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7856 萩原工業

東証P
1,595円
前日比
-43
-2.63%
PTS
1,599円
14:57 04/16
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.7 0.79 3.13 19.83
時価総額 238億円
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萩原工業 Research Memo(7):国内外で合成樹脂加工製品事業関連の企業買収を実施する


■萩原工業<7856>の中長期の成長戦略

1. 中期経営計画「DH56」
現中期経営計画「DH56」は、2018年10月期までの3ヶ年計画である。同社グループが新たな成長を実現していくために、スローガンを「Dynamic HAGIHARA 56(DH56) 果敢に挑戦、新たな躍動」としている。基本方針は、1)戦略製品の販売強化と市場開拓、2)海外売上の拡大、3)ものづくりプロセスの再構築、4)新技術融合による顧客価値の創造、である。

2018年10月期には13件の見本市に出展するなど、積極策が取られた。日本、ベトナム、中国、タイ、フィリピン、台湾で開催された展示会に参加し、展示会では、同社の製品の展示・営業だけでなく、ライバル会社や顧客並びに生産設備に関する情報収集をしている。電池系特殊スリッターの受注獲得や、フィリピンにおける初受注獲得など、既に効果が現れ始めた。

2. 中期経営計画の目標値の進捗状況
中期経営計画の最終年度に当たる2018年10月期の数値目標として売上高27,000百万円、経常利益2,800百万円、売上高経常利益率10.4%を掲げていた。当通期の業績予想は、売上高が24,500百万円、経常利益が2,800百万円、売上高経常利益率が11.4%である。経常利益は中期経営計画の目標値並みとなっているが、売上高は未達となる。

3. 成長戦略
(1) 市場浸透戦略
市場浸透戦略の一環として、工場における生産性の向上とコストダウンにより、製品の一部で戦略的な値付けによる販売数量の増加とシェア拡大を計画している。現中期経営計画では、3ヶ年で通常の設備投資約25億円に加えて50億円の積極化投資を計画していた。工場間の動線改善を目的の1つとして工場の再編を検討しているが、用地手当て等の事情で計画よりも遅れており、次期の中期経営計画に持ち越されそうだ。既存の工場に最新鋭機を導入し、オペレーションのスキル習得を済ませている。新たな拠点では、製造設備の更新を進め、一層のコストダウンを図る。また、製品のラインナップの拡大を図り、ターゲットとする顧客層を広げ、売上高増加と利益率の維持を目指す。

機械製品事業では、中国のリチウムイオン電池のセパレータフィルム用スリッターが旺盛な需要により、納期が半年以上に延びている。生産財のビジネスでは、現在の旺盛な需要に合わせて安易に工場を拡張することは適切でないと判断し、生産性の向上により生産期間の短縮を図る。数年前からユニット化を進めており、設計コストを下げている。

同社は製品を売ることにより本質的な顧客ニーズを充足するというビジネススタンスを取っている。人手不足と人件費の高騰を背景に、最近のキーワードとして「時間短縮」と「省力化」が挙げられる。バルチップの使用は、建設現場における土間用コンクリート打設のための作業工程を減らし、工期を短縮する。新製品の3軸シャフトレス・センタードライブスリッターは操作性を改善し、切断するフィルムの入れ替え作業を、1人で短時間に行えるよう設計した。

(2) 市場開拓戦略
2018年10月期に入って、合成樹脂加工製品事業において国内外で2社のM&Aを行った。これらの企業買収は、現中期経営計画では想定内の出来事で、長期間の熟慮のもと進められた。

a) バルチップの海外販売を担うシンガポールのEPCホールディングを買収
2018年2月のEPCホールディングスの買収もあって、米国向け穀物カバー用ラミクロスが不振であったものの、当第2四半期の海外売上高比率は前年同期比0.1ポイント増の28.1%を維持した。2007年9月に設立されたEPCホールディングスは、豪州、欧州、北米、中南米に子会社を持っており、新たに10社が連結決算の対象となった。

バルチップの海外販売は、日本、韓国、中国(香港含む)及び台湾向けを同社が、それ以外の30ヶ国・地域はシンガポールを所在地とするEPCグループが同社との独占販売契約のもとに行っていた。EPCグループの販売機能を取り込むことで、顧客との価格交渉を含む、製販一体化した自由度の高い営業戦略の遂行が可能となる。最終顧客の情報を入手し、ユーザーニーズを技術及び製品開発にフィードバックする。将来は、バルチップだけでなく、他の製品もEPCグループの販売網に乗せるなど、海外事業の一層の展開を検討する。同社は、EPCホールディングスに数人の役員を送り込む予定でいる。

b) 合成樹脂製フィルムを手掛ける東洋平成ポリマーを買収
2018年6月中旬に、同社は特殊合金鉄メーカーの東洋電化工業が所有する東洋平成ポリマーの全株式を1,130百万円で買収し、子会社化した。東亞合成<4045>が株式の3分の1を持つ東洋電化工業は、2007年に全額出資子会社の東洋ケミカル(株)と昭和電工<4004>から買い取った平成ポリマー(株)を合併させ、東洋平成ポリマーを誕生させた。東洋平成ポリマーは、合成樹脂加工という共通の技術を持つが、同社が手掛けていない合成樹脂製フィルムを扱っている。商品としては、クリアファイルなどの文具、飲料容器のシーリング用のテープ、輸液バッグなどの医療用と、同社が手掛けていない幅広い包装用途をカバーしている。同社は、フィルムと糸の技術を一体化し、新しい用途開発を進める。同子会社のマネジメントには、同社の萩原邦章(はぎはらくにあき)代表取締役会長他が関与する。

(3) 製品開発戦略
バルチップの新しい用途開発に、ハイブリッドプレストレストコンクリート(Hybrid Prestressed Concrete:HPC)がある。沖縄は、戦後の木材不足や台風など風土的理由から鉄筋コンクリートの家が圧倒的に多い。コンクリート補強材の鉄筋は、塩害に弱い。錆びる心配のない代替品として炭素繊維が用いられるが、歪みに強いものの割れやすい。この弱点を、炭素繊維とバルチップ、膨脹材などの混入により解消し、「薄い」「軽い」「曲げに強い」コンクリートが出来上がった。耐久性が高く、加工や運搬がしやすいコンクリート製品は、デザイン性を重視した住宅の建築を可能にする。沖縄発の最新製品が、コンクリートの「厚い」「重い」「硬い」という業界の常識を変える。今後は、HPCの新たな用途開発を進める。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《MH》

 提供:フィスコ

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