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5938 LIXIL

東証P
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前日比
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PTS
1,719円
23:51 04/23
業績
単位
100株
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0.78 5.24 27.02
時価総額 4,936億円
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能美防災 Research Memo(3):火災報知設備、消火設備、保守点検等が主軸の3本柱


■事業概要

1. バリューチェーン
防災は1つ1つの機器や設備を個別に取りつけるだけでは、その機能を十分発揮できない。ハードとソフトを有機的に連動した防災システムが、トータルとして機能する。能美防災<6744>は、単なる防災設備メーカーではなく、研究開発から生産・施工・メンテナンスまで一貫した責任体制で顧客ニーズに応える。防災のプランナー並びにコンサルタントであり、防災エンジアリングのできる施工能力や24時間監視体制のメンテナンス機能を持つ。同社の設備・サービス提供のステップは、基礎研究から始まり、火災実験、システム開発、製品開発、設備設計、機器設計・生産、施工、検査、メンテナンスのバリューチェーンで成り立つ。

様々な分野に最適な防災システムを提供するようにしている。情報インフラ防災システム、船舶・車両・航空機防災システム、トンネル防災システム、工場防災システム、各発変電・石油・化学などプラント防災システム、文化財防災システム、集合住宅システム、一般住宅防災システム、ビル・地下街防災システムを網羅している。これらのシステムは、主な防災設備となる火災報知設備、防火・防排煙設備、スプリンクラーなどの消火設備、ガスもれ警報設備、非常用放送設備、避難誘導設備、住宅用防災設備、防犯警報設備、消火器などの各種防災機器により構成される。

2016年の利用旅客数が8,000万人を突破した東京国際空港(羽田空港)や安全性を徹底して追求し、信頼される空港を目指す成田国際空港に同社の防災システムが導入されている。成田空港では、旅客ターミナル、オペレーションセンター、機体整備場などをカバーする空港内広域集中監視システムにより、空港内のすべての防災情報を集中把握できるよう中央監視センターとサブ監視センターを一元化して安全のネットワークを構築している。

2. 事業別売上高構成
防災事業に特化しており、火災報知設備、消火設備、保守点検等が主軸の3本柱。2017年3月期の外部顧客への連結売上高構成比は、火災報知設備が36.0%、消火設備が33.5%、保守点検等が25.3%、その他が5.3%であった。セグメント利益の構成比(消去または全社の控除前)では、火災報知設備が33.8%、消火設備が34.3%、保守点検等が29.7%、その他が2.2%であった。売上高セグメント利益率は、火災報知設備が16.1%、消火設備が17.7%、保守点検等が20.3%、その他が7.0%であった。事業の三本柱は、いずれも高い利益率を実現している。同社は、消去または全社の調整額が比較的大きいものの、その金額控除後の売上高営業利益でも10.7%と高水準を保っている。

3. 事業内容
(1) 火災報知設備
火災報知設備は、火災をセンサーによりいち早く見つけ警報するシステム。具体的には、火災により生じる煙・熱・炎を利用して火災の発生を感知するセンサーである『感知器』、火災の発生を周囲に知らせる『ベル・発信機』、感知器の信号を受信し関連機器に信号を送り連動させる『火災受信機』などから構成される。

(2) 消火設備
消火設備は発生した火災を水や消火剤、泡、ガスにより消火し、火災の拡大を防止するシステム。水の噴射により火災の拡大の抑制、消火を行う自動消火システムである『スプリンクラー設備』、発生した火災に手動で放水し消火活動を行うための機器である『屋内・屋外消火栓』、駐車場・プラント等の油火災対応の消火システムである『泡消火設備』、窒素ガス等による消火システムである『ガス消火設備』がある。『ガス消火設備』は、水をかけることができない電気機械室、コンピュータールームや美術館等で採用されている。

(3) 保守点検等
納品したシステムが確実に機能するためにシステムの維持管理を行う。具体的には、消防法で定められている年2回の防災設備点検を行い、劣化診断や定期部品交換等メーカーとしてのサービスを展開。また、火災やシステムの不具合に迅速に対応するため、24時間電話受付による顧客サポート体制を敷いている。

(4) その他
その他は、駐車場車路管制システムの施工・保守のほか、上海では防犯設備機器の製造販売を行う。

4. 生産拠点と研究開発拠点
国内では、埼玉県熊谷市のメヌマ工場と東京の三鷹工場がある。メヌマでは工場、量産品を製造しており、三鷹工場では特注品を製造している。海外では、上海と台湾に生産拠点がある。上海では海外向け防災機器及び防犯機器を製造、台湾では海外向け防災機器の製造を担当している。

研究開発センターをメヌマ工場及び埼玉県三郷市の三郷研究開発センターに配置している。同社の開発技術は、電気制御機器、熱・煙・炎等のセンサー、無線技術、水の制御、放水技術、ガスの制御、放出技術などがある。研究開発センターでは、多種多様な火災実験も行っており、実験によるノウハウを蓄積し、製品開発に生かしている。また、中央官庁や各種協会、研究機関、企業等から施設環境の違いによる火災の現象について、これまで数多くの火災実験を受託し実施しており、これが同社の強みになっている。

5. 製品
同社は、防災に関しては幅広い製品を取りそろえているが、ここでは、最新型の火災報知設備であるリング型表示灯付発信機と画像処理煙検知システムを簡単に紹介する。

