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4718 早稲田アカデミー

東証P
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20:44 04/16
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時価総額 291億円
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早稲アカ Research Memo(6):17/3期は英語塾の新設など業容拡大に向けた先行投資などで減益見込み


■今後の成長見通し

(1) 2017年3月期業績見通し

早稲田アカデミー<4718>の2017年3月期の業績は売上高が前期比4.1%増の21,012百万円、営業利益が同5.9%減の959百万円、経常利益が同6.0%減の956百万円、当期純利益が同0.5%増の587百万円と売上高は増収基調が続くものの、営業利益に関しては減益を計画している。

前提となる早稲田アカデミーの校舎数は前期比5校増加の154校となる。開校時期は夏に1校だが、残りは2017年春頃となる見込み。また、5校の内訳は、3校が集団塾、1校が個別指導塾、残り1校が今期より新たに開始する英語塾となる。英語塾に関しては当初は本社管理の教場となる可能性もある。野田学園や水戸アカデミーについては前期と同じく各2校での展開となる。

期中平均の塾生数は前期比2.7%増の32,498名を見込む。学部別では小学部が同3.4%増、中学部が同2.3%増、高校部が同1.0%増となる。このうち野田学園については前期比8.3%増の260名と引き続き拡大する見通しとなっている。既卒生コースについては既に定員に達しているが、現役高校生部門での伸びを見込んでいる。一方、水戸アカデミーについては前期の216人から341人となる。前期は期中から加わっており、年換算すると実態よりも塾生数が少なくなっているためで、実質ベースでは5%程度の伸びを見込んでいるようだ。

増収にもかかわらず減益となるのは、英語塾の新設など業容拡大に向けた先行投資として、広告宣伝費や労務費などの販管費が増加することが要因となっている。売上原価率については前期比0.1ポイント低下するものの、販管費率が同0.6ポイントの上昇を見込んでいる。前期比増減率の内訳を見ると、広告宣伝費が4.9%増、労務費が6.1%増、その他経費が10.3%増となる。その他経費では販売促進費(教務イベントの開催費、進学情報資料作成費等)が増加するほか、外形標準課税の税率変更に伴う税金の増加で63百万円の費用増を見込んでいる。

ただ、労務費については保守的に見積もっていることから、売上高が計画どおり達成されれば、利益ベースでは若干の上乗せ余地もあると弊社では見ている。

(2)新たな取り組みについて

今期の新たな取り組みとして、ブランド戦略の見直しと、英語塾の開設が挙げられる。

○ブランド戦略の見直し
ブランド戦略については、同社が外部機関に委託してブランドイメージ調査をしたところによれば、必ずしも同社のブランド戦略が成功しているとは言えない結果が出たと言う。具体的には、難関私立中学を志望する生徒や保護者が受けるイメージでは、トップを走るSAPIXに対して弱く、また、公立の進学校を志望するボリュームゾーンの生徒、保護者には、難関私立校向けの進学塾のイメージを強く持たれており、入塾するには敷居が高いイメージを持たれていた。

こうした結果を受けて、同社ではブランド戦略を前期から見直し始めている。具体的には、ボリュームゾーン層には従来のイメージを払拭するような、広告チラシの制作を前期から始めており、少しずつではこうしたボリュームゾーンの顧客層からの問い合わせ件数も増加傾向にある。今期も引き続き紙媒体やHPなどを見直しながら、TVCMの放映も実施し、ボリュームゾーン層の生徒数の獲得に注力していく方針だ。一方で、難関私立中学を志望する生徒や保護者に対しては、ビジネス専門誌などでの露出を積極的に増やしていくことで、認知度を向上させていく取り組みを今期から開始する。難関校を志望する生徒の入塾に関しては保護者が専門誌などを参考に決めることが多いためだ。今まではこうしたビジネス誌への露出については慎重なスタンスを取っていた。

