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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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4996 クミアイ化学工業

東証P
814円
前日比
-14
-1.69%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
8.9 0.74 3.44 65.22
時価総額 1,084億円
比較される銘柄
日農薬, 
北興化, 
アグロカネシ

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中村潤一の相場スクランブル 「日銀会合後に急浮上、8月の材料株旋風に乗れ」


minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

 いよいよ8月相場入りです。真夏の太陽の存在を嫌というほど思い知らされる暑さが続いていますが、気がつけば、あと1週間もすれば暦の上では「立秋」となり、秋の気配を背中に感じる時節となります。日経平均株価は出足強い動きとはいえ、値下がり銘柄も多く、新興市場などは売りに押される展開ということもあり、投資家にしてみれば今一つ意気が上がらない環境です。

 上値追いが本格化するかと思えば戻り売りに押し返され、下値リスクに身構えればヨーヨーが巻き戻されるようにスルスルと再浮上してくる。方向感の見えにくい地合いが続いています。日経平均の騰落レシオ(25日移動平均)は7月末時点で116%と過熱ゾーンの一歩手前、一方でマザーズ指数は83%、ジャスダック・グロースは75%とむしろ売られ過ぎを示唆する水準にあります。日経平均はNT倍率の拡大が取り沙汰されたように、インデックス売買主導で偏重気味に買われた形跡があり、これは日銀のETF買いに伴う浮動株吸い上げの動きが影響しているのではないかという見方もあります。

●「ステルス・テーパリング」でも買い戻し先行

 そうしたなか、7月31日までの日程で行われた日銀の金融政策決定会合ではETF購入比率をTOPIX 型の配分を引き上げる形で持続性を高めることを決め、長期金利については従来の0.1%から0.2%程度まで上下に許容変動幅を広げる方針が示されました。ETF買い入れ枠は現在、新型ETFを除くと年間5兆7000億円に設定されていますが、これについてはTOPIX型の配分を高めても上限に変化なしということで、同日後場のマーケットには安堵にも似たムードが漂いました。為替は決定会合通過後に円安方向に振れ、これは全体株価にもポジティブな流れとなっています。

 ただし、これは“黒田マジック”による部分も少なからずあるようです。今回の日銀からリリースされた文書のヘッドラインは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」。これを英訳した際に、目に飛び込んでくるワンフレーズで海外投資家に対して日銀の緩和姿勢に不退転の意思を感じさせ、円安・株高のイメージを植え付けるのに十分な効果があったというわけです。

 しかし、中身を紐解くとETF及びJREIT買い入れ方針については「資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買い入れ額は上下に変動しうるものとする」という一節が入っており、これが長期金利の許容変動幅の柔軟化と合わせ「ステルス・テーパリング」であるという見方も一部の市場関係者の間に静かに浸透しています。本来であれば物価見通しを引き下げている以上、方向として金融緩和姿勢をさらに強めるのが道理なのですが、「柔軟化」の言葉の裏側にあるベクトルの向きはむしろ反対といえます。日銀が金融政策の限界、すなわち金融緩和で物価上昇率2%の命題クリアは困難である、ということを認めたメッセージとも受け取れるのです。

●カギを握るのはやはり海外ファンドの動向

 日銀の保有するETF残高は今年3月末時点で約24兆円、既に東証1部時価総額の3.7%に当たる水準です。また、日銀の自己資本に対しても約3倍の水準まで膨張、今のペースでどこまでも買い続けることは困難である、ということは論をまちません。来秋の消費税引き上げまでは、出口戦略は棚上げという暗黙の了解が政府・日銀当局にはあるようですが、株式市場においては遅かれ早かれ“日銀セーフティーネット相場”からの脱却を意識しておく必要があります。

 今回の金融政策決定会合は、FOMCに取って代わって久しぶりにマーケットが固唾を飲んで見守った会合となりましたが、果たしてここを起点に日本株復活の幕が上がるかどうかについては、現時点では未知数の部分が多く、海外ファンド筋による買い戻し一巡後の動きを見極めたいところです。カギはやはり外国人投資家が握っています。

