貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6861 キーエンス

東証P
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前日比
+730
+1.14%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
5.83 0.46 5.61
時価総額 158,012億円
比較される銘柄
村田製, 
オムロン, 
三菱電
決算発表予定日

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nms Research Memo(4):新中期経営計画の目標値は、売上高1,000億円、EBITDA 45億円


■中期経営計画

1. 中期経営計画の目標値
nmsホールディングス<2162>は2018年5月14日に新中期3ヶ年経営計画を発表した。最終年度となる2021年3月期の売上高1,000億円、EBITDA 45億円を目標値とする。3ヶ年におけるCAGRは、売上高が22.7%、EBITDAが31.3%の高成長を目指す。自己資本比率は、2018年3月期の21.8%から30%以上に、配当性向は同6.5%から20.0%に引き上げることを計画している。

3ヶ年で売上高は、45,827百万円増加(3期間のCAGR:+22.7%)することになる。増加額の事業別内訳は、HS事業が17,930百万円(同27.0%)、EMS事業が17,834百万円(同18.9%)、PS事業が10,063百万円(同24.3%)となる。HS事業は、良好な事業環境を反映して、コンスタントな成長が見込まれている。一方、EMS事業とPS事業は、最終年度の2021年3月期に、それぞれ前期比41.9%増と31.3%増の高成長が見込まれている。今3ヶ年の累計設備投資額は、前3ヶ年の3,261百万円から8,200百万円と倍増以上が計画されている。投資額は、1年目に2,400百万円、2年目に3,000百万円でピークを打ち、3年目に2,800百万円へ若干減少する。1、2年目の積極投資が、3年目に実を結び、営業利益を大幅に引き上げることになる。事業別の目標値は、トップダウンで決められたのではなく、各社がアクションプランに基づいて積み上げたものである。

2. 事業戦略
新中期経営計画では、『変化を好機に 攻めの施策で成長基盤を構築』を掲げている。事業環境の変化として、少子高齢化による労働力減少のリスクの顕在化、新興国の台頭及び生産地域の多極化、環境規制強化による新エネルギー需要の高まりに着目している。同社が進める事業戦略は、1)ASEAN市場開拓、2)新スキームの立ち上げ、3)新製品開発・投入になる。HS(人材サービス)、EMS(製造受託)、PS(電源製品の開発・生産・販売)のそれぞれの特長を生かした連携で経営基盤を強化し、持続的な成長を目指す。


『国境を越えた人づくり・モノづくり』を強みとする
(1) HS事業
a) 高度人材の育成・派遣
HS事業は、人材リソースの多様化と新たなスキームの確立を事業戦略とする。日本では、人手不足を背景に良好な事業環境が続こう。国内人材は、エンジニアなどより高度な人材の育成・派遣に注力し、契約単価を高めて収益性を向上させる。

厚生労働省の労働経済動向調査による正社員等労働者の過不足状況は、2018年2月調査において調査産業計の過不足状況(D.I.=不足-過剰)が44となり、リーマンショック前の2008年2月調査の27を大きく上回った。製造業でも、2008年2月時点の22に対し2018年は47と人手不足感が強い。

b) ASEAN各国・地域との連携
同社は、チャイナ・プラスワンのプラスワンを特定の国ではなくASEAN諸国をターゲットとしている。

nms (Thailand) Co., Ltd.が、急拡大している。人材ソリューションは、現在の1,800人が7月末には2,500人へ、12月末には3,500人への増員が予定されている。損益分岐点を2,200人前後としており、期中に黒字転換し、2019年3月期における収益貢献が期待される。

カンボジアの人材送り出し機関(UNG RITHY CO.,LTD.)と業務提携をして、人手不足が著しいタイに人材を送り込んでいる。また、タイにおけるラオスの人材の活用も視野に入れ現地機関との提携も進めている。同社グループは、タイにニッポン品質による「UKEOI」事業を立ち上げている。

将来、タイでも事業領域が介護分野に広がる可能性がある。総人口が6,796万人のタイは、60歳以上の高齢者人口の割合が15.8%と既に“高齢化社会”に突入している。今後、アジアの様々な地域において日本と同じような”高齢化社会“という課題が出てくることが予想される。

フィリピンは、介護要員の送出し国である。セブ島に、外国人高齢者向けの居住区を設ける案がある。日本及びASEAN諸国で働いた後に、セブ島で介護の職に就くというキャリアプランが描ける。

