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6736 サン電子

東証S
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前日比
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単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
2.04 1.30 4.62
時価総額 737億円
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決算発表予定日

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サン電子 Research Memo(1):2018年3月期は新規事業の遅れやMLCの下振れ。新成長軸の立ち上げ目指す


■要約

1. 会社概要
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカーである。2007年に買収したイスラエルのCellebrite Mobile Synchronization Ltd.(以下、Cellebrite)が展開する携帯端末関連機器が、米国市場中心からグローバル展開へと大きく成長してきた。特に、携帯端末販売店(以下、MLC)向けに加えて、世界中で需要が拡大している犯罪捜査機関(以下、DI※)向けが同社の成長をけん引している。一方、厳しい市場環境に置かれているエンターテインメント関連事業は減退傾向にあるものの、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、導入実績が増えてきたM2M事業のほか、AR関連(AR技術を生かした業務支援ソリューション)、O2Oソリューション事業など、情報通信分野における新たな成長市場への参入により成長を加速する方針である。新規事業の進捗の遅れ等により、前期業績は低迷したものの、2019年3月期はAR関連 及びVRゲームコンテンツ等の販売開始を予定しているほか、M2MやO2Oソリューションも着実に立ち上がってきていること、DI向けが順調に伸びていることなどから、同社は新たな成長ステージに向けて転換期を迎えていると言える。

※裁判等の証拠に用いられるデータ抽出を基礎としたフォレンジック分野に加え、モバイルのデータ解析を事業領域に追加したことにより、これまでの「フォレンジック」から「DI(Digital Intelligence)」に名称を変更した。


2. 2018年3月期の業績
2018年3月期の業績は、売上高が前期比6.5%増の26,297百万円、営業損失が1,074百万円(前期は141百万円の利益)と増収ながら営業損失を計上した。売上高は、MLCが落ち込んだ一方、DIの大幅な拡大が増収に寄与した。また、エンターテインメント関連も遊技機メーカー向けの遊技機部品販売が想定以上に好調であった。一方、損益面では、MLCの下振れに加えて、研究開発費及び販売人件費の増加により販管費が大きく拡大したことで営業損失に落ち込んだ。ただ、AR関連は2019年3月期の下期、VRゲームコンテンツは2018年内での販売開始に向けて準備を進めるとともに、代替サービスの登場などにより需要が減少しているMLCの事業譲渡を決定し、より成長性が高く、技術的優位性を生かせるDI向けに経営資源の集中を図るなど、今後の成長加速に向けた取り組みには一定の成果を残したと言える。

3. 2019年3月期の業績予想
2019年3月期の業績予想について同社は、レンジ形式での予想開示を採用しており、売上高を24,500百万円(前期比6.8%減)~25,500百万円(同3.0%減)、営業損失を1,100百万円~200百万円(前期は1,074百万円の損失)と見込んでいる。売上高は、引く続きDIが大きく拡大する上、上限シナリオでは新規事業(AR関連及びVRゲームコンテンツ)についても下期での売上計上を見込んでいるものの、MLCの事業譲渡(第1四半期末を予定)の影響やエンターテインメント関連の落ち込みにより、売上高全体では減収となる見通しである。なお、レンジ形式の予想開示となっているのは、1)エンターテインメント関連について、業界環境が非常に厳しい上、遊技機メーカーへの規則改正の影響が不透明であること、2)新規IT関連については、新しい分野への挑戦であり、新製品・サービスの開発の進捗及びリリース後の受注に不透明さが残ることが理由である。一方、損益面では、新規事業にかかる先行費用が継続するとともに、エンターテインメント関連の落ち込みが利益を押し下げる要因となるものの、売上高の拡大とともに下期に向けて損益改善が進むシナリオである。弊社では、レンジ下限値は想定されるリスク要因を織り込んだ保守的な水準として捉えており、レンジ内での着地は十分に可能であると判断している。したがって、いかに上限値に近いところで着地できるかが注目点になるだろう。

4. 成長戦略
MLCの事業譲渡に踏み切ったことにより、同社の中期的な成長戦略がより明確になった。すなわち、これまでのDI、M2M、ゲームコンテンツ(スマートフォン)に加えて、需要拡大が予想されるAR関連、VRゲームコンテンツ、O2Oソリューションなどの新たな成長ドライバーの確立により、成長を加速するものである。弊社でも、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているDIはもちろん、圧倒的な技術力と業務用途ごとの共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダートを目指すAR関連、同社ならではのソリューション提供により裾野拡大への対応を図るM2M関連が、市場の拡大とともに同社の成長をけん引する可能性が高いとみている。2020年3月期以降の成長加速に向けて、M2MやAR関連がどのようなペースで業績貢献してくるのか、今後の動向に注目していきたい。

■Key Points
・2018年3月期の業績は増収ながらモバイルや新規事業の先行投資拡大により営業損失を計上
・代替サービスの登場などにより需要が減少しているMLCの事業譲渡を決定する一方、成長性が高く、技術的優位性を生かせるDI向けに経営資源を集中する戦略
・2019年3月期下期はAR関連、2018年内にVRゲームコンテンツの販売開始を予定
・新たな成長軸の立ち上げにより転換期を迎えている

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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