日、米国の祝日であるレイバーデーを通過したあたりから株式市場は日米ともに暗雲が垂れ込む展開となりました。米国ではFOMCの早期利上げを強く意識する神経質な地合いとなり、9月9日にNYダウは400ドル近い下げをみせました。しかし考えてみれば、9月利上げの可能性は決して降って湧いたような悪材料ではなく、マーケットには既に耐性がある程度出来上がっていたはず。相場急落の理由として当を得ているとは思えません。世界的な過剰流動性に支えられた株式市場にも、超緩和政策の出口を意識する空気が漂い始めていることは確かです。

●日銀の新たなスキームが機能

 さて、そうした沈滞ムードのなか、秋相場の入口で待ち構えていた難関が日米の金融政策会合。今回、20~21日の日程で日米同時とはいえ時差の関係からFOMCより半歩先に態度を明らかにすることを強いられた日銀の出した答え、それは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」というものでした。東京市場では当初は消化難で方向性が定まりませんでしたが、徐々に追加緩和的な意味合いが強い措置としての認識が浸透し、買いが優勢となりました。

 少なくとも銀行業界から反発の強かったマイナス金利の深掘りは行わず、新たな金融緩和の枠組みである「イールドカーブ・コントロール」を導入したことで、長短金利差で利ザヤを稼ぐ銀行や保険(特に生保)業界にとっては追い風が感じられる内容となりました。一方、日銀のETF買いについては、日経平均偏重型の買いは個別銘柄の価格形成をゆがめる弊害が大きいとの見方から日経平均型を減らしTOPIX型の比重を高める買い入れ方法の修正を発表、これも時価総額の大きい金融株には有利な思惑として働きました。銀行を傷めながらの相場の上昇トレンド形成は困難であるというのが個人的な見解ですが、21日のメガバンクや地銀の上昇はマーケットにも安堵感をもたらしたようです。

 FOMCの結果は本稿執筆時点では分かりませんが、利上げ見送りの可能性が高い。しかし、それを織り込んだうえで、足もとは円安が進行しました。これは緩和的効果が作用したのではなく、リスクオフの巻き戻しによるドル買い・円売りの要素が強かったと思います。

●ETF買いで売りニーズを吸収

 一方、日銀のETF買いについては、購入枠はこれまで通り年6兆円規模で、市場全体へのインパクトに変化はありません。

 前週末(9月16日)配信の「うわさの株チャンネル」でも取り上げていますが、レイバーデー後の日米マーケットの波紋の変化にタイミングを合わせるがごとく、日銀は態度を一変させ、733億円の「ETFバズーカ」を連発。7日にETF買いの号砲を鳴らし、9日から土日をまたいで15日まで5営業日連続、合計6日間で4400億円の資金を東京市場に投下しています。ここまで封印していた伝家の宝刀を抜くや否や縦横無尽に振り回す、エキサイティングな「剣の舞」のメロディーがBGMに聞こえてくるような豹変ぶりです。これには正直驚かされましたが、年間6兆円の受け皿はダテではないことを証明しました。

 ただし、同期間の日経平均は6日の終値が1万7081円で15日終値は1万6405円まで下落。4400億円の受け皿をもってしてもジリジリと後ずさりを余儀なくされたわけです。ここで目先の売りニーズをかなりの部分吸収したようにも見受けられますが、問題は日銀の金融政策決定会合とFOMC通過後のマーケットの風景がどう変化するかです。

●企業業績とテーマ物色の矛先を読む

 株価形成のベースとなる企業業績については、17年3月期は全体ベースで減益はやむなしとしても、非製造業が健闘し、製造業も円高デメリットを思った以上に吸収している状況がうかがえます。安倍政権が打ち出した事業規模28兆円の経済対策が内需を刺激するかたちで相場を支え、株価指標面と照らし合わせても日経平均1万8000円近辺への戻り相場への妥当性が否定される根拠はないといえるでしょう。ただ、今年を通じて言えることはアベノミクス相場の昂揚感は既に失われているということ。時間軸を考慮した場合、やはり年内は、1万7000円台では売りを優先する辛口のリアリズムで立ち回るのが、選択肢として有効であるといえそうです。

 個別銘柄物色の方向性も、主力株への買いがそう長く続くとは思えず、中小型株のテーマ買い有利の構図に戻ると考えています。しかし、人工知能(AI)自動運転フィンテックバイオVR/ARなどの旗艦テーマは年前半で買い疲れ感が垣間見えることも事実。“笛吹けど踊らず”の様相で以前のような総花的な上昇トレンドが形成されにくくなっていることは否めません。それが、最近のリチウムイオン電池バラスト水関連など比較的新鮮なテーマに物色の矛先が向かう背景ともなっているようです。もっとも、それでも資金の回転は速く、投資のタイミングを間違えるとシコリ玉を抱えてしまうパターンにも陥りやすい。「森より木を重視する」といえども個人投資家にとっては、今はなかなか骨の折れる相場なのです。

●低位・材料性・低PBRで奔流に乗る

 ここでは少し目先を変えて、企業の基礎体力にスポットを当てたうえで上値余地を探る作戦を考えたいところ。全体相場が一服した段階で、出遅れている低位株にリターンリバーサルの買いが流入しやすいと考えます。低位株でもここ急動意する銘柄には株価の位置が低位にあり、なおかつPBRやPERなど株価指標面で割安なものが多い。市場でハヤされるテーマ買いの対象であるだけでなく、割安感が担保されていれば仮に株価の騰勢が弱まった場面でも反動安の恐怖は半減されます。直近では、低位材料株特有の派手な上昇波動を描きながら、実は解散価値を下回る割安株の範疇にも含まれる銘柄として、バラスト水関連で買われた内海造船 <7018> [東証2]を筆頭に、神東塗料 <4615> 、住江織物 <3501> 、足利ホールディングス <7167> 、ワタベウェディング <4696> などが挙げられます。

 これらの銘柄は突発的に表舞台に躍り出たように見えますが、みな有配にもかかわらず、既に大相場を形成した内海造船を除いてPBR0.5倍以下という解散価値の半値水準にも届かない安値に放置されている超バリュー株の一群でもあるのです。ネクストステージに立つ銘柄の候補としては、日本カーボン <5302> や岩崎電気 <6924> 、ウッドワン <7898> 、日本山村硝子 <5210> 、北川鉄工所 <6317> 、NSユナイテッド海運 <9110> などのほか、筑波銀行 <8338> 、十六銀行 <8356> 、北越銀行 <8325> といった低PBRの宝庫である地銀株にも改めて注目しておきたいところです。

(9月21日記、隔週水曜日掲載)

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