このように、ブランドイメージについては今後、対象層ごとに広告手法を使い分けることによって効果的に認知度の向上を図っていく方針で、全体的な生徒数拡大につなげていく考えだ。なお、広告宣伝費については、ここ数年7.7?7.8%を目安に投下してきたが、今後は8.0%を上限目安としていく。なお、広告費の中には人材募集に関する採用広告費も含まれている。

○英語塾への取り組みについて
英語塾については従前より、英語の英才教育コースとなる早稲田アカデミーIBSを開講(定員120名)してきたが、文部科学省の指針により今後、英語教育改革が進むなかで、今まで以上に重要な科目となることが想定されることから、新たに小中学生を対象に英語指導専門塾(仮称:英語塾)を展開していく。

2016年4月に社内に英語研究課を新設し、早稲田アカデミーIBSのノウハウを活用しながら、より汎用性のあるカリキュラムと教材の開発を進めている。講師もIBSがバイリンガル講師であったのに対して、英語塾では日本人の講師が担当するため、英語講師の研修・育成プログラムの開発も同時に進めている。2016年秋以降には具体的なスケジュールが発表される予定だが、当初の1年程度は様子を見ながら進めていき、運用体制を確立したのちに、校舎数を増やしていく計画となっている。

(3)長期経営目標

学習塾業界を取り巻く市場環境は、少子化が続くなかで競争が激化しており、ここ最近は業界再編の動きも進むなど、生き残りをかけた動きが活発化する状況にある。こうした環境下で、同社は市場環境の逆風の影響が最も少ない企業の1社と弊社では見ている。これは同社が営業エリアとして特化している首都圏に関しては少子化の影響がほとんどみられないこと、また、難関校を目指すための進学塾は常に一定の需要があり、少子化の影響を受けにくいこと、高校入試に関しては圧倒的なブランド力を確立していることなどが背景にある。

このため、同社では今後も独立経営を続けていく方針としている。現在、提携関係にある企業とは引き続き良好な関係を維持していくほか、シナジーが見込める企業との提携は今後も行っていく考えに変わりはない。M&Aに関しても前期に実施した水戸アカデミーのように、公立進学校での高い合格実績や指導ノウハウを持つ学習塾があれば検討していく方針だ。

同社の長期ビジョンとしては、2023年3月期までに、難関中高大受験の主要な指標においてトップブランドの進学塾へ成長・発展することを目指している。授業周辺サービスの充実や授業品質、教務指導力の向上による顧客満足度の向上を図り、合格実績を積み上げていくことで、目標を達成していく方針だ。


現在、発表している2023年3月期の目標としては、期中平均の塾生数で6万人、売上高で350億円、経常利益で55億円、経常利益率15%以上を設定している。塾生数に関しては高校部の伸びを大きく見ている。小中学部と比較してまだ塾生数が少なく、今後、既卒塾生などの取り込みも強化しながら塾生数を拡大していく方針だ。

経常利益率については前期実績で5%の水準だが、2018年3月期以降は新基幹システムの運用開始によって業務効率の向上が見込まれるほか、既存校の生徒数を増やしていくことで、校舎当たりの収益性を高めていく戦略となる。

新基幹システムは2017年5月の運用開始を予定している。投資費用は5?7億円になる見込みで、稼働後は業務フローの変更による間接コストの削減が見込まれている。具体的には、新基幹システムの導入により、校舎で日々行われている業務のキャッシュレス化を実現していく予定となっている。例えば、現在、各校舎で行っている教材の販売について、アウトソーシングする予定となっており、現金の出入金管理や、在庫管理などの事務作業が不要となる。こうした業務フローの見直しにより、校舎の事務職員の数は従来の1校舎当たり正社員1?3人+パート3?4名の運用体制から、減らして運用することが可能となる。このため、2017年3月期に関しては一旦、収益性が落ち込む見通しとなっているものの、2018年3月期以降は再度、向上していくものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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