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4875 メディシノバ・インク

東証S
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メディシノバ Research Memo(4):中核神経系疾患における6つの適応領域において開発を進める(2)


■メディシノバ<4875>の開発パイプラインの動向

c)オピオイド(ヘロイン、処方鎮痛剤)依存症
オピオイド依存症患者を対象とした治験は、コロンビア大学及びニューヨーク州精神医学研究所(NYSPI)にて2012年から2015年にかけてフェーズ2(登録患者数24人)を実施し、2016年3月にポジティブな内容の治験結果が発表されている。

今回の治験デザインでは、処方オピオイドまたはヘロインの依存患者で入院患者を対象として、プラセボ対照・無作為二重盲検フェーズ2臨床治験を実施した。治験期間は約6週間で、第1週目は解毒期間とし、第2週目にプラセボまたはMN-166の投与を開始、第3週目にサンプルセッション(オキシコドンと現金の両方を与える)とチョイスセッション(オキシコドンか現金のどちらかを自己選択させる)を行い、オキシコドンの報酬効果や鎮痛効果、自覚症状、パフォーマンス及び生理学的効果に対して、MN-166が与える影響を検証した。第5、6週目はプラセボ群とMN-166群の被験者をスイッチして同様の試験を実施する格好となる。

治験結果によれば、MN-166はオキシコドンの報酬効果(現金よりもオキシコドンを選択する)を有意に減少させたほか、ヘロイン、コカイン、煙草に対する渇欲度も減少させる結果となった。また、オキシコドンの鎮痛効果を増加させる(オキシコドンの使用量を減少させる)ことも確認された。

同治験については国立薬物濫用研究所(NIDA)から助成金を得て治験を進めてきたが、今後、さらに総額11百万ドルの追加助成金を得てさらなる治験を進めていく可能性がある。米国でのオピオイド依存症患者数は約190万人、うちヘロイン依存患者は約51.7万人で、経済損失は年間500億ドル超と言われている。

治療薬としては複数上市されており、世界で12億ドル(2011年時点)の規模となっているが、中毒性・安全性の面から医療現場ではあまり処方されていないのが現状となっている。MN-166が今後の治験によって明確に治療効果が確認されれば、安全性に関しては問題ないだけに今後大きく成長する可能性がある。

d)覚せい剤(メタンフェタミン)依存症
覚せい剤依存症の患者を対象に、UCLAにてフェーズ2の治験(140人予定)を2013年より行っている。薬物依存症患者は体内の薬物が減少すると「離脱症状」が生じ、再度薬物を使用する循環に入ることが知られているが、「離脱症状」が生じる原因として、脳内のグリア細胞の活性化が関与していることが判明している。グリア細胞の働きを抑制する効果があるMN-166による治験に関してはNIDAからも助成金が出ており、また、2013年2月にはFDAからファストトラックの指定も受けるなど、その治療効果にかかる期待は大きい。米国でのメタンフェタミン使用者数は約44万人で、経済損失は年間で約234億ドルに達すると言われているためだ。

ただ、治験の進捗スピードはいま一つのようだ。治験対象者が治療希望の覚せい剤中毒者に限定されているほか、3回/週×12週間の外来通院による治験となるため、被験者が途中で通院をあきらめ脱落してしまうケースなどが多いためと考えられる。評価項目としては、最後の2週間にメタンフェタミン使用の有無を尿検査等により確認する簡素なものとなっているが、現時点で患者登録が完了したという報告はなされていない。ただ、フェーズ1b治験では、覚せい剤の典型的な自覚効果である「高揚感」、「薬物効果」、「心地よさ」を有意に減少させ、「覚醒」、「好ましさ」などの自覚効果を減少させた治療効果が確認されている。

e)アルコール依存症
アルコール依存症の治療薬として、国立アルコール濫用・依存症研究所(NIAAA)から助成金を得て治験を進めている。UCLAにてフェーズ2aの治験を2014年より開始し、2015年6月に患者登録(24人)を完了、治験を終了している。

治験デザインはプラセボ対照無作為二重盲検試験で、UCLAの治験施設において実施された。治療下にないアルコール濫用/依存症患者を対象に、7日間プラセボまたはMN-166を服用すると同時に、アルコールの点滴を受け、その後のアルコールに対する欲求度のテスト、心理状態の評価及び安全性評価を実施した。その後7~10日間の休養期間を経て、プラセボ群とMN-166群の被験者をスイッチして再度7日間、同様の試験を実施した。

治験結果としては、MN-166の投与がアルコールへの渇望度やアルコール摂取に対する報酬効果を抑制する効果があるとの分析結果が出ている。また、2016年6月には追加の治験分析結果が発表されており、抑うつ度が高いアルコール依存患者においてはアルコールの報酬効果を減少させるだけでなく、アルコール摂取によるネガティブな効果(緊張や不安を感じる等)を高める効果も確認されたとしている。

今後の治験スケジュールは未定となっているものの、米国のアルコール摂取障害患者数は約1,730万人で、経済損失は年間2,240億ドルと言われているだけに、研究開発は継続していくものと見られる。

f)クラッベ病治療薬
クラッベ病とは遺伝性の神経変性疾患で、米国では10万人に1人の割合で発症する希少疾病である。現在のところ根治療法がなく、症状緩和のための補助的な治療のみが行われている。発症時期により早期乳児型、晩期乳児型、若年発症型、成人発症型の4つのタイプに分けられるが、約9割は早期乳児型で、生後6ヶ月以内に発症するタイプとなる。初期症状として、易刺激性(ささいなことで過度に号泣するなど)、手足のけいれん、神経反射の欠如、授乳困難などが見られ、病気の進行とともに筋力の低下、呼吸困難、失明などとなり、多くは2歳までに死に至る。早期乳児以降に発症するタイプは病気の進行が比較的緩やかで、生存期間も長くなる傾向にある。

クラッベ病も神経変性疾患の一種であり、多発性硬化症やALSと同種の疾病であることから、開発プログラムに組み入れた。動物モデルでの試験では、中枢神経で生じる脱髄の軽減、神経症状・発育などの悪化の軽減といった効果が確認されている。2015年6月にFDAよりオーファンドラッグ指定を受け、2016年1月には希少小児疾患治療薬候補指定を受け、フェーズ2臨床治験開始に向け準備段階にあるが、現段階での開発の優先順位は低くなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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