同社は、中国を始め、ベトナム、カンボジア、ラオス、フィリピン、スリランカなど7ヶ国・8つの政府系送出し機関と戦略的提携でネットワークを築いている。グループ企業の連携により、国境を越えた人づくりモノづくりというバリューサイクルを構築している。

c) 外国人技能実習生の定着支援
発展途上国等に対する日本の国際貢献・国際協力の一環として「外国人技能実習制度」が創設され、2016年12月末時点で約23万人が在留している。本来は、開発途上国への技術移転を確実に行うための研修生の技能実習を目的としたものであったが、一部では低賃金の労働力確保の手段としており過酷労働などを生んでいる。同社は、本来の目的である開発途上国への技術移転を確実に行い、現場の人材不足に対応するための施策を講じている。

2017年8月に、外国人技能実習制度を総合的かつ、専門的に支援することを目的に、外国人技能実習生向け研修事業会社「日本技能教育機構(JATEO)」を設立した。同子会社は、1)入国後教育研修の受託、2)実習生受入先への業務支援を事業目的とする。千葉県我孫子市に「JATEO東京スクール」を開設した。研修時に120人が宿泊できる施設も用意する。2018年度以降の受託人数は、年間1,000人規模を計画している。受入先のニーズに合った講習・技能訓練を企画・構成し提供する。受入先には、受け入れに必要な総務・人事・労務・福利厚生等に関する業務を、総合的かつ専門的に支援する。実習生と受入先の双方が、安心して外国人技能実習制度が利用できる体制を整える。

ベトナムは、外国人技能実習生の最大の送出し国である。同社グループ会社は、ベトナムの政府認定送出し機関「TRI DUC MDC., JSC」と業務提携契約を締結した。受入先のニーズに合った、送出し人材のマッチングをサポートする。NMS VIETNAM CO., LTD.のリソースを活用して、現地における事前教育研修・作業実習機会を提供する。入国後の研修は、JATEOが担当する。実習生が病気になったときの対応を含め、きめ細かなサポートを提供し、外国人技能実習生が安心して実習に臨める環境づくりをサポートする。

ベトナムに続き、2018年5月にインドネシアの送出し機関を束ねる政府公認団体「AP2LN」と提携し、7月には現地法人「PT. nms Indonesia」を設立する予定にしている。

(2) EMS事業
EMS事業は、機動的な生産拠点戦略を実行する。中国は、かつて『世界の工場』であったが、カントリー・リスクや人件費の高騰もあり、企業の生産拠点戦略は『チャイナ・プラスワン』に移行しており、インドネシア、タイ、ベトナム、カンボジアなどに進出する企業が増えている。HS事業が有する人員採用及び派遣・製造請負ノウハウ、海外ネットワークと、EMS事業がこれまで培った低コストでの工場運営のノウハウを融合させたサービスを提供する。また、マレーシアに拠点を持つグループ内EMS企業(TKR)は、多国籍教育の経験を有しており、こういったノウハウも横展開可能だ。

a) 省人化・省力化ノウハウによる効率的生産ラインの構築
新たな取り組みは、「省人化・省力化」をキーワードとする。キーエンス<6861>製の高解像度カメラを用いた外観検査装置の導入を進めている。NMS VIETNAMにおいて、同装置を用いて年間1,500工数の省力化を進める。まず、グループ内製造拠点で実績を上げる。製造派遣の顧客には、労働集約的作業に機動的な人材確保(HS事業)と省力化装置開発(EMS事業)による生産効率向上の複合提案を展開することで独自性とグループシナジーを発揮する。装置による目視検査の代替により大幅な工数削減を可能にすることから、ベトナムや中国での引き合いが増加しており、タイにおいても伸長が期待できる。装置の設置・立ち上げやアフターサービスも請け負う。

中国の東莞にあるTKRの拠点に省人化・省力化の生産技術及び装置の開発のためのR&Dセンター機能を設ける。

b) 新市場・新分野への挑戦案
ベトナムには、2016年1月に人材ソリューションとEMSノウハウで顧客の海外生産展開を支援するNMS VIETNAM CO., LTD.を北のハナム省に設立した。2018年5月に、EMS事業を行うTKR MANUFACTURING VIETNAM CO., LTDをビンフォック省に設立登記した。製造品目は、電子部品、自動車部品、その他部品になる。新設する工場は、プレス工場(土地20,000平米、建物11,000平米)と実装組立工場(土地20,000平米、建物20,000平米)となる。同社の進出する工場団地は、主要顧客に近く、人材確保や物流面からも利点が多く、また地盤が固いためプレス工場に適している。TKRは、顧客の生産及び生産拠点計画を確認し、要望を受けてから新市場に参入する。同工場は、2019年4月より事業を開始する計画でおり、2021年3月期のEMS事業の飛躍に貢献するだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《MH》

 提供:フィスコ

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