 忘れてならないのは米国を軸とする通商政策の行方ですが、これについては前週の米国とEUの間で行われた首脳会談で、自動車以外の工業製品に対する貿易障壁の撤廃に向けて歩を進めており、米・EU間における貿易戦争への懸念はひとまず後退しています。日米間では、8月9日に茂木経済財政・再生相とライトハイザーUSTR代表との間で予定される貿易協議が重要スケジュールとして投資家のセンチメントに影響を与えることになりそうです。

●ネットワン、クミアイ、ブロードLに輝きを見る

 個別株についてはだいぶ取り組みやすい地合いとなりました。足もとは決算発表絡みで明暗を分けるのは仕方ないところ。資金投入する銘柄についてはなるべく発表の近いものは避けるか、もしくは好決算(直前の増額修正も含む)を発表した銘柄については、買い一巡後の調整局面で出動するのが基本です。いずれにせよ、日銀のETFの購入に際しての資金配分変更は、日経225種に採用されていない中小型株の物色人気に火をつける可能性があり、ここは前向きに銘柄を探していきたいところです。

 前々回7月4日配信の「需給相場の扉が開く、復活のキラ星7銘柄」で紹介したものでは前週末(7月27日)にネットワンシステムズ <7518> が急動意、4-6月期決算発表で営業利益が前年同期比3.6倍と急拡大したことを手掛かりにマドを開けて20%高に買われるという大立ち回りを演じました。同社において業績面で第1クオーターは閑散期であるため、通期に対する進捗率は低いのですが、業績モメンタムの強さに投機資金が食指を動かしたことで、今のクラウドソリューションやセキュリティー関連分野に属する銘柄の人気素地の高さが確認できました。

 また、前回7月18日配信の「好機再び! 走り出す“夢特急7銘柄”」では筆頭で挙げたクミアイ化学工業 <4996> が翌19日に一時5.6%高の939円と大きく動意づき、その後も8連騰で4ケタ大台まで一直線で駆け上がったことは、正直イメージを超える強さでした。テーマ的にみて農薬関連は今の地合いからすれば蚊帳の外です。しかし、こういう銘柄に思わぬ“踏み上げ相場”の素地があるものです。

 同じタイミングで取り上げたブロードリーフ <3673> も好決算発表を受けて前週7月25日にストップ高に買われ、その後は調整を入れていますが、700円を割り込んだ水準は再び買い場提供となっています。自動車のアフターサービスは意外な成長市場で、見直し人気はこれから。整備業者向けには、リコール対象車かどうかをすぐに識別できるシステムを5月から導入するなど需要開拓に積極的で期待が持てます。26日につけた最高値763円を抜けば、再び青空圏突入となり、大相場の芽を内包しているともいえます。

●無理をせず、深追いせず、手仕舞う勇気も必要

 さらに最近の企画では<株探トップ特集>として7月21日にアップした『底値圏からの逆襲始まる! 騰勢加速「究極のテーマ株」10選』や7月25日の『昇り龍と雌伏する虎、真夏のボックス相場に打ち勝つ“最強波動”6銘柄』など、望外の上昇パフォーマンスを演じる銘柄が相次ぎましたが、それでも急騰した銘柄については、その反動が顕在化することも避けられません。今年の相場は中期で資金を寝かせて夢を見るには少々厳しい地合いといってよく、仮に中期上昇トレンドの初動にある銘柄であっても回転を利かせながら、こまめに利を確保していくという実践的なスタンスが求められます。

 相場は投資家の深層心理を映し出す生き物で、思念が強いほど期待を外されるケースが多い天邪鬼(あまのじゃく)なところがあります。投資家の方々は、これはという銘柄に出会えたと感じても、無理をしないことが肝要。変調を感じたら手仕舞う勇気というものも常に選択肢として用意しておくことが大切です。いつでもインとアウトが可能というのが相場と対峙する投資家の特権であり、そのアドバンテージをうまく使うことが勝ち残るための条件といえるのです。

●IXナレッジ、ディップに再び好機

 今回新たに注目したいのは、昨年来繰り返し注目してきたアイエックス・ナレッジ <9753> [JQ]。ここにきて再び上値指向の強さを感じさせる動きで改めて要マークです。独立系のシステム開発企業で、足もとの業績は第1四半期営業利益が4割以上の増益を達成するなど絶好調、自社株買いも実施し株高のツボを心得た企業という印象を受けます。ブロックチェーン分野における展開力にも期待が大きい銘柄です。

