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エイアンドティー Research Memo(8):緩やかな長期にわたる成長を目指す5ヶ年計画を策定中


■5ヶ年経営計画

最後に5ヶ年計画の策定に関して、現状の進捗を説明する。取材によれば、社内ではオーソライズされる状況にあるという。しかし、エイアンドティー<6722>は対外的な受けを狙うだけの実現可能性が危うい計画を策定するつもりはなく、社内でさらに検討をしたうえで、公表の是非の判断を行うようである。

内容としては、売上高・利益ともに急激な右肩上がりにはならないと見られる。三坂社長の経営の基本方針に従い、緩やかではあるが、長期にわたって可能な成長を実現する方針を明確に打ち出し、そのための戦略や、それを実現するための社員の行動目標が中心になっていると考えられる。

当面の重点施策は、既に取り組んでいる戦略の継続となりそうである。具体的には、1)国内販売においては直販とOEMを拡充する、2)海外販売では、アジアを重点市場として生化学分析装置メーカーへのOEMや検体検査自動化システムの販売を拡大しながら、安定的に直接販売比率を10%にする、3)国内の研究開発では既存商品の品質強化、ニーズに応じた製品の開発やケミカル分野での新規事業の創出に向けた検討を行う、4)海外の研究開発では、対象地域の規制に対応した製品や、ニーズに合わせた製品の改良を進める-などである。計画では、重点施策を実現するために毎年10億円以上の研究開発費を維持すること、新卒の15人前後の採用の継続などが盛り込まれると予想される。

ただ、これらの既に打ち出されている基本戦略のほかに、生産性の向上と安定供給体制の構築が大きな柱の1つに加わりそうである。具体的には、設備投資の強化である。現在、同社の製造拠点は江刺工場(岩手県奥州市)で装置と湘南工場(神奈川県藤沢市)で試薬、消耗品を製造しているが、事業拡大に伴い、両拠点ともに製造能力が限界に近づいている。現在の事業拡大ペースでは、2?3年後には能力の上限に達するという。そこで、江刺工場では敷地内の空き地に新工場の建設検討を進めている。湘南工場も必要な設備の増設などを行う方針となっている。総投資額は十数億円を予定しており、2016年12月期中にも具体的な計画が固まり、施工業者との契約が行われる方向で進めている。最も投資規模が大きい江刺工場の新棟完成は2018年12月期の初めになると見られる。しかし、売上高の1割を越える設備投資は短期で実施できるものではない。したがって、事業拡大のペースも考慮しながら、設備投資は今後5年間にわたって段階的に進められる可能性が高い。

投資家としては、設備投資が同社の財務や利益にどのような影響を与えることになるかが気掛かりであろう。あくまで取材を通じた予想であるが、資金調達に関しては、同社は2015年12月期末で5,710百万円の純資産を持っており、自己資金中心の投資は十分可能である。ただ、投資金額が大きいだけにある程度の規模の借入や増資も交えた資金調達が検討される可能性もあろう。利益に関しては、設備投資が計上されるのは2017年12月期以降と予想され、どの程度の影響を与えるかは今後の資本政策によるが、ある程度の影響はあると思われる。ただ、減価償却に関しては、定額法による40年償却であるため、利益には大きな影響は与えないと考えていいだろう。

繰り返しになるが、三坂社長は、極めて好調な決算を出した直後にもかかわらず、焦ることなく、長期を見据えた経営を進める方針を堅持するとしている。今後の5年間は、事業拡大は当然だが、持続可能な成長ができるための投資も積極的に行われる。前向きな投資であることから、投資家も同社に対しては、短期的な利益の追求ではなく、中・長期的な視点に立っての投資が求められるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《SF》

 提供:フィスコ

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