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7856 萩原工業

東証P
1,595円
前日比
-43
-2.63%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.7 0.79 3.13 16.88
時価総額 238億円
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萩原工業 Research Memo(4):ニッチトップのブルーオーシャン戦略による高収益(2)


■事業概要

(2) 海外展開
創業後4年目で、フラットヤーン製造装置を輸出した。1976年にインドネシア国営肥料会社に製袋一貫大型プラントを輸出した。1995年に、現地子会社「P.T.HAGIHARA WIHARTA INDONESIA(現ハギハラ・ウエストジャワ・インダストリーズ)」を設立しており、合成樹脂加工製品事業に従事している。中国には、2002年に青島に合成樹脂加工製品事業を行う「青島萩原工業有限公司」を設立した。さらに、2005年に上海に機械の設計・部品調達・組立を行う子会社「萩華機械技術(上海)有限公司」を設立した。現在は、いずれも萩原工業<7856>の実質100%子会社になっている。機械製品事業では上海子会社に新たに営業部署を設置した。タイに新設した子会社は、2019年6月よりメンテナンスなどアフターサービスの提供を開始し、有望市場と定める東南アジア諸国の取り組み強化を進めている。

2018年10月期の海外売上高は6,790百万円、構成比25.7%であった。

合成樹脂加工製品事業は、競争力の強い製品をピンポイントで輸出する戦略を取っている。オーストラリアで使用される代表的製品は、鉄製の貯水タンクの内側に貼るインナーシートで、錆の発生を防止しタンクの劣化を遅らせる。競合の塩化ビニール製に比べて、同社製品はポリオレフィン系素材を使用しているため、軽くて強いという特長がある。さらに、北米市場では広大な耕地面積と収穫量のため、穀物カバー用ラミクロスを戦略製品と位置付けている。

コンクリート補強繊維「バルチップ」の海外販売は、EPCが広範囲な地域をカバーしていた。2018年2月に子会社化したことから、同社グループの海外の販売拠点が一挙に9ヶ所増えた。同子会社が本社を置くシンガポールに、オーストラリア、アイルランド、カナダ、米国、メキシコ、チリ、ペルー、ブラジルである。製販一貫体制を取ることで、顧客ニーズを開発にフィードバックするのが容易になった。また、同社の販売戦略が現場に浸透しやすくなった。2018年夏に、世界の拠点から参集したグループ社員が情報の共有化を図った。多数の販売拠点を確保したことから、今後はバルチップのみならず他の同社製品の販促を検討する。

(3) 戦略製品群
同社は、トップシェア、高い収益性、成長性などの観点から戦略製品を選定し、拡販に注力している。現在は、「バルチップ」「粘着テープ原反」「その他高機能化製品」「フィルムスリッター」が相当する。全社の売上総利益率は29.1%(2018年10月期)だが、戦略製品群は30%超となる。戦略製品群の売上高構成比は、50%を目標としている。2019年10月期第2四半期は、穀物カバー用ラミクロスの浸透が一段落し、中国向けフィルムスリッターの需要が一巡したことで、41.2%にとどまった。子会社化した東洋平成ポリマーが、2019年10月期からフルに寄与するため、戦略製品群の売上高構成比は前期の46.6%から42.7%へ低下すると予想している。東洋平成ポリマーの製品の中にも、医療用点滴パックやパック飲料の内貼テープなど戦略製品に該当するものがあるので、今後追加することになるだろう。

(4) 戦略製品「バルチップ」
「バルチップ」(BarChip)は、期待の戦略製品だ。同社が長年培ってきたプラスチック繊維延伸・製造技術から開発された、モルタル・コンクリート用ポリプロピレン補強繊維である。同社がバルチップを発売して20年以上経過したことから、参入者が出てきた。サプライヤーが増えることは、市場拡大を加速させるメリットがある。補強繊維の国内市場では、同社が約7~8割の圧倒的なシェアを持つ。同社の強みは、性能対比でのコストアドバンテージ、太さの違うファイバーを持つ品ぞろえと用途開発など総合力にある。

建築用途では、バルチップが物流施設の土間床用コンクリートに使用されてから20余年が経過しており、その耐用性が現場で実証された。わずらわしいワイヤーメッシュの設置が省略でき、コスト削減と工期短縮が両立する。工事現場の最優先事項は人手確保であり、バルチップを混入するメッシュレスコンクリートは省人化・省力化の点で評価が高い。

土木用では、オーストラリアや南米等の鉱山や日本の東京外環道路が知られている。2003年に、NEXCO(旧日本道路公団)の「トンネル施工管理要領」においてトンネル覆工コンクリート用補強繊維「パルチップJK」の使用が可能になった。コンクリートに添加した繊維の架橋効果により、コンクリート片の落下を防止し、第三者被害の予防に寄与することが確認された。鉄道の軌道用として枕木の高さ調整コンクリートの補強、コンクリート道路の補強、トンネル覆工用モルタル・コンクリートのはく落防止・ひび割れ抑制補強に使用されている。衝撃波が生じる鉄道トンネルの出入口に使用される確率が高い。海外では、ハンガリーの路面電車の軌道やスペインで下水道用コンクリート・セグメントに使用されている。地中に埋設後の補修工事が困難なため、耐久性を高める同社製品が採用されている。

東京外環道路の工事はピークを越えたものの、バルチップの用途開発が進んでいることから、国内では高水準の需要が続くと予想される。今後の大型プロジェクトでは、リニア中央新幹線が期待される。一般的に想定されるのは、軌道及びトンネル覆工コンクリートの補強材への使用である。全ルート438キロメートルのリニア中央新幹線は、2027年に品川-名古屋間、2037年に名古屋-大阪間の開通が予定されている。品川-名古屋間を最速40分で結ぶ予定のため、直線的ルートを最高時速505キロで走ることを計画している。用地確保が困難な東京、名古屋、大阪の大都市圏では、公共性が高いことから地権者の補償が必要ない「大深度地下」を活用する。品川-名古屋間のうちおよそ250キロメートル、同ルートの8割以上がトンネルとなる。山梨県甲府市付近から南アルプス(赤石山脈)を経て名古屋市付近に至る直線ルートを取る。難工事や保守作業が困難な個所での補強材の使用が期待される。北品川の工事にバルチップの採用が決まり、受注した。業績への寄与は、2020年10月期以降となる見込みだ。

欧州では、プラスチック製の使い捨てストローやレジ袋などを代替品に置き換えの動きが出ている。生活や産業分野で役立っているプラスチックも、使用済み製品の不適切な廃棄や不十分な廃棄物管理などにより海洋に流出すると、波や紫外線によりマイクロプラスチック化する。海洋生物の食物連鎖を通して、人や生態系に対する悪影響が懸念されている。日本では、2019年5月に日本プラスチック工業連盟がプラスチック海洋ごみ問題の解決に向けた宣言活動を開始した。宣言書に署名した企業・団体には、総合化学メーカーだけでなく、同社や同社が加盟する日本フラットヤーン工業組合、その上部組織となる日本ポリエチレン製品工業連合会が名を連ねている。日本プラスチック工業連盟は、各企業・団体による優れた取り組みを公表する計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《YM》

 提供:フィスコ

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