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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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シュッピン Research Memo(2):16/3期は増収減益で着地


■2016年3月期決算の分析

(1)決算の概要

シュッピン<3179>の2016年3月期決算は、売上高22,705百万円(前期比18.5%増)、営業利益832百万円(同6.1%減)、経常利益821百万円(同5.6%減)、当期純利益560百万円(同0.6%減)と、増収減益で着地した。計画対比では、期初予想に対して営業利益は25.6%の未達となったほか、第3四半期決算発表時の下方修正後の利益見通しに対しても若干未達で終わった。

売上高は前期比18.5%増であり、期初予想に対しても1.8%(416百万円)の未達と、一見すると順調に推移したように見える。しかし、売上高を確保するための努力が、後述するように、結果的には利益を減らすことにつながった。この点が、2016年3月期決算の最大のポイントであると弊社では考えている。

2016年3月期は売上高を押し下げる要因が期初から相次いだ。最初のものは同社が業務効率化の切り札として導入した、業務系の新基幹システムのトラブルだ。これは顧客管理もカバーするものであるため、このトラブルにより、売上において約60百万円規模の機会ロスが発生した。同社はこれを7月のセールでカバーした。もう1つはインバウンド需要の急激な落ち込みだ。高水準が続いていたインバウンド売上(店舗における免税売上高)が10月以降は急激に落ち込んだ。この分をカバーするために12月商戦でセールを行った。

セール自体は同社にとっては通常の販促活動であるが、2016年3月期の7月と12月のセールでは、通常のセールでは対象としない人気商品をもセール対象品とした。人気商品は仕入れ値が高く粗利益率は低めになっている(その代わり回転が効く)。ここをセール対象とした結果、売上高売上総利益率(粗利益率)が大きく削られる結果となった。

また、特に輸入品が多い時計において、為替の円高も粗利益率低下要因となった。為替が円安時に仕入れた在庫品を、足元の円高が進行した為替レートで値付けをして販売することになるためだ。

これらの要因の結果、売上高売上総利益率は前の期1.1%ポイント低下して16.4%にとどまった。増収要因として618百万円の利益押し上げ効果があった。しかし、1.1%ポイントの粗利益率低下で238百万円押し下げられ、さらに販管費が全体で435百万円増加した結果、営業利益は前期比54百万円の減益となった。

(2) EC売上高の動向

eコマース(EC)企業の同社にとっては、EC売上高こそが最大のKPI(重要経営指標)と言える。EC売上高は2016年3月期を通じて高水準の伸びを維持した。四半期ベースでは各四半期とも前年同期比20%台~30%台の伸びとなり、通期ベースでは前期比32%増に達した。

前述のように、2016年3月期は通常よりも対象商品を拡大したセールを行い、売上を創りにいった面がある。その効果額を厳密に測定することは困難だが、同社がそうした通常を超えるセールを行った要因などから逆算して、500百万円程度ではないかと弊社では推測している。また、第4四半期においては高級カメラの新機種発売で売上高が大きく押し上げられた。その影響は約200百万円と弊社では推測している。2016年3月期の年間EC売上高13,032百万円から700百万円を差し引くと12,332百万円となる。これは前期比24.9%増ということになり、実体ベースでもEC売上高の成長率の勢いは衰えていないことが推察される。

なお、2016年4月のEC売上高は前年同月比※66.2%増の1,268百万円となった。これはまた別の高級カメラの新型機が発売されたためだ。この新製品効果の影響を除いたベースでは前年同月比伸び率は30%前後ではないかと弊社では考えている。

※2015年4月はシステム入替時のトラブルにより、ECサイトが休業していた期間があった。

(3)事業セグメント別動向

主力のカメラは、売上高16,572百万円(前期比20.5%増)、営業利益1,168百万円(同3.4%減)と増収減益で着地した。カメラは前述のセールのメイン商材であり、セール対象商品拡大の影響が営業利益の減益につながったとみられる。EC比率は64.0%で前期の56.7%から上昇した。EC比率の上昇は、実体的なEC販売の増加に加え、インバウンド売上高(店頭の免税売上高)が下期に急減したためだ。詳細は別途後述するが、カメラについては中古品の買取及び販売と新品の販売とが好循環を形成しており、商品在庫回転率も同社が目指す水準を維持しているもようだ。

時計は、売上高5,301百万円(前期比13.3%増)、営業利益231百万円(同6.5%増)と増収増益となった。時計では円高の影響が利益圧迫要因として働いた。時計は輸入品の割合が高いことと、時計の在庫回転率は約30%程度であるためここ数年の円安局面で仕入れた在庫も残っていたことが、背景にある。同社は販売時点での為替レートに基づいた値付けをするため、商品によっては為替のレート差が粗利益をヒットし、マージン縮小につながった。しかし時計も実体的な需要動向には大きな変化はなく、特にECで流通が多い中価格帯のものの動きは堅調が続いている。

