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8038 東都水産

東証S
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前日比
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100株
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12.8 0.98 2.08
時価総額 262億円
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決算発表予定日

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東都水産 Research Memo(3):あらゆる水産物を国内のみならず世界各地から集荷し安定供給する


■事業概要

1.事業内容
同社グループは、東都水産<8038>と子会社11社、関連会社1社で構成されている。主要事業は卸売市場で生鮮・加工水産物の受託・買付販売を行う水産物卸売事業で、関連する事業として冷蔵倉庫業及びその関連事業(水産物の製造加工含む)、不動産賃貸事業を行っている。2018年3月期の売上高構成比は水産物卸売事業90.9%、冷蔵倉庫及びその関連事業8.5%、不動産賃貸事業0.5%で、営業利益の構成比はそれぞれ13.3%、67.6%、19.1%、セグメント営業利益率はそれぞれ0.2%、9.5%、42.2%となっている。祖業で社会性は高いが収益性の低い水産物卸売事業に対し、採算の良いその他の事業によって利益のポートフォリオバランスを取っているということができる。

同社の水産物卸売事業は大物部、鮮魚部など5つに分けられる。大物部は、最高級といわれる本マグロを始め多種のマグロを集荷・販売している。生鮮マグロは鮮度が保たれた状態で、冷凍マグロは船内で瞬時に冷凍された状態で国内外から入荷する。主な取扱品は本マグロ、インドマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、カジキマグロなど生鮮・冷凍マグロ全般である。

鮮魚部は日本近海や世界各国から集荷された鮮魚・養殖魚などを扱っている。取り扱う魚種は多岐にわたり、近年では技術の発達により良質な養殖魚が増えている。また、鮮度保持が命で、多彩な魚種を手際良く扱う技術とノウハウが必要である。主な取扱品は鮮魚でタイ、ヒラメ、アジ、サバ、イカ、イワシ、タコ、カツオ、ブリ、キンメ、秋鮭、ワラサ、サワラ、カレイ、サンマ、カニ、タラなど、養殖魚でタイ、ハマチ、カンパチ、サーモン、ヒラメなどである。

特種部で扱う水産物は、寿司屋や料理屋のケースに並ぶウニやアワビ、活魚など業務用高級魚がメインである。このため熟練した目利きと商品知識が要求される。グルメブームによる需要の増加に伴い急拡大している分野で、海外からの輸入も増加している。主な取扱品のうち業務用高級魚介類はフグ、タイ、ヒラメ、ウニ、エビ、カニなど、貝類はカキ、アワビ、平貝、ミル貝、赤貝、北寄貝など、活魚はタイ、ヒラメ、カンパチ、ハマチなどである。

加工品部では幅広い種類の干物・練製品・合物を扱っている。品種は、鮮魚と加工品の間に位置するサンマやアジの開きなど合物、シラス・煮干しなどの干魚、かまぼこ・おでん種などの練物、ウナギの蒲焼などと多種にわたり、このためすべての商品に対応できる知識と柔軟な営業スタイルが必要となる。主な取扱品のうち加工品はかまぼこ、ちくわ、惣菜など、合物はウナギ、干物(アジ、サンマ、カマス、イカ、サバ)など、干魚はシラス、煮干し、干スルメ、ワカメ、シシャモなどである。

冷凍塩魚部では冷凍品から伝統的な塩蔵品まで扱っており、多種多様の魚卵類や魚介類を集荷し販売している。発達した冷凍技術を駆使することで、日本近海のみならず世界各地に広がった産地から安定供給することも可能になった。主な取扱品は、冷凍品がサケ、マス、ギンダラ、赤魚、サバ、エビ、カニ、イカ、タコなど、塩蔵品がサケ、マス、身欠きニシン、数の子、イクラ、タラコ、筋子などである。

ほかに、海外事業部では世界の漁場で目利きした本物の味を輸入する一方、世界に広がる寿司ブームなど魚ビジネスに向けて輸出も行っている。販売促進室は、スーパーや水産物専門の量販店などへの季節や旬に合わせた商品供給とプロモーション、テレビショッピングなどの通販会社への商品供給も行っている(2017年4月に加工品部に統合されたが業務内容は変わらない)。東京冷凍工場は築地市場内にあり、生鮮魚、冷凍魚、塩干、加工品の鮮度保持という重要な役割を担うほか、製氷事業は市場全体に対する氷の供給拠点にもなっている。