 比較的時価総額の大きい株で値動きは緩やかですが、求人情報サービスを運営するディップ <2379> も買いで対処したい銘柄です。主力のアルバイト求人サイト「バイトル」を原動力に、2011年からわずか5年半で株価を100倍化させた究極の成長株。19年2月期も増収増益基調を堅持する見通しにあり、25日移動平均線近辺の時価2800円どころは投資対象として魅力があります。日銀のETF購入配分の見直しで株価に浮揚力が働く銘柄の上位に位置していることで、中期的にも追い風が吹いています。

●AI関連の一角で富士ソフトSB、キューブS

 富士ソフトサービスビューロ <6188> [JQ]は目の離せない銘柄。コールセンターの運営やデータ入力などの事務代行請負などを行い、業績好調を極めています。人工知能(AI)IoT ロボット化などITを介した新技術に対応し、官公庁向けでも強い。19年3月期の営業利益を4億4000万円から5億5500万円(前期比27.3%増)へ上方修正しており、これを材料に26日にマドを開けて値を飛ばしましたが、目先筋の利益確定売りを完全に吸収しており、さらなる上値追いのムードを漂わせています。

 今の相場はシステム開発やそれに関連するIT系サービスを手掛ける銘柄に人気が集まりやすい傾向があります。AI関連銘柄などもその範疇に含まれます。目先、魅力的なチャートを形成しているのが、キューブシステム <2335> です。金融機関や流通向けで高い実績を持つシステム開発会社でRPAなどAIを活用した業務自動化で時流に乗っています。電力業界向けでも需要を確保、8兆円規模といわれる新電力市場が収益環境に追い風となっています。4-6月期営業利益は1億900万円(前年同期比52.4%増)と高変化をみせていることもポイントです。

●半導体見直し機運でザイン、テクノアルファ

 米国株市場主導で半導体関連株も目先は見直し買いの軌道に乗りそうです。ビッグデータやIoTの普及加速で世界的にデータセンターへの投資需要が旺盛、半導体メモリーを中心に関連株に吹くフォローの風は今後も止むことはありません。そのなか着目したいのがザインエレクトロニクス <6769> [JQ]。特定用途向け標準品を手掛けるファブレス半導体の草分けで、エレクトロニクス武装が進む自動車向け半導体で需要を取り込むほか、次世代USB向けLSI分野の需要開拓に期待が高まっています。

 また、電気自動車(EV)向けでパワー半導体 需要が喚起されており、関連有力株として浮上気配を感じさせるのがテクノアルファ <3089> [JQ]です。同社はパワー半導体向け接合装置を主力とする半導体商社。自動車の環境規制強化の動きを背景とした世界的なEVシフトの動きが、同社の成長を後押ししそうです。半導体チップ組み立て工程で使用される装置も海外中心に売り上げを伸ばしています。

 このほか、低位の半導体関連では浜井産業 <6131> [東証2]は底値圏で再浮上へのエネルギーが充填されている印象です。半導体シリコンウエハー向けにラップ盤・ポリッシュ盤などの精密工作機械の受注拡大が期待されています。4-6月期決算発表は8月9日予定で、それまでに短期回転売買で対処するか、もしくは9日の結果を確認してから参戦するかの判断となります。

●ネオスは一段の大相場の要素はらむ

 最後に、半年前の当コーナー「揺れる2月相場、突き抜ける材料株」で取り上げたネオス <3627> に改めて注目しておきたい場面です。同銘柄は400円台で取り上げましたが、その後は株価の居どころを大きく変え、前週7月25日には749円の高値まで買われました。最近では6月16日の「急騰株ハンティング、4大攻略地帯『特選10銘柄』」でも紹介しています。時価は749円の高値をつけた後、調整を入れていますが、直近は日足3陽連で戻り足鮮明。チャートにうねりが出ているほか、信用取組は売り買いがっぷり四つで、日証金では高水準に逆日歩がついている状態。ここからさらなる大相場の要素をはらむ銘柄として継続マークしておく価値は十分にあると思います。

(8月1日記、隔週水曜日掲載)

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