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エイアンドティー Research Memo(4):米アボットと連携強化、製品群の充実に加え組織も再編


■2015年12月期第2四半期決算

(2)トピックス及び課題

次に2015年12月期第2四半期のトピックスを説明する。

a)品質保証の強化
2014年12月期に掲げた重要方針を継続している。エイアンドティー<6722>の商品は高級品が多く、品質への信頼は同社のビジネスの継続にとって最重要項目の1つと言えるためである。また、薬事法の改正に伴い、医療機器も医薬品同様の厳しい安全規制が導入されたことも影響している。「品質保証の強化」は、ここ数年で終了するものではなく、5ヶ年計画の重要な基本方針に組み込まれることも確実視されよう。

b)アボットとの連携と海外販売の強化
同社は製品開発全般に関して、現在主力の国内向けだけを視野に行うのではなく、海外向け仕様への変更ができるようにすることを前提としている。第2四半期はこの理念に基づいて開発された海外向け仕様が大きな収益源となることが期待できる動きがあった。

検体検査自動化システムの前処理工程システムを供給している米国の大手ヘルスケアメーカー、ABBOTT(以下、アボット)との連携強化を図った。アボット側の経営陣の交代をきっかけに話し合いを行い、今後は、前処理工程システムの拡販に必要なリソースを両社で協力して準備することになった。

その第1弾となるのが、5月に供給を始めた分析前工程統合管理モジュール「MPAM+」である。海外仕様に改良されたシステムで、世界最高速レベルの1時間当たり570検体の開栓、540検体の分注、1,000検体の仕分ができる。日本仕様にも搭載されている、緊急検査の検体がでた場合、測定中の検体の列の中に割り込ませて検査する「ランダムコントロール発信」機能も搭載、さらに、他の搬送システムや分析装置との柔軟な接続が可能となっている。来年以降、アボットは世界を5つの地域に整備し直し、各地域に拠点を設置し、世界戦略を拡充していく方針で、同社の前処理工程システムはこの世界市場開拓の戦略商品となる。

さらに、今後は検体検査自動化システムの海外受注の拡大が見込めるため、設備投資も行った。江刺工場(岩手県奥州市)の敷地近くに昨年開設したC棟に追加の倉庫スペース(926.77平方メートル)を賃借し、大型システムの製造スペースの拡張や在庫の確保体制を整えた。

海外販売の拡充に関しては、積極的に推進する。検体検査自動化システムに関して、特に中国・韓国市場を中心としたアジア向け仕様の製品開発を進める。国内の中小規模病院市場を開拓するための戦略製品として5月に発売したばかりの「CLINILOG STraS」の海外規制対応機種の開発に関して、検討も始めた。

製品群の充実だけでなく、営業体制の整備も行った。4月1日付で発足した「営業統括本部」及び「営業部」の新設がそれであるが、これについては次の「組織改編」で詳述する。

なお、海外事業の売上高は、同社の年商の7%程度であるが、3年後には安定して10%を確保できるようにするという目標を引き続き掲げている。

c)組織改編
組織改編は2015年12月期第2四半期における大きなトピックスである。同社は2014年12月期の終わり頃から2015年春に組織改編を行う意向を表明していたが、表明どおり4月1日に実施した。同社は今、持続可能な安定成長を実現する企業になることを大きな目標にしている。そのために具体的な工程表として、まず、経営資源を洗い出し、次にそれをより効率的に活かしていくために事業の選別を行う。次に選別された事業分野に経営資源を集中投資することでグローバルなレベルでの顧客志向の開発戦略を確立し、同時に営業力もグローバル市場に対応できる形で強化する。これら工程を着実に実施することによって、日本市場はもちろん、世界市場もターゲットとした企業規模拡大を実現する筋道を描いている。組織改編は、一言で表現すれば、この工程表を進める上での最初のステップであり、これが機能すれば、2015年12月期のテーマである「持続的な安定成長実現の足場を固める」(三坂社長)ことにつながる。

