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2016年03月11日16時07分

ヘリオス Research Memo(4):3次元臓器の開発に期待


■開発パイプラインについて

(1) iPS細胞再生医薬品

○加齢黄斑変性治療薬
iPS細胞再生医薬品の分野では、加齢黄斑変性治療薬の開発を進めている。加齢黄斑変性とは目のアルツハイマー病とも呼ばれ、加齢によって網膜の中心部である黄斑部に障害が生じ、モノが見えにくくなる病気のことを指す。よって患者の年齢層は50代以上が圧倒的に多い。加齢黄斑変性の原因は、黄斑部において視細胞に栄養を送るRPE細胞(Retinal Pigment Epithelium:網膜色素上皮細胞)が加齢により変性し、その機能が損なわれることによって引き起こされる。当初は視力が低下したり、モノの見え方がゆがんで見えるなどの症状が現れ、重症化すると失明にまで至る病気である。重症化した場合は、滲出型(ウェット型)と委縮型(ドライ型)に分かれるようになる。滲出型とは、RPE細胞の機能が損なわれることで、その代わりに視覚細胞に栄養を送ろうとする新生血管が発現し、出血などを引き起こすことで視細胞の機能が損傷し、視力機能が著しく低下してしまう症状を指す。加齢黄斑変性で失明まで至る患者の大半は滲出型の患者となっている。一方、委縮型は老化による炎症がRPE細胞で起こり、RPE細胞とともにその上部にある視細胞の機能が失われることで、視力障害を引き起こすタイプとなる。

現在、こうした重度の加齢黄斑変性の罹患者数は米国で200万人、日本で69万人、欧州他で260~320万人いると推計されており、このうち滲出型の罹患者数の比率は欧米で過半、日本で9割を占めている。

また、現在治療薬としては滲出型で新生血管の発現を抑制するための抗VEGF治療薬があるのみで、委縮型については治療薬がない。また、抗VEGF治療薬に関しても、根治療法ではなく、12ヶ月以内に再発する可能性が約92%と高い。このため継続的に投薬治療を行う必要があり、患者負担も大きくなっている。例えば、抗VEGF薬の薬価は約17万円で年間投与回数は6回が推奨されていることから、年間治療費は約102万円(日本では患者負担約3割)となる。60歳で発症し、治療期間が20年間とすれば合計で約2,000万円かかる計算となり、治療費は膨大な額となる。実際、抗VEGF薬の世界の市場規模は2014年で8,000億円を超えており、眼疾患の治療薬の中では最大の市場規模となっている。同疾患は加齢によって発症するため、今後の高齢化社会の進展によって罹患者数も増加傾向が続くことが予想される。

こうしたなかでヘリオス<4593>が開発を進めている治療薬は、他家iPS細胞から分化誘導させて作ったRPE細胞を含んだ懸濁液を眼球注射によって黄斑部の網膜下に注入し、機能が低下したRPE細胞を新たなPRE細胞に置き換えることで、視力機能を正常化する根治療法となる可能性をもっている。このため、滲出型、委縮型両方において、同治療法は有効と考えられている。置き換えるRPE細胞は直径約2mmの黄斑部だけで良く、また細胞の層は1層しかないため、比較的容易に再生化が可能と考えられる。他家のiPS細胞を用いるのは、大量生産による製造コストの引き下げが可能となることや、患者への治療期間も短くて済むといったメリットが期待できるためである。

なお、iPS細胞からRPE細胞を作製するまでの期間はおよそ3~4ヶ月程度で、1つのシャーレーで数十人分のRPE細胞が作製できる見通しとなっている。また、作製したRPE細胞に関しては冷凍保存するため、理論的には半永久的に利用が可能となっている。

国内では滲出型を適応領域とした開発を進めており、現在は動物モデルによる実験を行っている段階にある。今後順調に進めば、2017年後半以降に臨床試験に入り3年程度かけて、条件付き早期承認制度での承認申請を行いたい考えだ。国内の潜在的な患者数は前述したように滲出型罹患者数で63万人となり、うち1年以内に再発する罹患者(約92%)を対象とすると、約58万人が対象となる。高齢化社会の進展により、上市する頃には対象患者数もさらに増加していることが予想される。薬価については製造コストとの兼ね合いもあるので流動的ではあるものの、2015年に製造販売承認された2件(テムセルRHS注、ハートシート)の再生医療製品はそれぞれ1,400万円前後の薬価が付いている。まだ製造コストが高いことが高薬価となった要因とみられる。RPE細胞の製造コストが今後どの程度下がるかにもよるが、上市されれば潜在的な市場規模は膨大となることが予想される。

一方、海外市場での展開については、欧米市場で委縮型を適応領域として開発を進めていく予定となっている。細胞の製造委託先はLonzaに決定しており、2016年中に治験用の親株細胞を決定し、マスターセルバンクの作製に入ると同時に、開発販売パートナーとの契約締結を目指していく。順調に進めば国内よりもやや遅れたタイミングで臨床試験に入る見通しだが、第3相試験では欧州も含めたグローバル治験を行う予定にしており、最終的には臨床試験から申請まで10年超の期間を要するとみられ、上市のタイミングは2020年代の後半頃となりそうだ。

○代謝性肝疾患治療薬(尿素サイクル異常症など)
iPS細胞を用いた再生医療の領域において、将来的な成長が最も期待されているのが3次元臓器の開発である。2013年に横浜市立大学の研究チームによって、iPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器の創出に世界で初めて成功したことが発表されて以降、にわかに注目が集まっている。同研究によれば、iPS細胞から作製した前駆細胞(臓器細胞に分化する前の細胞)と間葉系幹細胞(細胞同士をつなぐ働きを持つ細胞)、血管内皮細胞(血管を作り出す細胞)を特定の配合比率によって培養することで、血管構造を持つ立体的な臓器原基を形成することが可能となり、その原基をマウスに移植したところ血管を持つヒトの肝臓に成長したことが確認されている。

同大学ではこの作製メカニズムを用いて、2019年より臨床研究を開始する予定となっている。適応領域は新生児の代謝性肝疾患のうち「尿素サイクル異常症など」※となる。新生児の代謝性肝疾患の市場規模は世界でも120~210億円程度と推計され、大きな市場とは言えないが、同領域で良好な結果が得られれば、将来的には肝臓移植の代替治療となる可能性があるだけに注目度は大きい。また、肝硬変について見れば罹患者数が国内で推定40~50万人、うち医療機関に受診している患者数が約5.6万人、年間死亡者数が約1.7万人となっている。肝臓の再生医療が実現すれば肝硬変の治療にも展開できる可能性がある。

※肝臓においてアンモニアを解毒し尿素を産生する代謝経路(尿素サイクル)で働く酵素に、先天的な異常があることで発症する疾患で、現在の根治療法は肝臓移植のみ。

なお、3次元臓器の実用化に向けて、同社では横浜市立大学とヒト臓器原基作成に関する独占的な特許実施権許諾契約を締結しており、同大学との共同研究を進めている(5名の研究員を同大学に常駐)。実用化に向けた今後の課題としては、細胞大量培養技術の確立と細胞の製造や開発販売を行うパートナーづくりとなる。このうち、細胞大量培養技術に関しては、アサーシスが持つ間葉系幹細胞等の3次元大量培養技術のノウハウを活用することで向上する可能性がある。肝臓の再生医療が実現すれば、そのほかの臓器の再生医療に関しても可能性が広がることになり、医薬品開発において大きなパラダイムシフトが起きることとなりそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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