貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6501 日立製作所

東証P
13,755円
前日比
-125
-0.90%
PTS
13,755円
19:46 04/18
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
24.0 2.41 2.32
時価総額 127,532億円
比較される銘柄
三菱電, 
パナHD, 
NEC
決算発表予定日

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【新年3大テーマ(3)】 2017年「最強テーマ」AI関連、“株高の未来図”を追う <株探トップ特集>


―年明け市場で相次ぐ急騰、AI祭り開幕で注目は最高潮に―

 2017年相場の幕が上がった。IoT自動運転バイオ再生医療・ゲノム編集)、フィンテック(ブロックチェーン)、VR/AR、有機ELリチウムイオン電池など産業面・技術面から株式市場を彩る有力テーマはたくさんあるが、最強テーマを一つ掲げるとするならば、それは人工知能(AI)ということになるのではないか。

 なぜなら、今後あらゆる産業においてAIはさまざまな形で関与し、時に融合してイノベーションを巻き起こす糧となっていくからだ。既にAIは金融業界や小売業界で活用され、バイオや医療分野でも浸透し始めており、近い将来にこれまでの常識を打ち破る役割を担う。安倍政権が掲げる第4次産業革命の中核技術分野として、17年相場を舞台にAI関連株への注目度も最高潮に達しそうである。

●サイジニアのロケットスタートにメンバーズが追随

 足もとの株式市場では、ネットマーケティング支援ビジネス分野でAI技術を深耕するサイジニア <6031> [東証M]が、大発会に目覚めたかのようなロケットスタートを決め、2日目は値幅制限上限まで上値を伸ばし脚光を浴びている。

 また直近、大陽線を立てて投機筋を色めき立たせたのは、提携戦略を足場にAI分野でのビジネス展開に注力するメンバーズ <2130> [東証2]だ。一時ストップ高となり、名証上場時の13年12月以来約3年ぶりの高値圏に浮上した。また、地図データ最大手のゼンリン <9474> はAI技術を擁する米エヌビディアとの協業を手掛かり材料に急騰、こちらはストップ高で買い物を残す人気となった。

●世界最大の家電見本市も“AI祭り”の様相

 これ以外に関連銘柄としては、昨年秋から強力な上昇波を形成しているメタップス <6172> [東証M]や日本サード・パーティ <2488> [JQ]。これを猛追する形でブレインパッド <3655> 、サイオステクノロジー <3744> [東証2]、ALBERT <3906> [東証M]、ロゼッタ <6182> [東証M]、テクノスジャパン <3666> などの人気が再燃している。

 インテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]、フォーカスシステムズ <4662> 、FRONTEO <2158> [東証M]、ロックオン <3690> [東証M]、ホットリンク <3680> [東証M]、データセクション <3905> [東証M]なども風雲急を告げる気配となってきた。いうまでもなく、“常連組”ではない新たな出世株候補もひしめいており、企業連携の動きなどを背景に今後相次いで頭角を現してくる可能性がある。

 世界最大の家電見本市である「CES」が現地時間5日に米ラスベガスで開幕、AI技術は家電だけでなく、自動運転分野で不可欠とされる自動車向けなどでも急速に台頭しており、その実勢を肌で感じる見本市となりそうだ。先駆する米国ではグーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどテクノロジー関連の大御所的な企業が自社のサービスや製品へのAI導入を積極推進していることで、世界的にも関心が高まっている。また、今後はビットコインの普及でマーケットが急膨張の兆しにあるフィンテック分野でもAIは人間に取って代わり主役的な存在を担うことが想定される。

●2016年AI革命は3度目の正直に

 この世の事象はすべてネーミングされることでその存在が公に認知される。名称によってその事象の歴史が動き出すといってもよい。その伝でいけば、1956年に米国ニューハンプシャー州で行われたダートマス会議で、人工知能=アーティフィシャル・インテリジェンスという言葉が登場しAIの歴史が始まったといえる。ちょうどそこから60年の歳月を経た昨年は、まさにAI関連銘柄が株式市場で躍動した年でもあった。

