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6381 アネスト岩田

東証P
1,344円
前日比
-17
-1.25%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
11.7 1.23 3.35 3.37
時価総額 561億円
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「ミスト関連」現実買いステージへ、酷暑の東京五輪“救世主”になる時 <株探トップ特集>


―小池都知事も言及で物色本格化、市場拡大の恩恵向かう先は―

 酷暑列島ニッポン、もはや命の危険にさえ晒される状況だ。そうした厳しい暑さのなか、懸念されるのが2020年開催まで2年を切った 東京五輪だ。オリンピックは7月24日~8月9日、パラリンピックは8月25日~9月6日と、過酷な暑さのなかでの開催となり、選手及び観客への影響を心配する声が高まっている。そこで、にわかに注目が集まっているのが、設置周辺の気温を2~3度低下させる「ミスト(霧)発生装置」の存在だ。小池百合子都知事も、五輪の猛暑対策のひとつとしてミストに言及するなど、活躍期待が一気にヒートアップしている。五輪を救う「ミスト関連株」の動向を追った。

●もはや「一つの災害」

 気象庁は、連日の猛暑について「命の危険がある暑さ。一つの災害と認識」と表現し、その危険性について警告。20年の五輪では、8月2日に女子、9日には男子マラソンと、まさにこの酷暑のなかでの競技となるだけに、選手及び沿道で応援する観客の熱中症などによる健康被害への対策が求められている。

 こうしたなか、有効な対策としてスポットライトが当たったのが周辺の気温を下げるミストだ。「ミスト関連株」は、ヒートアイランド現象が加速するなか、株式市場においてもテーマ株の一角として幾度となく取り上げられてきたが、いままでは思惑買いの域を出ることが無かった。しかし、五輪開催が迫るなかでの歴史的猛暑により、ミスト発生装置の設置は加速している。いよいよ思惑買いから理想買い、さらには現実買いへの一直線をひた走る可能性が高まっている。

●パナと積水樹脂が強力タッグ

 直近では7月14日に、パナソニック <6752> と積水樹脂 <4212> が暑さ対策システムの共同開発に合意。積水樹脂のシェルター技術と、パナソニックが強みを持つ屋外にクールスポットを形成する技術を基に、より高い冷却・暑熱対策効果を発揮する対策システムを共同で開発すると発表した。

 パナソニックの極微細ミスト「シルキーファインミスト」による気化冷却技術などを利用することで、夏季の屋外においても快適に過ごせる空間をつくるとしている。最近では、さまざまな商業施設などでもミストによる冷却が採用されてきており、大手企業が参入するなか今後この流れが加速しそうだ。

●能美防災、「ドライミスト」の受注増加

 能美防災 <6744> は、「ドライミスト 」を牽引してきた中核的存在で、公共施設をはじめ数多くの実績を持っている。同社製品は、噴霧エリアの気温をおおよそ2~3度低下させる効果が期待されることに加え、極めて微細な粒子のドライミストは、蒸散作用に優れており人に触れてもほとんど濡れるという感触がない。また、上水道を直接使用し、ステンレス配管を採用するなど、衛生面にも十分配慮されているという。

 同社では「問い合わせに加え、ここにきて受注売り上げも増加している。認知度も含めて今後拡大基調にあると考える。最近では、学校などで子供が猛暑のため屋外で遊べないという状況も出ており、そういった面でもニーズが広がっている」(環境システム事業部)という。ドライミストは、ヒートアイランド現象の緩和をテーマに、同社と名古屋大学、清水建設 <1803> 、中部電力 <9502> などとコンソーシアムで共同開発したもの。ちなみに、馴染みの深い「ドライミスト」という名称は能美防災の登録商標だ。同社の株価は、5月23日に2748円まで買い進まれ年初来高値を更新したものの、その後は軟調展開を強いられ現在は2200円を挟みもみ合っている。

●やまびこ、「レインボーミスト」は引き合い旺盛

 一方、屋外作業機械で国内トップクラスを走るやまびこ <6250> も「レインボーミスト」が好調だ。扇風機を上部につけた移動タイプ(水タンク一体型)と設置タイプ(ノズル・送風機組み合わせ)を擁する。同社では「今期に関しては、稀にみる猛暑もあってか非常に引き合いが強い。スポーツ施設をはじめ、さまざまな場所での需要が高まっている」(株式IR課)という。来年以降については「天候次第」(同)というものの、今後の展開に期待をのぞかせる。株価は7月5日に1227円まで売られ年初来安値を更新するも、ここを底に上値を慕う展開で現在は1400円近辺で推移している。

 小池都知事が言及したように、東京都はミストの有効性への実証試験や導入支援について、積極的な取り組みを行っている。東京五輪に向けたミスト設備の導入支援として、都環境局が実施する「クールスポット創出支援事業」、「東京2020大会に向けた暑さ対策推進事業」などにより微細ミスト設備を設置する区市町村、事業者(法人、個人)を対象として、水道に関する技術サポートや、水道料金の減免を行っている。特に、水道料金については「微細ミスト設備の設置後、一定期間にわたってミストで使用した分の水道料金について減免(1/2)。五輪期間中のミスト使用分については、全額を減免」するとしている。

●丸山製、アネスト岩田にも妙味

 こうした東京五輪に向けた取り組みが加速するなか、前述の能美防災、やまびこのほかにも株式市場でミスト関連の常連として名が挙がるのが丸山製作所 <6316> だ。同社は、農業用機械(防除機、林業機械)などを手掛けるが、昨年には「猛暑対策展」に出展、来年開催予定のラグビーW杯東京大会と20年の東京五輪を見据え、ミストを利用した対策や演出を提案するなど積極姿勢を見せている。同社では「今後も注力していく方針」(マルヤマエクセル産機事業部)としており注目は怠れない。株価は出来高流動性に乏しいものの、思惑高を誘う習性もあり気にかけておきたい。

 そのほかでは、アネスト岩田 <6381> にも注目したい。同社の「エコノズル」は2流体方式により少ない圧縮空気で超微細ミストを実現。ペットボトルでも手軽に使用でき、利便性の高さもポイントだ。公共施設やイベント会場での冷却に加え、工場内の温度管理、畜舎内の温度管理と用途も広い。

 ヒートアイランド現象が列島を覆うなか、ミスト利用の冷却については、かなり以前から大手のゼネコンなどを中心として実用化に向けて研究、開発が進められてきた。ここにきて、東京五輪なども追い風にして、ようやく開花してきた状況だ。ただ、「比較的単価が低いため、売れ行き好調といっても急激な業績への影響はない」(広報)と慎重姿勢を見せる関連企業もある。とはいえ、「(今年以降も継続して)異常な暑さが続くことも考えられ、市場の急拡大も予想される」(同)と期待感も見え隠れする。

 酷暑を潤すミスト関連株、本格普及はいま始まったばかりだ。

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