貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6098 リクルート

東証P
6,629円
前日比
-54
-0.81%
PTS
6,673.5円
16:30 03/28
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
28.9 5.25 0.35 1.50
時価総額 112,425億円

銘柄ニュース

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イノベーション Research Memo(2):BtoB企業向けに特化した営業・マーケティング支援サービス事業を展開


■会社概要

1. 会社沿革
イノベーション<3970>は2000年に現代表取締役社長の富田直人(とみだなおと)氏によって設立された。富田氏は1987年の大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス<6098>)に入社し、テクノロジー系サービスの新規事業に関わる営業に携わってきた。日々の営業活動に従事するなかで、属人的で非効率的な部分が多いと感じ、ITを活用することでこうした非効率な部分を改善し、法人営業の生産性向上に貢献するサービスを手掛けたいという思いから起業に至っている。例えば、新規顧客開拓プロセスでは、やみくもに飛び込み営業や電話でのアポ取りを行うのではなく、買い手企業から逆に資料請求等の問合せがくるインバウンド営業の仕組みに変えたり、ニーズのある企業を把握し効率的なアポ取りを行えるような仕組みを、ITを活用することによって実現していく。同様に、既存顧客においても顧客が抱える課題を「見える化」し、最適なタイミングで最適な提案を行うシステムを提供することで、営業の生産性を大きく向上させることが可能となる。

同社は2002年にテレマーケティング代行サービスや、リスティング広告代行サービスなどのマーケティング代行事業からスタートし、2007年に現在の主力サービスである法人向けIT製品の比較・資料請求サイト「ITトレンド」を開発、サービスを開始した。2008年には法人向け各種サービスの比較・資料請求サイトの「BIZトレンド」を、2010年にはクラウド型のMAツール「List Finder」のサービスを開始するなど、現在の主力事業をこの時期に相次いで立ち上げている。また、顧客ニーズや市場の競争環境を鑑みて、2015年には収益性の低かったテレマーケティング代行サービスから撤退、リスティング広告代行サービスも譲渡するなど事業の集中と選択を進め、2016年12月に東証マザーズ市場に株式上場を果たしている。なお、2015年7月に日経BP及びリンクアンドモチベーション<2170>を引受先とする第三者割当増資を実施しており、日経BPとは現在も事業面での協業関係にある。


IT製品の比較サイト「ITトレンド」とMAツール「List Finder」が主力サービス
2. 事業内容
事業内容は、法人向けのインターネットマーケティング支援事業となり、法人営業における見込み顧客獲得(リードジェネレーション)や見込み顧客育成(リードナーチャリング)から顧客獲得後のフォローアップまで、すべてのプロセスにおいてサービスを提供していることが特徴となっている。このうち、見込み顧客獲得までのサービスは比較・資料請求サイトである「ITトレンド」「BIZトレンド」で、見込み顧客育成から顧客獲得後のフォローアップまでを「List Finder」で、それぞれ提供する格好となっている。

事業セグメントとしては、オンラインメディア事業とセールスクラウド事業に区分している。

(1)オンラインメディア事業
オンラインメディア事業には、法人向けIT製品の比較・資料請求サイトとして業界最大級となる「ITトレンド」と、法人向けアウトソーシングサービスの比較・資料請求サイト「BIZトレンド」の運営及び、日経BPが提供するオンラインメディアを中心としたデジタル広告の販売代行サービスが含まれる。

「ITトレンド」「BIZトレンド」は、IT製品やアウトソーシングサービスを販売する企業(以下、掲載企業)が、見込み顧客の獲得を目的として自社製品・サービスを掲載するWebサイトとなり、2018年3月末時点で「ITトレンド」は1,941件の製品を、「BIZトレンド」では199件のサービスを掲載している。同サイト来訪者は掲載されている製品・サービスの中から関心のあるものを選択し、一括して無料で資料請求できる仕組みとなっている。

ビジネスモデルとしては、資料請求が行われた段階で掲載企業から成果報酬(1件当たり1万円または1.5万円)が発生し、同社の売上高となる(「ITトレンド」に関しては掲載企業から初期登録費用として別途3万円を徴収)。掲載企業側から見れば、自社の製品・サービスに関心度の高い見込み顧客を獲得するためのコストとして1件当たり1万円を支出することになるが、最終的な成約率まで考慮すれば、有力メディアに広告を出稿するよりも割安な水準となる。このため、掲載する企業数や製品・サービス数は、年々増加傾向となっている。同社の費用としては、Webサイトを運営するためのサーバー費用のほか、掲載する製品・サービスの紹介文等の作成及び顧客対応に携わる人員の人件費、Webサイトの認知度を向上させ、来訪者を増やしていくためのインターネット広告費等が挙げられる。費用としては広告費を除いてほぼ固定費となるため、限界利益率の高いビジネスモデルとなる。

