貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6702 富士通

東証P
2,492.0円
前日比
-28.5
-1.13%
PTS
2,492.3円
12:36 04/25
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
22.0 2.86 1.04 1.23
時価総額 51,612億円
比較される銘柄
NEC, 
日立, 
パナHD
決算発表予定日

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テラスカイ Research Memo(3):クラウドに特化し、先頭を走る


■クラウド市場と事業内容等

1. クラウド市場
コンピュータの歴史をひもとくと、1960年代前半のメインフレームから、1980年代以降のオフコン/ミニコンへ変わり、1990年代にはクライアントサーバーになった。2000年代後半にはクラウド・コンピューティングが出現し、Salesforce、Amazon Web Services、Google、Microsoft Azureなどに置き換えられてIT業界においてパラダイムシフトが起きた。クラウド・コンピューティングの拡大により、ITの活用は所有から利用の時代に変わったと言える。

クラウドとは、利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由でサービスとして利用者に提供するものを言う。これまで、利用者はコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自身で保有・管理しなければならなかったが、クラウドを利用することで、これまで機材の購入やシステムの構築、管理などにかかっていた様々な手間や時間の削減を始め、業務の効率化やコストダウンを図れるというメリットがある。しかも、規模・業種を選ばず適用することができ、初期投資が不要で短い構築期間ですむため、クライアントサーバーに比べ大きなメリットばかりであることから企業の導入インセンティブが働いているという背景がある。

(株)MM総研によると、国内クラウド市場の規模は、2015年度は1兆108億円だったものが、2020年度まで年間平均27.4%で成長し、2015年度比3.4倍の3兆3,882億円になると予測している。まだクライアントサーバーによるシステムを採用している企業が多く、テラスカイ<3915>の開拓余地は大きいと言える。

2. セグメント
同社のセグメントは、ソリューション事業と製品事業の2つに分類される。2017年2月期における売上高の内訳は、ソリューション事業が80%、製品事業が20%で、セグメント利益では、ソリューション事業が66%、製品事業が34%という構成になっている。

2017年2月期のクラウドサービス別売上高の構成は、Salesforce.com関連が79%、AWS関連が21%と圧倒的にSalesforce.comの比率が高いが、2016年2月期においてはSalesforce.com関連が96%、AWS関連が4%であり、Salesforceの売上高も伸びているがAWS関連の構成比が拡大していることが分かる。

(1) ソリューション事業
クラウドインテグレーション、クラウドコンサルティング、クラウドERPの3サービスを中心に提供しており、顧客企業のニーズに応じてクラウドを活用した最適なシステム開発の支援・受託開発を行う。具体的には、フロントシステムであるSalesforceやAWS導入に当たり、要件定義から、設計・開発・テスト・運用・効果検証・改善策立案・システム化計画などまでを行う。セールスフォース・ドットコムとは、「Salesforce」のライセンス販売契約を締結している。

同事業については、同社が主に大型案件を手掛け、連結子会社のクラウディアジャパンが九州地区において、キットアライブが北海道地区におけるSalesforce導入コンサルティングを営む。持分法適用関連会社であるサーバーワークスがAWSを中心としたクラウドインテグレーションの提供によるクラウドシステムの導入を行う。同社が50%を出資、サーバーワークスが38.5%を出資しているスカイ365はクラウドに特化したMSPサービスの提供により、クラウドを支えている。大企業においてクラウドの導入は進んできたものの、中小企業においては未導入のところが多い。よって、九州と北海道地区を担当するクラウディアジャパンとキットアライブにより、地方企業や中小企業においても導入が進むだろう。

さらに、BeeXがERPシステムで世界有数のSAPクラウドマイグレーションを担当することで、Salesforce、AWSに次ぐクラウドサービスを開拓する。加えて、2016年12月に同社は、国内唯一の富士通<6702>のGLOVIA OMのゴールドパートナーに認定された。同社の下に日本企業を2次代理店として持ち、GLOVIA OMの販売を進めていくことで、クラウドERPにおいても深耕を図る。なお、SAPは比較的大企業での採用が多く、GLOVIA OMは中小企業で採用される傾向があり同じクラウドERPではあるがカニバリゼーションは起きないようだ。

同社のSalesforceの導入実績は2,500件以上で、みずほフィナンシャルグループ<8411>や小田急電鉄<9007>グループ、WWFなどが顧客として名を連ねており、業種・業態・企業規模を問わず、多数の企業に導入されている。

2017年2月期のソリューション事業の売上高は2,819百万円で、営業利益は407百万円、営業利益率は14.4%であった。

(2) 製品事業
同社は、SaaS(インターネット経由のソフトウェア)ベンダーとして、クラウドに特化したサービスの開発及び提供を行っている。具体的には、画面開発サービスである「SkyVisualEditor」、「SuPICE」、データ連携サービスの「SkyOnDemand」、「DataSpiderCloud」、ソーシャルウェアサービスの「mitoco」、保険代理店向けサービスの「IAS」など。日本においては、システム業務に合わせて画面やロジックなど各社ごとに仕様を変更する場合が多く、特に「SkyVisualEditor」や「SkyOnDemand」は、業界においてディファクト化しているほどだ。