 AIはそのコンセプトとして1950年頃に「とりあえず機械がチェスを指すことができる」というレベルでスタートしたが、そこから人類最強チェスプレーヤー(1997年当時世界チャンピオンのカスパロフ)に米IBMのスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」が勝利するまでに実に40年以上の歳月を要した。AIの進化は長い期間をかけて期待先行のバブル的な隆盛と現実世界での挫折を繰り返してきた。コンピューターの性能向上だけでは課題をクリアするのは困難で、研究を進めれば進めるほど人間の脳の凄さを認識させられて終わる、という袋小路に誘導されてしまうパターンの連続だった。

 しかし、2010年代になって歴史上3度目となる大ブームが到来した。3度目の正直ではないが、今回のビッグウェーブは過去と比べてもその波高は際立って高く、革命と呼ぶにふさわしい変化が訪れている可能性が高い。

●ディープラーニングで飛躍、AIが人類を超えた日

 ここにきて新たなステージへと一気にアクセルを踏み込む契機となった技術革新は、マシーンラーニング(機械学習)、とりわけ人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使したディープラーニング(深層学習)である。人間によるインプットなしにAI自らが学習し進化を遂げていく。これが飛躍的な生産性向上を実現させることになった。これはビッグデータ時代ならではの革命といってよく、AIが勝手に超高速で学び進化するための学習教材が、無尽蔵に近い形で存在することが大きい。

 エポックメーキングとなったのは、グーグルが開発したAI「アルファ碁」が昨年3月に囲碁の世界トップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏との5番勝負で圧勝したことだ。通算4勝1敗だったが、アルファ碁の唯一の敗局はバグを起こし暴走したもので、人間側が僥倖(ぎょうこう)を得たに過ぎない。人間の側から見れば、AIの指す手は神の領域に近い。一昨年末の時点では、まだ10年は囲碁の分野でソフトは人類最強クラスに勝てないといわれていた。それが時空を飛び越えたように数カ月後にアルファ碁はこの命題を難なくクリアしてしまったのだから、世界が受けた衝撃は大きかったといえる。

●直観の一撃を凌ぐ勝利への抜け道

 これまで囲碁、将棋、チェス、オセロなど戦いにおける全情報がプレーヤーに公開された「完全情報ゲーム」で人間がコンピューターに勝てる最後の牙城が囲碁であった。1秒間に100万手を超える処理能力を有するAIであっても、囲碁や将棋の変化手順の広がりに真っ向から立ち向かうのは困難を極める。例えば任意の局面で80通りの選択肢があるといわれる将棋の場合で、件(くだん)のAIが10手先をしらみ潰しに読み切るには、何と「34万年」かかると試算されている。もっとも、その大部分は意味のない無駄な枝葉手順であり、人間はこれを直観の一撃で99.9%切り捨てることができる。言うに及ばずトップ棋士であればその精度も高い。

 この直観という武器を持たないAIは、評価関数という「大局観」を使ってフォローすることで超高速の演算能力を生かし、レベルを躍進させたが、盤面が広く曖昧とした囲碁だけは評価関数が作りにくく、これがAIにとって「10年勝てない」といわれるハードルとなっていた。しかし、任意の局面からランダムに手を指し続けたときの勝率を計算し、勝ちやすい局面を見つけるモンテカルロ法という手法がブレークスルーをもたらし、アルファ碁は一気に人間のトップを凌駕する領域に到達した。

●アルファ碁の“頭脳”汎用化への挑戦

 グーグルはこのAI技術の汎用化を目指し、AIを人間と対等のアシスタントにまで高めることを目標にしている。

 そして、AI型コンピューター「ワトソン」を有する米IBMはもとより、アップルやマイクロソフト、フェイスブック、アマゾンなど他のIT大手もこれを静観していることはあり得ず、同分野での競争や合従連衡の動きは加速していくことになる。