組織改編は新組織の設立と、既存組織の機能再編の2点で構成されている。新組織は、「事業戦略本部」、「営業統括本部」及び「営業部」である。事業戦略本部は、グローバルな視点から進出先の市場や提携先の検討、新規事業の企画といった経営戦略を取りまとめ、中期経営計画の立案・実行・管理を担う。まさに、上述した工程表を実際に進めて行く役割を担う。

営業統括本部と営業部の新設は営業体制の抜本的な変革と言える。今までは、国内営業と海外営業に分かれていたが、新組織では、直接販売とOEMなどの間接販売での組織区分となる。こうすることで、世界を市場と捉えた営業体制の確立を図る。具体的には、営業統括本部に今までの営業本部と国際本部に分かれていた国内営業と海外営業の各部門を統合した。さらに営業統括本部は「営業第一部」と「営業第二部」の2つの営業部で構成され、営業第一部は世界を含めたすべての市場における直接販売、営業第二部は間接販売を担当する。

既存組織の機能再編は、1)購買業務を生産本部から経営管理本部に移管し、経営サポートを行う経営管理本部の事業運営、サポート機能を強化、2)生産本部に中国事業の工場管理も任せ、グローバルな生産管理体制を構築、3)開発の世界戦略を確立するために事業戦略本部と開発本部が中期開発戦略を連携して作成?といったことが実施された。

d)戦略商品
2015年12月期第2四半期は、「MPAM+」の他にも複数の戦略商品の開発が完了し、発売された点にも注目する必要がある。まず、5月に発売された中小規模病院向けの検体検査自動化システム「CLINILOG STraS」である。「CLINILOG STraS」は、血液検査に最低限必要な機器をつなげて検査の自動化を実現する。現場ユーザーの声を反映して開発した。同社の顧客は大学病院などの大病院が多く、検体検査自動化システムも大型機種だが、この新製品によって中小規模病院という新市場を開拓する。

また、年内発売を目標に、臨床検査情報システムにおける主力製品である検体検査ソフトウェアモジュール「CLINILAN GL-2」の後継システム「CLINILAN GL-3」の開発が進んでいる。血液検査のデータ処理業務が簡単にできるソフトウェアだが、画面の見やすさや使い勝手を改良している。ユーザーである現場の技師の声を丹念に集めて集約した。同社が2013年に発売した情報統合化システム「CLINILAN Core」とセットで新規・更新需要を開拓する。

これらの他に、検体検査装置における全自動糖分析装置の後継機種「GA06」の開発も完了した。処理速度の向上といった機能面の強化、分かりやすい操作性の向上などが図られている。

e)中国事業
海外事業は提携戦略を中心に展開しているが、中国には自社で出資した東軟安徳医療科技有限公司がある。2012年に中国の医療システムメーカーである瀋陽東軟医療系統有限公司51%、同社が49%の出資で設立した。合弁会社は関係会社という位置付けで、現在は、中国市場向けの分析装置を販売している。試薬もOEMで供給している。しかし、現地で生産する予定の試薬工場の建設が難航している。瀋陽東軟医療系統有限公司にグループが丸ごと移転する計画が持ち上がり、予定していた場所での工場建設計画が宙に浮いてしまったからである。

現在は、移転先に工場を建設する方向で計画の練り直しを行っている。ただ、計画の練り直しによって認可を取得し直す必要もあり、新工場での生産は早くても数年後になる見通しになってしまっている。そのため、2014年12月期に合弁設立から3年間の投資損失引当金を計上したほか、2015年12月期第1四半期においても関係会社出資金評価損の計上を行った。

しかし、事業の遅れに対する対策は他の現地企業への生産委託など、あらゆる可能性を視野に検討を進めており、以降も引当金を積み増す必要性は低いと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《HN》

 提供:フィスコ

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