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桑山 Research Memo(5):2018年3月期はダイヤモンド市場の変調と受注の偏重で未達となった


■業績動向と今後の見通し

1. 2018年3月期の業績動向
桑山<7889>の2018年3月期の業績は、売上高32,998百万円(前期比11.8%減)、営業利益869百万円(同32.1%減)、経常利益1,010百万円(同35.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益627百万円(同7.1%増)となった。期初の計画に対しては、売上高で5,001百万円、営業利益で430百万円、経常利益で269百万円、当期純利益で92百万円と、やや大きな未達となった。

外部環境は内外とも芳しくなく、売上高は2ケタ減収となった。特にアントワープにおいて、資金調達環境の変化や投機資金の流入などによりダイヤモンドルースの動きが鈍くなった。これを受けてダイヤモンド市場の変調やリスクについて同社内で検討、ダイヤモンドの調達体制を見直すことになり、仕入れを大幅に抑制した。このため、現地拠点での販売が減少したのである。中国では、同社OEM/ODM製品が売上高前期比17%増と好調を持続したものの、素材販売の勢いが回復に至らず、厳しい状況が続いている。一方国内は、春夏期の販売不振による先行き不透明感から発注を様子見する大手小売が多く、その結果、受注がクリスマスへ向けた繁忙期に集中してしまった。結果、主要大手取引先の受注減や、生産を優先したことによる開発遅延が生じることとなった。このため、ブライダルは、ブライダル向け商品の開発遅延などにより、売上高は前期比11.8%減となった。ファッションジュエリーは、同様に繁忙期に生産性低下を招いたもののOEM/ODM製品の開発強化と積極提案によって、前期比5%増の売上高を確保した。チェーンは、定番の喜平チェーンは堅調だったもののデザインチェーンの開発が遅れたことで、売上高は前期比9%減となった。

利益面では、ダイヤモンドルースの減収、一部大手取引先への販売減少に加え、クリスマスへ向けた繁忙期での受注集中による、閑散期の稼働率低下や短納期要請拡大に伴う外注増加により、売上総利益は前期比8.4%減少した。ただし、低採算のダイヤモンドルースの売上高構成比が縮小したため、売上総利益率は前期比1.0ポイント改善した。販管費は、売上げが伸びないなか、桑山インターナショナルの立ち上げ費用及び広州工場の連結により、人員確保や教育など人材への先行的費用負担が発生した。このため、広告費や交通費などその他の販管費を削減したもののカバーできず、販管費率は前期比1.9ポイントの悪化となった。為替差益の縮小もあり経常利益は前期比35.9%減ったが、関係会社株式評価損がなくなり親会社株主に帰属する当期純利益は増益を確保した。なお、2017年クリスマス商戦から宝飾品小売市場に回復の兆しが見え始め、同社の第4四半期売上高も改善した。しかし、通期では受注のぶれなどが計画に対して大きかったため、第3四半期までの売上高・利益の未達をカバーできなかった。


外部環境はやや改善、内部環境は大きく改善へ
2. 2019年3月期業績の見通し
2019年3月期の業績見通しについて、同社は売上高35,000百万円(前期比6.1%増)、営業利益1,100百万円(同26.5%増)、経常利益1,050百万円(同3.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益650百万円(同3.6%増)を見込んでいる。2017年のクリスマス商戦から宝飾品小売市場に回復の兆しが見えてきたとはいえ、依然国内の消費環境は不透明感が強く、2019年3月期業績予想に関して、同社として厳しい見方になったようだ。そして、前期の売上高・利益未達の原因について、ダイヤモンド市場の変調や小売大手の発注遅れ、短納期要請など外部要因による影響が大きかったと言えるが、同社は自らの営業・製造体制に問題があったと見なし、この対策を最優先事項として講じることで、利益水準を回復させていく方針である。

国内でクリスマスに向けた繁忙期に受注が集中したことについては、主要取引先と協働して年間開発計画を策定し、受注予定管理の精緻化と納期短縮を図る。加えて、積極的な提案活動や新素材開発・新技術による新商品開発(実用化に向け最終段階の新素材があるもようだ)によりシェアアップを進める。生産性低下や外注増加については、富山工場と東京本社の生産管理機能を統合し情報ラインを単純化、外注を含め工程全体を常に把握しながら生産を管理する方式へと変更した。また、富山工場に自動検査室ステムを導入し、品質のばらつきを排除するとともに検査工程を短縮化する方針である。無人連続旋盤加工システム導入に向けて検討も開始し、手作業を排除することによる工程数削減や24時間稼働など生産性向上を目指す。営業と製造の両部門にあった開発チームを統合し開発を一元管理、取引先の短納期要請に応えられるよう新製品開発をスピードアップ、新製品の開発数量も増やす考えだ。さらに組織面では、製造・販売・管理の3本部制を取っているが、2019年3月期より新たに専任の製造担当役員を配置する予定である。経営が工場の直接統括をすることで、意思決定や決済のスピードも上げる一方、4工場の製造最適化も進める方針である。

一方、海外では、2018年1月、本社機能を持つ桑山インターナショナルが始動した。中国2工場とともに製販一体体制を構築するため、始動からローカルスタッフの採用を強化する予定である。加えて、現地採用のデザイナーを育成し、現地大手小売チェーンとのコミュニケーションを活発化し、ニーズの迅速な把握、市場動向調査、商品の開発提案、製造販売??と一気通貫したビジネスモデルを確立する方針である。米国では、ネット販売大手にプラチナチェーンが着実に伸びているが、ショーのコンテストで複数回勝ち取った最高位をてこに、取引先を深掘りし拡販につなげる計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《MH》

 提供:フィスコ

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