2016年7月にリリースした「mitoco(ミトコ)」は、これまでシステムの開発・保守担当者を対象に製品を開発してきた同社にとって初となるソーシャルウェア(グループウェア)製品である。現在、政府を挙げて推進している「働き方改革」では、在宅勤務など柔軟な働き方への対応を企業にも求めており、企業のコミュニケーションツールとしてグループウェアの活用が、今後一層重要になっていくとみられている。同社の「mitoco」が現在、多くの企業で使用されている競合製品と異なるのは、そのクラウド特性だろう。他社製品では、古くに設計されたデータベースエンジンを使っているなど現在のクラウド環境を前提とした設計がされておらないため、スマートフォン対応が難しいなど、本来の機能を発揮するにはシステム上に著しい負荷をかけなればならないなどの問題がある。「mitoco」では、クラウドでの使用を前提として開発されているほか、必要とする機能をシンプルな操作体系で提供しており、他社のアプリと連携するプラットフォームとしての拡張性が高いため、システムの管理者だけでなく一般の社員にとっても使いやすいのが特徴である。また、同社はITデバイスメーカーであるエコモットと共同で、「mitoco」に会議室利用状況センサーや車両管理などのIoTオプションサービスも提供している。会議室利用状況センサーを取り付けることで、会議室の利用の予約が入っているけれども実際に使用されていない場合は、システムから自動で予約者にメッセージを出したり、予約者から返答がなければ予約を解除することも可能としている。車両管理も同様で、車両の予約と使用状況について効率的に運用できるほか、ドライブレコーダーで稼働の有無やトラブルの状況、傾向などについて管理部門で把握することも可能だ。早くもSOMPOシステムズ(株)、東京海上日動火災保険(株)、(株)日本経済新聞社などで採用されており、今後の受注拡大が期待される。なお、「mitoco」の名前の由来は、「More in today’s company~もっと、今の会社に関わろう~」である。

製品事業は、同社と、米国子会社であるTerraSky Inc.が中心に事業を行っている。資本業務提携関係にあるNTTソフトウェアとは、「SkyOnDemand」の国内総販売代理店契約を締結しており、国内においてはNTTソフトウェアなどが、米国については連結子会社のTerraSkyが製品の委託販売を行っている。

2017年2月期における製品事業の売上高は714百万円、営業利益は208百万円、営業利益率は29.2%と高い利益水準を誇っている。

3. 強み
同社の強みは3点ある。最初に強みとして挙げられるのは、同社の導入実績の多さである。2017年3月時点のクラウド導入実績は2,500件以上で、業種・業態・規模を問わず多数の導入事例がある。実績件数が多いことから、プロジェクト・マネジメントや品質管理なども含め多様なノウハウが蓄積されるというメリットもある。また、大型案件については、受注できる会社が限られており、同社に競争優位性があると言えるだろう。日経コンピュータ主催の「クラウドランキング パブリッククラウド導入支援サービス部門」に6回連続で選出された。

2点目は、エンジニアの圧倒的な数と質である。これは、クラウドサービスの認定資格取得者数からうかがうことができる。SalesforceMVPは、国内で5名しか取得していないが、うち2名が同社に在籍しているほか、認定テクニカルアーキテクトは国内9名しかいないところ、同社で3名が在籍している。認定上級Platformデベロッパー、認定Platformアプリケーションビルダー、認定上級アドミニストレーター、認定Platformデベロッパー、認定Sales Cloudコンサルタント、認定Service Cloudコンサルタントの合格者数は同社が国内で1位となっている。また、AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル、AWS認定DevOpsエンジニアプロフェッショナル、AWS認定デベロッパー、AWS認定システムオペレーションアドミニストレーターなどAWS関連の資格取得者も在籍しており、国内トップクラスの有資格者数と質を担保していることが分かる。また、同社はエンジニアの技術向上を奨励しており、給与水準や労働時間など優秀な人材が在籍しやすい環境づくりにも配慮し、エンジニアの定着率は業界内では高いようだ。

3点目は、複数プラットフォームのカバレッジである。同社は、最もニーズが高いSalesforceを第1に、次にAWSを重点領域と定めており、SalesforceとAWSという最もニーズの高いクラウドサービス両方のエンジニアを有していることは顧客から選ばれる理由の1つとなっている。なお、Salesforce及びAWSは、PaaS、IaaSにおいてマーケットシェアは世界トップクラスであり、Salesforceは平均年成長率30%増、AWSは55%増で推移しているため、同社の受注も連動して拡大すると見られる。

同社の最大の強みは、上記3点の強みの好循環を形成できていることにあると弊社では考える。つまり、多くの案件を実行することにより、ノウハウや経験値は同社及び同社のエンジニアに蓄積でき、国内クラウド市場における同社の優位性がより一層高まり、さらに新規案件を獲得しやすいという好循環になっているのだ。

4. 事業リスク
エンジニアの確保が今後の要となるだろう。国内の労働力不足で依然として厳しい状況にはあるものの、規模の拡大及び知名度の向上とともに人材が得やすくなっているようで、同社が望む人数を確保できるかは別だが、以前との比較では人員を採用しやすくなっているようだ。また、同社は労働環境の改善に取り組んでおり、意欲的な技術者にとって挑戦的で魅力的な案件を提供し続ける職場であるよう努めているもよう。長期的な事業リスクとしては、流れの速いIT業界の中で次のパラダイムシフトに乗り遅れることだが、こちらについては佐藤代表取締役社長が自身の第一の仕事と位置付け積極的に行動している。

(執筆:フィスコアナリスト 清水 さくら)

《NB》

 提供:フィスコ

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