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ノーベル賞炭素素材「グラフェン」が世界を変える日 <株探トップ特集>


―カーボンナノチューブすら超える可能性―

 2010年のノーベル物理学賞の受賞テーマである炭素素材「グラフェン」の商用化に向けた動きが活発化してきた。これまでは製造コストの高さが普及のネックとなっていたが、ここにきて価格を半分程度に引き下げる技術にメドがつき始めている。その多彩な特性から世界を変える可能性を秘めているとも言われ、株式市場でも関連銘柄への関心が高まっている。

●鉛筆の芯など身近な存在

 グラフェンは、炭素原子が六角形のハニカム構造(蜂の巣状)に結合した平面状物質でグラフェンシートとも呼ばれる。以前、株式市場で物色テーマとなった「カーボンナノチューブ(CNT)」は、グラフェンを筒状に丸めたものだ。また、グラフェンが層状に積み重なったものをグラファイト(黒鉛)といい、鉛筆の芯などに使われている。鉛筆で字が書けるのは、グラフェンの層が紙の上に滑り広がっていくことを意味している。

 これまではCNTの話題が先行してきたが、最近はその特性からグラフェンそのものに注目が集まっている。

●市場規模はCNTを上回る

 グラフェンの厚さは1ナノ(ナノは10億分の1)メートル程度と極めて薄く、軽くてしなやか。ダイヤモンド並みの強度を持ちながら柔軟に折り曲げることができ、電気の伝導率は銀より高く、熱の伝導率は銅の2倍以上。化学耐性や耐熱性の高さからシリコンや貴金属の代替品として有望視されている。

 想定される応用分野としては、折り曲げ可能なディスプレーやスマホ・タブレットのタッチパネル、リチウムイオン電池などの蓄電デバイス、高速トランジスタ、触媒など。また、量子力学的特徴を生かし、がん細胞を探して静脈の中をさまよう生物学的センサーの役割も期待されている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はグラフェンの市場規模を2030年に1000億円(13年は13億円)と予測し、CNTの660億円(同32億円)を上回るとみている。

●ADEKAは20年までに商業生産へ

 ADEKA <4401> は15年10月に、東京大学の研究グループが開拓した「グラフェンの製造技術に関する特許」の独占ライセンスを取得し、本格的なサンプル提供を開始した。

 この技術は短時間に高い収率(歩留まり)で、高濃度かつ高品質なグラフェンが得られることが特徴。「問い合わせも多く、今後は開発パートナーと応用研究を推進し、20年までの商業生産を目指す」(法務・広報部)としている。

●大ガスは低コスト技術を確立

 大ガス <9532> はこのほど、グラフェンの価格を引き下げる技術を確立。これまで必要だった真空を保つ装置などをなくし、グラファイトから低コストでつくることが可能になった。同社はこれまで無償でサンプル提供を行ってきたが、「年内に有償での提供に切り替え、数年以内には本格生産を目指す」(広報部)意向だ。

●カネカは多層グラフェンを商品化

 カネカ <4118> は15年7月、NEDOプロジェクトで高品質多層グラフェンの開発に成功したと発表。同年8月から高エネルギー加速器研究機構への販売を開始し、多層グラフェンの初めての商品化例となった。

●日写印はグラフェン基盤技術専業と提携

 日写印 <7915> は13年9月、グラフェンの基盤技術開発を専業とするグラフェンプラットフォーム(東京都渋谷区)と、英国ケンブリッジ大学の研究をベースにした電子デバイスの開発で業務提携。今後の展開が注目されている1社だ。

●日ゼオンはCNT量産工場が稼動

 ゼオン <4205> は15年11月、産業技術総合研究所(AIST)が開発したスーパーグロース法を用いたCNTの世界初の量産工場が完成し、稼働を開始。ここで製造される単層CNTは他のCNTと比べて高純度、大表面積といった特徴を持ち、新機能性材料や次世代デバイスなどへの応用が期待されている。

●昭電工は東北大と量産化技術

 昭電工 <4004> もグラフェンの研究開発に注力。13年には科学技術振興機構(JST)および東北大学と共同で、超臨界流体を用いたグラフェン量産化技術を開発したことを明らかにした。

●住友精、クレオスなどにも注目

 また、経済産業省が所管する単層CNT融合新材料研究開発機構に名を連ねる東レ <3402> や住友精 <6355> 、炭素材料の製造販売などを手掛けるインキュベーション・アライアンス(神戸市)に出資しているエアウォータ <4088> 、グラフェンの構造評価などに使われるレーザーラマン顕微鏡を手掛けるアルバック <6728> 、ナノカーボンの応用開発に注力するクレオス <8101> なども要マークだ。

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