高級筆記具は、売上高470百万円(前期比29.5%増)、営業利益54百万円(同157.1%増)と大幅増収増益となった。高級文具市場は、カメラや時計ほど一般的ではないが、ファン層は一定数存在している。また高級文具のファン層は、時計やカメラを趣味にする層と重なる部分が多いとみられる。モノに対するこだわりが強い人々が多いと考えられるからだ。そうした状況にあって、同社はカメラと時計のEC市場で高い認知度を確立し、高級文房具で豊富な品揃えを誇っているため、高級文具のECサイト「Kingdom Note」の知名度・認知度も必然的に高くなっている状況だ。さらには有力な競合相手がいないことも同社の高級文具の収益拡大につながっている。

自転車は、売上高360百万円(前期比0.7%減)、営業損失7百万円(前期は営業損失15百万円)となった。第2四半期時点では黒字化したものの、季節要因から下期に収益が悪化して通期では営業損失が続いた。自転車は安全性の面から店舗で試乗やサイズチェックするというニーズが強いため、ECよりも店頭販売へのニーズが強いことが、EC企業の同社にとってはマイナスに働いていると言える。2016年3月期のEC売上高が前期比11.4%減となった点がそれを象徴している。ここをブレークスルーできれば、自転車事業も軌道に乗ってくるものと弊社では期待している。

(4)販管費の動向

2016年3月期の販管費は前期比435百万円増の2,897百万円となったが、売上高比率は12.8%で2015年3月期と同じだった。内訳を見ると、支払手数料が前期比125百万円増加しているのが目立つ。これは楽天<4755>やYahoo!<4689>などの支店サイトでの売上高に応じて支払うものだ。2016年3月期はこれらのモールの支店の売上高が、カメラの新品を中心に大きく伸びたため、支払手数料が増加した。

減価償却費の増加は、新基幹システムが稼働したことで、償却がフルに発生したことによる。また、地代家賃の増加は、2015年3月期にあった地代家賃のフリーレントの分が2016年3月期からはなくなったことによる増加だ。

最大費目の人件費は、前期から16百万円減少した。これは、同社が業績連動型賞与を採用している中、2016年3月期は減益となって業績連動型賞与が発生しなかったことによるものだ。費用の抑制という点では効果を出したが、従業員のモチベーションという点ではマイナス影響を及ぼさないか、弊社では注意深く見守りたいと考えている。

同社の売上高販管費率はこれまで着実に低下してきたが、2016年3月期は低下が止まったようにも見える。弊社ではこの点については懸念する必要はないと考えている。

新基幹システムの稼働の最大のメリットは、導入前と比べて、売上高の成長に応じた人件費の伸びのペースを抑制できる点にある。すなわち、より少ない人数で同規模の売上に対応できるということだ。地代家賃は店舗型小売業ではないため、売上が増大しても原則としては増えない。減価償却費は今後漸減していくことが見込まれる。

支払手数料はここにきて急速に存在感が増してきているが、売上連動の費用であるため、変動費の性格を有するものだ。同社として直接的な広告宣伝費を最小限に抑える代わりに、集客力のあるECモールに出店することで売上拡大を図る戦略を採用したということであり、支払手数料は広告宣伝費の代わりという割り切りだ。モールの持つ高い集客力を活用するという戦略は正しいと弊社では評価している。同社はECモールの活用と同時に本店サイトの魅力度アップにも投資を継続しており、支払手数料の相対的な割り合いは空気的には低下していくものと弊社では考えている。

以上のような視点にから、弊社では、同社の販管費の対売上高比率は低下余地が依然として大きく、中長期的には10%程度までは十分下げ余地があると考えている。

(5)インバウンド売上高の動向

同社は店舗における免税売上高をいわゆるインバウンド売上高と認識して集計している。元来、同社はEC企業であり、インバウンド需要に対しては決して前のめりではなかった。しかし、2015年3月期に急速に拡大した免税売上高のインパクトが非常に大きく、無視できない存在となったことから、2016年3月期を迎えるに当たっては、それなりのインバウンド需要への期待値が同社の中に醸成され、業績予想の中にもある程度織り込まれていたとみられる。

現実には、2016年3月期のインバウンド需要は急速に縮小した。同社の月次売上高を見ると、結果的には5月にピークをつけた後は月を追うごとに減少し、期初の売り上げ計画と実績の間にかい離が生じた。それを埋め合わせるために、通常とは異なるセールを行い、それが粗利益率の悪化につながったことは前述のとおりだ。同社は2016年3月期下期に臨むにあたり、10月の免税売上高(約150百万円/月)が下期を通じて続くという“厳しい”前提で臨んだが、実際はそれをさらに下回る売上高で着地した。

2016年3月期の実績を踏まえて同社は、インバウンド売上高の規模について、月間100百万円を業績予想及び中期経営計画業績計画の前提とした。詳細は後述するが、中期経営計画業績計画の下方修正分は、インバウンド需要の収益インパクト見通しの変更でほぼ説明がつく状況となっている。同社がインバウンド対応の設備投資を最小限に抑えたことは、今回のインバウンド需要見通しの大胆な変更に踏み切れた大きな要因だと弊社では考えている。

弊社では、中国当局の関税変更などにより、インバウンド需要の調整局面は長引くと考えている。同社の月100百万円という前提は、中国人による“爆買い”を除いた通常の来日外国人観光客による消費額に見合った売上高という認識だが、これを下回る実績になる可能性も否定はできない。しかし、仮にそうなった場合でも、期待値が十分低い水準まで引き下げられているため、ダメージは深刻にはならないと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

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