 ドイツではシーメンスが国境を越えた企業連携に意欲的だ。IBMの「ワトソン」を自社のIoTプラットフォームに組み込み、データ分析を円滑に進める計画を打ち出しているほか、マイクロソフトや世界的なITサービス大手アクセンチュアなどとの提携を積極的に進めている。

●ソフトバンクと富士通の一挙一動に注目

 そして国内に目を向ければ、今後のAI関連相場を語るうえで、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で、テクノロジー分野への1000億ドル規模の投資を可能とする巨大ファンド設立に動くソフトバンクグループ <9984> の存在は外せない。昨年9月には英半導体設計大手のアームHDを買収し市場関係者の耳目を驚かせたが、IT革命の究極領域であるAI分野で主導権を握ることへの野心は並々ならぬものがある。孫正義社長がトランプ次期米大統領との間で米国における500億ドル規模の投資で合意したことが伝わっているが、AI開発のスタートアップなどが中心軸にあるとの見方が強い。今後も同社のM&A戦略やインキュベーション事業への展開を背景に、株式市場において台風の目となるだろう。

 大手電機メーカー各社もAI分野の開拓に向け総じて数千億円規模の資金を振り向けるとの観測が出ている。そのなか、先駆するのは富士通 <6702> 。コンピューター分野の国内トップで、同社が開発したスーパーコンピューター「京」は有名であり、その高度な技術力を背景にAI分野での展開も加速している。20年3月期までにAIやIoT関連サービスへ3000人を動員する構えで、その本気度が窺える。技術面ではディープラーニングの計算を高速で行う半導体開発に踏み込んでおり、今後も投資家の視線を釘付けにしそうだ。

 一方、NEC <6701> はデンソー <6902> と包括提携し、共同で自動運転を可能とするAIを活用した車載製品の開発に乗り出す。デンソーはトヨタ系の自動車部品トップメーカーだが、中核技術でIT大手と連携するのは過去になかったことで、裏を返せばデンソーにとってNECが持つAI技術がどうしても必要だったということの証左でもある。このほか、グループ力で群を抜く日立製作所 <6501> も、AIの研究開発に向こう3年間で1000億円前後の資金を投下する方針が伝えられている。

●次々と噴き上げるAI関連は近未来の投影

 こうした積極性を増す大手企業の動きを背景に、ここ上昇波動を一服させていたAI関連の中小型株にも再び出番到来を告げる風が吹き始めている。ディープラーニングを用いたシーン認識技術を手掛けるモルフォ <3653> [東証M]やAI・マシーンラーニングによるデータ分析を展開する安川情報システム <2354> [東証2]、AIを活用した次世代型音声対話システムで可能性を広げるアドバンスト・メディア <3773> [東証M]、AI型画像認識システムを幅広く展開するイー・ガーディアン <6050> 、AIを駆使したサイバー攻撃など自動解析や学習などを行い、セキュリティー分野に生かすインターネットイニシアティブ <3774> といった銘柄がその一角を占めている。

 人間対AIの構図で分かりやすいのは、やはり偶然性に委ねられる部分が全て排除された「完全情報ゲーム」における戦いだ。日本棋院は日本、中国、韓国3ヵ国の最強クラスの棋士1名ずつ(日本代表は井山裕太六冠)と囲碁AIの4者による世界戦を創設、3月に総当たりリーグを行う。ここで登場する国産AIは現在最強ソフトではないが、この戦いの行方が注目されるほか、将棋界ではドワンゴ主催の「叡王戦」の覇者である佐藤天彦名人とAI最強の「ポナンザ」と今春に2番勝負が行われる予定で、こちらも関心を集めることになるだろう。

 しかし、いずれにしても昨年3月にグーグルのアルファ碁がもたらした衝撃は、人類にとって AIに対する期待だけでなく脅威にもつながっていく要素を存分にはらんでいる。人間の感性に委ねられた芸術や音楽の世界も含め、 AIが人間の叡智を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)の時代は我々が思っている以上にすぐ近くに迫っている可能性がある。現在の株式市場で繚乱の様相をみせる関連株の物色人気は、その“近未来図”を投影したものといえるかもしれない。


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