資料請求件数を増やすための施策としては、掲載製品数を拡充していくと同時に、同サイトへの来訪者を増やしていくことが重要となる。現在、来訪者の流入経路としては検索エンジンを経由したものが約8割を占めているため、検索エンジンで上位表示されるようなSEO対策が重要となっている。

なお、競合する比較・資料請求サイトとしては、スマートキャンプ(株)の「ボクシル」のほか、アイティメディア<2148>の「キーマンズネット」、(株)インプレスの「Find-IT(ファインドイット)」などがある。このうち、「ボクシル」はコンテンツとしてニュース・記事を充実させたサイト構成になっており、直近の掲載社数は1,000社と同社よりも多いが、資料請求対象外の企業も含まれており、同列で比較することはできない。ただ、月間PV数で100万PVとなっており、ほぼ同規模レベルとなっている。

IT製品の比較サイトが複数あるなかで、同社の強みとしては「掲載企業を増やし維持するノウハウ」「見込み顧客を獲得するノウハウ」の2点が挙げられる。「掲載企業を獲得・維持するノウハウ」としては、業界知識や組織的な営業力を活かした直接販売による新規開拓力があること、また、掲載企業の見込み顧客獲得後のフォロー方法や管理手段まで踏み込んだフォローを行うなど、掲載企業の売上向上のためのサポート体制を構築していることが挙げられる。

「見込み顧客獲得ノウハウ」については、リスティング広告代理事業やSEO事業で培った検索エンジンからのサイト集客力を持つこと、また、長年のサイト運営で培った、問合せ率を向上させるためのサイト最適化力を持っていることが挙げられる。

(2)セールスクラウド事業
セールスクラウド事業では、法人営業に特化したMAツール「List Finder」を提供しているほか、オンライン商談システム「bellFace」(提供元ベルフェイス(株))の代理販売及びこれらを基軸としたWebサイトへの集客施策等を実施するコンサルティングサービスからなる。

主力の「List Finder」は、法人営業プロセスの中で見込み顧客の育成から成約・クロージング(リードナーチャリング)、アップセル・クロスセル(フォローアップ)までを効率的に行うツールとなる。主な機能としては名刺情報に基づいた見込み顧客の一元管理、一括メール配信、自社サイト来訪個人解析、自社サイト来訪企業解析、フォーム作成機能等が挙げられる。

MAツールの市場は、3~4年ほど前から日本でもセールスフォース・ドットコム<CRM>やマルケト<MKTO>など外資系企業が販売を開始したのを契機に立ち上がり始めた比較的新しい市場となっている。ただ、外資系の製品はいずれも高機能でシナリオ設計が複雑となり、ツールを使いこなすためにはマーケティングに精通した人材が必要で、BtoBの中堅・中小企業では普及が進んでいなかった。同社は、簡単な機能で低価格の製品を提供できれば中堅・中小企業等でも需要が拡大すると見て、「List Finder」を開発した。

競合製品との比較で見ると、セールスフォース・ドットコムの「Pardot」やマルケトの「Marketo」、シャノン<3976>の「SHANON MARKETING PLATFORM」は機能が充実している反面、サービス料金は年間で100万円を超える水準で顧客対象は大企業向けが中心となる。一方、同社の料金は従量課金制となっており、ライトプランの月額料金は39,800円※1からとなっている。現在、サービス料金や機能面で競合するのは、カイロスマーケティング(株)の「Kairos3」やSATORI(株)の「SATORI」などで、特に「Kairos3」については従量課金制の最安プランで月額5,000円から提供している※2。

※1 2018年3月に新機能を追加したことに伴って、月額利用料金の改定を実施。現在はライトプラン39,800円、スタンダードプラン59,800円、プレミアムプラン79,800円の3プランで提供している。
※2 月間PV数や保有リード数、メール送信数の状況によって料金プランが変動する従量課金制で、月額料金は5千円から12万円まで8つのプランからなり、追加機能のオプションメニューが用意されている。


こうしたなかで、同社の強みは、長年培ってきた独自の法人営業ノウハウを規格化し、製品のサービス機能に反映している点が挙げられる。また、直接販売を主体としているため、顧客の声を直接収集することで商品開発に迅速に活かすことが出来る点も強みで、顧客からの高い支持につながっている。こうした強みを活かして、BtoBの中堅・中小企業向けMAツールとしては、現在業界トップクラスの導入件数となっている(2018年3月末時点での顧客アカウント数※は728件)。

※Webサイト(ドメイン)ごとの契約となるため、複数のWebサイトに導入する場合は導入分の契約件数となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《NB》

 提供:フィスコ

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