リング型表示灯付発信機は、その名のとおり、リング型で表示された発信機である。リング型の表示灯は傾斜を付けることで斜めからでも見えやすい構造で、リング型の中に発信機のボタンが配置されており、ユーザーにも分かりやすい。壁から突出していた表示灯をリング型にしたことで、従来品との比較で表面積が約50%減少できた。従来製品より、デザイン性、利便性の向上に成功、グッドデザイン金賞を受賞した。設置時の厚みがなくなったことで、学校や施設の搬入経路に設置された場合に誤って表示灯に接触することによる怪我や破損がなくなり、安全面も向上した。

画像処理煙検知システムの導入により、遠隔での監視が可能になった。滞留する煙、天井に広がる煙、立ち上る煙、薄く漂う煙、横に流される煙など様々な種類の煙を監視カメラの画像から検知し、遠隔地でリアルタイムに状況把握ができる。煙を検出すると監視用画面の枠が赤色になり、煙検出エリアを円で囲んで表示するなど、ユーザーが活用しやすい形で提供している。

6. 営業と販売網
同社の営業は、施主、設計事務所、建設会社、電気設備工事・衛生設備工事・空調設備工事などを行う設備会社(サブコントラクター)、ビル運営管理会社など、建物の建設に携わる様々な関係先に対して営業活動を行っている。営業活動には、コンサルティング、システム提案、設計協力、施工、機器販売、メンテナンスを含む。

同社は、メーカー直販とは別に「販売代理店制度」を採用しており、地域密着型の企業と代理店・特約店契約を締結、全国への販路を確保している。現在の代理店数は102社、特約店等78社の合計180社。これらには、地域の防災設備会社や防災点検会社、電材商社などがあり、強い代理店網を構築できている。同社と代理店は人的交流も活発で、同行営業なども行っている。

海外では、中国と台湾とインドに子会社、ドバイとシンガポールに自社の拠点を置いている。ほかに、国内と同様に世界に広く代理店及び取扱店を配置している。

7. 競合状況とマーケットシェア
自動火災報知機器・設備市場は、大手4社が約9割のシェアを押さえている。それらは、同社、ホーチキ<6745>、ニッタン(株)、パナソニック<6752>である。同社の推定シェアは約3割となる。同社は防災事業では高いシェアを持つが、ホームセンターなどで売られる戸建て住宅用火災報知器では、パナソニックのブランド認知度が高い。

一方、同社が過去から強みとしているトンネル向けの道路防災システムでは5~6割、文化財防災システムでは約4割のシェアを持つ。

同社とニッタンは、セコムの子会社になる。ニッタンはかつて東証2部に上場していたが、2005年に(株)住生活グループ(現LIXILグループ<5938>)に株式交換により完全子会社化され上場廃止となった。2012年にセコムの子会社となった。ニッタンは、火災報知器分野で1割強の国内シェアを有する。一方、綜合警備保障<2331>(ALSOK)は、2012年にかねてより業務提携をしていたホーチキの株式を取得し、現在15%を所有する筆頭株主となっている。ALSOKは、2016年に消火・防災設備大手の日本ドライケミカル<1909>と資本業務提携をし、所有株比率15.3%の最大株主となった。日本ドライケミカルは、2000年に米国総合セキュリティー・防炎メーカーのTOBにより上場廃止となったが、資本が移動し、2011年に東証2部に再上場を果たし、2013年には東証1部に返り咲いた。

消火設備のスプリンクラーヘッドでは、同社シェアは約1割と推定される。機器の製造・販売のみを行う会社もある中、同社は自社工事やメンテナンスも行っている。消火設備市場には、ホーチキ、ニッタン、千住スプリンクラー(株)、ヤマトプロテック(株)、日本ドライケミカルなどが競合先となる。同市場に、パナソニックは進出していない。

8. 特長と強み
同社は、研究開発からメンテナンスまでの一貫体制や、総合防災に関する開発、設計、施工等の技術力、幅広い品ぞろえが強みとなる。長い歴史や実績で培った消防庁や関係機関からの信頼が厚いことのほか、研究開発分野では、豊富な実験経験により蓄積された火災に関するノウハウを蓄積している。電気、制御、無線、消火、ガス等多数の開発技術を保有している。また生産面では、自社開発・自社生産のため高品質で柔軟な対応が可能である。営業・販売面では直接営業による建築業界へのつながり、全国にある充実した代理店網、豊富な納入実績などが挙げられる。また、この分野は特殊用途及び検定品のため、他業界や国外からの参入がないことも強みと言えるだろう。

9. 同業者との財務比較
防災設備・システムは、消防法など関係法令で防火対象物や設備設置基準などが厳格に定められており、参入障壁が高い。「安全・安心」を支える要となるため、技術・製品・品質管理、知見だけでなく、経験と実績が重要になる。

同市場の上場3社は、いずれも良好な財務体質と高収益を上げている。2017年3月期の連結ベースの総合経営指標であるROEは、同社が9.8%、ホーチキが16.8%、日本ドライケミカルが8.5%といずれも8%を超えた。同社は、3社中で売上高、利益、総資産、自己資本の規模が最も大きい。財務の安全性を表す自己資本比率も64.8%と最も高い。売上高当期純利益率でみた収益性も一番高い。ただし、総資産回転率が低下傾向にある。ホーチキは、収益性で同社より劣るものの、資産効率と財務レバレッジが高く、10%を超えるROEを達成した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《MW》

 提供:フィスコ

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