千葉県民や埼玉県民の食卓も守っている
2.グループ会社
同社のグループ会社は、同社同様、水産物卸売事業、冷蔵倉庫及びその関連事業、不動産賃貸事業を行っている。水産物卸売事業を行っている子会社は(株)埼玉県魚市場、千葉魚類(株)、川越水産市場(株)の3社で、事業環境は築地市場以上に厳しいが、地域の小売業と食生活を支える社会的意義は大きい。冷蔵倉庫及びその関連事業では、埼玉県魚市場、釧路東水冷凍(株)、豊海東都水産冷蔵(株)、東水フーズ(株)が冷蔵倉庫に、釧路東水冷凍、AERO AERO TRADING CO.,LTD.、東水フーズが水産物製造加工に、埼玉県魚市場とSUNNY VIEW ENTERPRISE LTD.が不動産賃貸事業に携わっている。なお、東水フーズは2018年3月期の連結業績には反映しているが、同年3月31日付で事業を停止し、解散している。

埼玉県魚市場は1971年中央卸売市場に準ずる卸売市場として開設され、1973年には埼玉県知事許可の地方卸売市場となった。人口増加を続ける埼玉県の中核さいたま市で、海のない県民の健康的な食生活を支えている。卸売部門は、生鮮魚介類や冷凍塩干加工水産物を豊富に品揃えし、仲卸業者や売買参加者、量販店などへ販売している。冷蔵部門は保税蔵置場を含む冷蔵保管業務や寄託者の第一種利用運送業務により食品流通の多様化にも対応しており、水産物以外の幅広い商品の保管も委託されている。2018年4月に冷蔵倉庫機能と多様な物流機能を兼ね備えた新物流センターが操業を開始、地域の中小スーパーを含む量販・外食向けロジスティックの基点になることが見込まれている。

千葉魚類は、千葉市民ほか近郊の生鮮食料品の流通拠点を担って、1961年に全国で18番目の中央卸売市場として開場した(現在は地方卸売市場へ転換)水産と青果を併せ持つ総合卸売市場の水産物を取り扱う卸売業者で、各地の生鮮魚介類や加工品などを千葉県民に供給している。

東水フーズはマグロの加工を主要事業とし、関東では最大規模の自社加工場を有している。本マグロやメバチマグロなどの加工やネギトロのビニールパック詰め、マイナス55℃の超低温冷凍保管庫でのマグロの品温管理・保管をしている。しかし、不採算が続いたため、2018年3月をもって事業を停止し、解散している。社屋の一角で運営していたマグロ主体のメニューが好評な「浜町食堂」も、惜しまれながら閉店することになった。

釧路東水冷凍は、前身の東都水産釧路冷凍工場時代を含めると60年を超える歴史があり、鮭の加工品を中心に北海道の水産物を全国に販売している。なかでも四季の鮭シリーズは、独自の製法で熟成させた鮭を、半身は天然塩を使用した塩味、もう半身はさらに粕漬けに加工した真空パックの製品で、季節により秋鮭(9月上旬~10月上旬)や紅鮭(6月上旬~7月上旬)などが品揃えられている。ほかにイクラや筋子といった鮭子や紅鮭の切り身を販売している。

川越水産市場は、1994年の川越総合卸売市場の開場と同時に水産物卸売会社として設立された。全国各地より生鮮・冷凍魚介類と水産加工品を集荷し販売している。特徴は、仲卸業者と協力して地域の飲食店・小売店への提案を進めていることである。また、毎週土曜日の9時~12時は一般消費者にも開放している。

豊海東都水産冷蔵は、1967年に東京都中央卸売市場の補完機能として設立された冷蔵倉庫会社である。フローズン・チルド・セミ超の三温度帯に対応した、卸売市場の重要なインフラとなっている。また、豊海水産埠頭に位置するため築地、大田、豊洲などの各市場から近いというメリットがある。


カナダ拠点からの水産加工品の輸出で成長
3. AERO TRADING CO.,LTD.
AERO TRADING CO.,LTD.は1978年カナダ国バンクーバーに設立された水産物製造・加工の子会社で、バンクーバー及びポート・エドワードにカナダ政府の厳しい基準を満たす加工工場を有する。設立以来成長を続け、現在ではブリティッュ・コロンビア州沿岸で、最も多くの種類の天然水産物を買い付け加工する有力企業となった。取扱品目は鮭各種、オヒョウ、ボタンエビ、各種魚卵、底魚、ビンチョウマグロ、ダンジネスクラブ、ギンダラなどのほか、子持ち昆布や数の子など加工品も扱っている。

主に日本や北米、中国向けに出荷している。近年の魚食の世界的拡大により、現在米国や中国向けの販売が急拡大しており、もともと半分以上あった日本向けの構成比が25%程度へと縮小している。AERO TRADING CO.,LTD.は同社の海外ネットワークの基点にもなっており、このような在外子会社を持つ卸売業者はほかにないということも同社の大きな特徴ということができる。今後の同社変革のキーカンパニーと目される。なお、AERO TRADING CO.,LTD.には、関係会社のSUNNY VIEW ENTERPRISE LTD.(バンクーバー)があり、不動産賃貸業も行っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《TN》

 提供:フィスコ

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