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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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5805 SWCC

東証P
4,085円
前日比
+70
+1.74%
PTS
4,090.5円
11:27 04/18
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
14.5 1.69 2.08 5.49
時価総額 1,259億円
比較される銘柄
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決算発表予定日

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泉州電業 Research Memo(2):独立系では最大手の総合電線商社。オリジナル商品で差別化を図る


■会社概要

1. 会社概要
泉州電業<9824>は電線の総合専門商社で、独立系では最大手である。その歴史は古く、設立は1947年に遡る。仕入先は約250社となっており、大手は言うに及ばず、国内の電線メーカーの半分以上と取引がある。在庫商品アイテム数は約5万点と、国内における商品の調達力は抜きん出ている。

2. 沿革
同社の歴史は古く、1947年に「西村電気商会」として設立された後、全国及びアジア諸国へと、業容を拡大してきた。2018年4月末時点のグループ全体での従業員数696名、国内連結子会社6社、海外連結子会社5社(タイ2社※、中国1社、台湾1社、フィリピン1社)、国内支店8ヶ所、営業所7ヶ所を擁する。

※タイ子会社1社は現在、清算手続き中。


株式については、1991年6月に大阪証券取引所市場第2部へ上場した。その後2002年11月に東京証券取引所市場第2部へ上場し、さらに2017年11月には同市場第1部へ指定替えとなった。

3. 事業内容
(1) 仕入先と販売体制
同社は電線の総合専門商社で、独立系では最大手である。仕入先は約250社となっており、国内の電線メーカーが中小企業を含めて約400社ある中で、同社は半分以上のメーカーから仕入れていることになる。在庫商品アイテム数で約5万点と、国内における商品の調達力は抜きん出ている。主な仕入先は昭和電線ホールディングス<5805>、住電日立ケーブル(株)となっている。

販売体制については、国内で支店8ヶ所、営業所7ヶ所を有し、各支店・営業所に物流センターを併設し、営業社員200名体制で全国展開している。また、加工品の工場(外注工場を含む)を納入先の近隣に設けるなど、「必要な商品を、必要な分だけ、必要なときに届ける」というジャスト・イン・タイムのデリバリー体制及び在庫管理能力を強みとしている。在庫水準に関しては「0.8ヶ月以内」と厳しい社内規定を設けて、銅相場の変動に対応できるよう適正在庫水準を常に維持している。顧客は電材販売業者及びメーカー、電気工事会社など約3,500社に上り、最大の顧客先の売上構成比は約3%、上位10社合計でも約15%程度と、特定の顧客に対する依存度が低く、幅広い顧客と取引を行っているのが特徴である。

(2) 商品別構成比
同社の商品別の売上構成比(2018年10月期第2四半期、単体ベース)は、機器用・通信用電線が38.2%と最も大きく、次いで電力用ケーブル32.0%、汎用被覆線10.5%、その他電線5.3%、非電線14.0%となっている。

同社の商品別構成比を業界全体の構成比(2014年暦年)と比較すると、機器用・通信用電線及び電力用ケーブルの比率が高いことがわかる。これは業界合計では比率の高い輸送用電線(主に自動車用ワイヤーハーネス)を同社では手掛けていないことによる。輸送用電線を除いた業界合計の構成比は機器用・通信用電線で約20%、電力用ケーブルで約33%となっており、電力用ケーブルは同社とほぼ同じ数値となっている一方、機器用・通信用電線は同社の構成比が高くなっており、この点が同社の特徴と言える。

(3) 業界シェア
日本電線工業会の統計データから同社の業界シェアを推計すると、電線総出荷額ベースでは4%程度と推計されるが、同社の関わる需要部門である「建設・電販部門」だけで見ると約15%になる。また、商品別で見れば、同社の収益源となる機器用・通信用電線のシェア(同社未公表のためフィスコ試算)は約14%となっている。同業はメーカー系の商社が多く、上場企業は同社のみとなっている。

電線業界では現状、電力ケーブル分野における価格競争が続いており、同分野を手掛けている独立系商社にとっては厳しい状況が続いている。経営体力がなく、差別化できる商材を持っていない電線商社は、大手メーカー系商社の傘下に吸収・統合されるといった傾向が続いているようである。

(4) 特色、強み
前述のように同社は多くの種類の機器用・通信用電線を手掛けているが、なかでも自動車業界及びエレクトロニクス業界における工場の生産ラインで用いられる電線を主力としており、これは同社の特色だろう。それらはFA機器及び工作機械をつなぐケーブル、これら機器内に組み込まれる電線などである。このため同社の業績は、国内における自動車・エレクトロニクス業界を中心とした製造業の設備投資動向と相関性が高くなっている。

また同社は、この機器用・通信用電線において他社との差別化を図っている。具体的には、営業が集めてきた顧客ニーズをもとにオリジナル商品を独自で、またはメーカーと共同で開発し、単なる仕入販売商社ではない付加価値商品の販売を行っている。前述のとおり、同社は加工品の拠点を顧客の近隣に展開しているが、このロケーション戦略によって顧客との接触を密にし、新製品及び生産ラインの設計段階からの情報を入手して商品開発に生かしている。こうしたオリジナル商品の特徴は、「耐久性、耐環境性(温度変化、防油、防水等)、ノイズ対策」など、顧客の多様なニーズに応えられる点である。一方でオリジナル商品に関しては在庫リスクを同社が抱えるため、粗利益率も高く設定されている。機器用・通信用電線の中でこうしたオリジナル商品の売上構成比は半分程度を占めており、これも同社の特色であり強みと言えるだろう。

こうしたなかで、同社はオリジナル商品の開発で顧客との強い関係を築き上げているほか、多品種少量受注にも対応できるデリバリー体制を構築していること及び、商品ラインナップにおいて中小メーカーの特殊ケーブルなどもそろえることができるといったメーカー系列にはない強みを持っていることなどにより、今後も独立系商社のトップ企業として成長を続けていくことは十分に可能であると弊社ではみている。

(5) 銅価格の影響
同社の業績に影響を与える大きな要素として銅価格が挙げられる。同社が扱っている電線類の主原材料は銅であるため、電線価格(仕入・販売)は国際商品市場での銅価格にスライドする。そのため、銅価格の動きによって売上高は大きく変動するが、仕入価格も販売価格と同様に変動していくためマージンは変わらない。ただし、同社は在庫評価方法に「移動平均法」を採用していることから、銅価格が上昇する局面ではそれまでの低い原価が計上されるため利益が先に出る傾向があり、反対に下降局面ではそれまでの高い原価が計上されるため利益が少なくなる傾向がある。長期的に見ればこれらは平均化されるので、銅価格の利益への影響は微少であると言える。

一方で、販売価格に関しては銅価格の影響だけでなく、競争による影響もある。特に電力用ケーブルにおいてその傾向が強く、電力用ケーブルの粗利益率は同社商品の中でも低い水準である。ただし、電力用ケーブルに関しては顧客となる電材販売業者約1,100社が扱っており、品ぞろえとして欠かせない商品であることも事実である。また、もう1つの柱である機器用・通信用電線は設備投資動向への依存度が大きく、好不調の波が激しいこともあって、経営の安定性(リスク分散)という意味でも電力用ケーブルは同社にとって不可欠の商材となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《MH》

 提供:フィスコ

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