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4974 タカラバイオ

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オンコリスバイ Research Memo(4):食道がん、メラノーマを対象に日米で臨床試験を開始予定


■開発パイプラインの動向

1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能であり、治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。

(2) 開発状況
岡山大学にて2013年より医師主導の臨床研究が進んでいる。手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療で13~24例の組入れを予定している。これまで実施した最低用量群7例、及び2016年より実施した中用量群3例の合計10症例のうち、6~7例で腫瘍縮小が確認されている。この結果を受け、2017年より高用量群での投与を3例行う予定となっている。

また、2017年には国内で食道がんの臨床試験を2プロジェクト開始する予定にしている。1つは同社が独自で行う企業治験で、放射線療法との併用による第1相臨床試験となる。食道がんを対象としたウイルス製剤の企業治験は初めてで、既に遺伝子改変技術を用いたウイルス製剤を使用するための厚生労働大臣の承認※を得て、PMDAに治験計画届を提出している。症例数は最大12例を予定しており、対象はがんの初期ステージで外科手術ができない患者(高齢者等)となる。中用量及び高用量群での投与をまず実施する。岡山大学含む国内2施設で実施し、順調に進めば2018年半ばには終了する見込みとなっている。

※遺伝子改変技術を用いた製剤を用いる場合、カルタヘナ議定書に批准している日本では担当大臣の承認が必要となる。米国は同議定書に批准していないため、承認は不要となる。

もう1つのプロジェクトは、国立がん研究センター東病院の医師主導による第1/2相臨床試験となる。同治験では他の治療法との併用療法を行う予定で、現在準備を進めている段階にある。こちらも、同じ製剤を扱うため、担当大臣の承認待ちの状態となっている。

一方、米国ではメラノーマを対象とした開発を進めている。第1相臨床試験では22症例中、メラノーマ患者を含む7例で腫瘍が縮小し、また、転移したがん細胞についての縮小効果も確認されている。こうした結果を受け、2016年8月にFDAに第2相臨床試験実施のための計画書を提出、現在はFPI(最初の被験者登録)の準備を進めている段階にある。症例数は最大50症例を予定しており、最初の15症例で単剤投与試験を行い、中間解析を実施する。問題がなければ、チェックポイント阻害剤との併用による試験に進む予定となっている。医療施設は5施設で1年程度をかけて15症例の試験を終える見込み。また、中間解析の結果が良ければ、ライセンスアウト交渉も本格的に開始し、2018年以降の契約締結を目指していく。国内でもほぼ同時期に第1相臨床試験の結果が判明することから、国内及び米国を対象とした契約となる可能性があり、交渉先も既に3~4社程度に絞り込んでいるようだ。

その他、台湾の提携先であるMedigenと共同で2014年より、肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。2016年上期までに低用量から中用量、最大用量群と各3例の投与を完了し、安全性が確認されたことから、2017年より反復投与試験を3~6症例実施し、その後にチェックポイント阻害剤との併用による第2相臨床試験も進めていく予定にしている。

また、2016年11月にライセンス契約した中国のハンルイでも、中国内での臨床試験を進めていく計画となっている。中国では2017年中頃に臨床試験に関する規則が改正される可能性が出てきている。具体的には、今までデータ援用が認められていなかった台湾での臨床試験データについて、一定水準を満たした医療施設で実施されたものについては認めるというもの。これにより、Medigenが台湾で実施した臨床試験データを援用して、中国で第2相臨床試験から開始する可能性がある。現在、ハンルイに対して製造技術移転を行っており、2017年内に中国でテロメライシンの製造設備を整備し、臨床試験に向けた準備を進めていくことになる。

(3) ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤の競合としては、米国で2015年10月にメラノーマを適用疾患として製造販売承認された米Amgenの「T-VEC」(Talimogene Laherparepvec (ImlygicTM))のほか、日米で第2相臨床試験が進んでいるタカラバイオ<4974>の「HF10」など複数の開発プロジェクトが国内外で進んでいる。

こうしたなかで、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因ともなるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。

放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるよう改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。

同社では今後の開発方針として、放射線治療のほか、チェックポイント阻害剤など他の治療法との併用が効果的であると考えており、臨床試験についてもまずは単剤として安全性や有効性を確認した後に、併用療法での開発を進めていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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