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5998 アドバネクス

東証S
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アドバネクス Research Memo(4):メガサプライヤーに対応するグローバルTier2部品メーカー


■アドバネクス<5998>の事業戦略

2. 自動車関連ビジネス
(1) Tier2からの部品調達難易度
自動車向けビジネスは、研究開発費や設備投資などが先行し、売上計上までのリードタイムが長く、中小零細メーカーにとっては資金繰りの面で厳しい。人命に関わることもあるため、厳格な品質管理が要求され、認証をクリアしなければならない。供給責任を果たすと同時に、継続的なコスト削減が求められる。ただし、一度採用されれば、その車種の生産が続く限り需要が安定的・継続的にある。グローバル市場では、低価格で少量生産をする国内中小ばねメーカーは競合先と成り得ず、大型ばねを主な事業領域としている国内の大手ばねメーカーとは市場を棲み分けることになる。

自動車メーカーは、為替変動リスクを抑え現地調達率を高めて優遇措置を得るため、適地適量生産を進めている。日本において新車開発と試作が行われても、量産は海外ということになる。部品メーカーは、デザイン・インと称して完成車メーカーの新車開発プロジェクトに参加し、全体開発に並行して部品開発を進める。部品メーカーは、開発早期から日本のR&D本部と連携を取る必要がある。

Tier2のサプライヤーは、4グループに分類される。まず、同社のように既に海外進出を済ませている企業は、日本における開発連携ができ、現地生産による供給をし、供給開始までの手間や時間がかからず、価格対応力があり、品質・信頼性が保証されている。このため、他の3グループに比べ、Tier1にとって部品調達が最もしやすいサプライヤーになる。2番目のグループとなる海外に未進出のTier2を、Tier1が帯同する場合は、新工場の立ち上げなどの意思決定に時間がかかり、また帯同と引き換えに価格面で配慮せざるを得ないことになる。3番目の日本国内の工場から海外拠点が調達する場合は、為替レートの変動リスクにさらされ、関税や輸送コストがかさみ、価格面で難点がある。最後のローカルサプライヤーの開拓・育成は、技術指導や認定などに手間と時間がかかり、日本のR&D本部との迅速な連携が難しく、品質・信頼性で不安が残る。

自動車向けは製品供給にジャスト・イン・タイム・デリバリーが求められることから、現地生産を原則としている。顧客の製品開発から参加するデザイン・インの関係から、研究開発及び営業は国内で行うものの、生産は海外というケースがある。

(2) 自動車産業の構造的変化
電子機器の生産は、アナログ時代の「すり合わせ型」からパソコンやデジタル家電になってインターフェースの標準化により「組み合わせ型」にシフトした。これにより、技術的蓄積の少なかった新興国でも電子機器の生産が容易になった。エレクトロ二クス化の進む自動車でも、標準化されたモジュール部品の組み合わせが進み、電気自動車(EV)では主流になるとみられる。車種ごとの個別の部品を開発・製造は、開発期間や設備投資、製造コストが課題となる。車種の多様化と低コストを同時に実現するため、プラットフォーム(車台)の標準化・共通化、コンポーネント(部品)の共通化、設計の標準化と共有可能モジュールの大幅な採用が進む。コンポーネントの共有化では、モジュール部品が車体の大きさ・タイプを超えて利用される。

自動走行技術やコネクテッドカーでは、技術の業界標準化が話し合われている。自動車は約3万点の部品で成り立っていると言われるが、コストの半分は汎用部品が占める。汎用部品は生産数量が大きいため価格が低く、その採用はコストダウンに寄与する。生産数量は、自動車メーカーの自社固有の部品では数十万個単位だが、汎用品では数百万個とケタが違ってくる。部品の標準化・モジュール化により、部品の生む付加価値は自動車メーカーから部品会社にシフトする。世界的なTier1の部品会社は、特定の自動車メーカーの下請け的存在から複数のカーメーカーを顧客とするメガサプライヤーとなる。

同社は、メガサプライヤーとなるTier1と取引するグローバルTier2を目指す。海外に10拠点以上持つ企業は、同社の推定では605社のTier1のうちある程度存在するが、7,000社以上もいるTier2ではわずかしか存在しない。

欧米は、日本に比べメガサプライヤー化が進んでいる。世界1、2位のドイツのRobert BoschやContinentalの売上規模は日系トップのデンソー<6902>のそれぞれ2.1倍、1.7倍に相当する。

世界屈指の自動車メーカーであるトヨタ自動車<7203>とTier1の代表格であるデンソーの売上高を比較した。2008年9月に発生したリーマンショックとその後の世界的金融危機に陥る以前の2008年3月期とそれ以降の推移を追ってみた。2008年3月期の連結売上高を100として、デンソーとトヨタ自動車の売上高の推移を見ると、2009年3月期は両社とも78へ落ち込んだ。その後、格差が広がり、2018年3月期の業績予想では、デンソーの124に対しトヨタ自動車は108にとどまる。

トヨタ系列であるデンソーの売上高のトヨタグループ依存度が低下している。2008年3月期のトヨタグループへの売上高依存度は49.6%であった。リーマンショック後の2010年3月期にグループ依存度は52.4%へ上昇したが、2017年3月期には45.8%へ低下した。

自動車メーカーは、円安になっても国内生産を大幅に増やすのではなく、適地適量生産の方針を採っている。所在地別売上高構成比の推移では、トヨタ自動車の日本の割合が2008年3月期の32.0%に対し2017年3月期は31.9%と大きな変化がなかった。同じ時期のデンソーの日本の割合は、50.4%から41.3%へ減少した。他の地域の割合は、北米が20.4%から23.2%へ、アジアが14.1%から21.9%と大きな増加を見せた。同社は、Tier1の生産拠点や要望に合わせてグローバル供給体制を整える。

(3) 同社のグローバル生産体制
同社のグローバルな生産体制は、国内の5拠点、海外の18拠点で形成されている。中長期計画に沿って、国内外の生産能力の拡大と販売網の拡充のための拠点展開をしている。

この数年の動向としては、まず2015年4月に深絞り加工を得意とする船橋電子株式会社を買収し、千葉工場と宮城工場を同社に編入した。宮城工場は、小規模なこともあり、2017年3月に千葉工場に統合した。2016年1月に、自動車向け専用で、省力化無人化に注力したスマートファクトリーの新工場となる埼玉工場を埼玉県本庄市に稼働させた。

海外では、インドネシアに所在し、精密金属プレスやインサート成形部品を製造・販売するPT. Yamakou Indonesiaを買収し、2017年1月に連結子会社化した。インドネシアに生産拠点を確保した上、日系自動車部品会社など十数社の顧客リストを手に入れた。中南米では、2016年4月にメキシコで2番目となる新工場の操業を開始した。このメキシコ・ケレタロ州の工場は、アメリカ国内需要を狙った既存のメキシコ国境工場とは違い、メキシコ国内に進出している日系・欧米系自動車部品メーカーからの需要を取り込む。既存建屋を賃貸することで、初期投資を抑えた。また同年9月には、米国カリフォルニア州にある自動車用プレス部品のメーカーであるElectronic Stamping Corporationから事業を譲受した。同社の既存工場と近く、米国の第2工場と位置付けている。設備等を取得した上、約30社のカスタマーベースも入手した。また、人材面でメキシコ工場を支援する。欧州では、2016年4月にドイツの販売会社が営業を開始した。2018年になると、7月にインド工場(面積:2,157平米)、秋にチェコ工場(同8,000平米)、12月にベトナム第2工場の稼働開始が予定されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《MH》

 提供:フィスコ

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