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4588 オンコリス

東証G
702円
前日比
-15
-2.09%
PTS
695円
22:41 04/24
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.04
時価総額 147億円
決算発表予定日

銘柄ニュース

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オンコリスバイ Research Memo(4):食道がん、メラノーマを対象に日米で臨床試験を開始


■開発パイプラインの動向

1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能であり、治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。

(2) 開発状況
テロメライシンについては国内と米国にて合計、5つのプロジェクトが進んでいる。2013年より岡山大学にて行っている医師主導の臨床研究では、手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療を行っている(13~24例を予定)。これまで実施した最低用量群7例及び2016年より実施した中用量群3例の合計10症例のうち、6例で腫瘍縮小効果が確認されている。この結果を受け、2017年より高用量群での投与を3例行う予定となっている。

また、2017年7月より初期ステージの食道がんで外科手術による切除や根治的化学放射線療法が困難な患者(高齢者等)を対象とした放射線療法との併用による第1相臨床試験を同社が開始している。症例数は6?12例を予定しており、低用量群3例でまずは実施し安全性及び忍容性に問題がなければ、高用量群で3例実施する。岡山大学と国立がん研究センター東病院の2施設で実施し、最短で2018年3月頃、遅くとも同年10月までには終了する見込みとなっている。さらに、食道がんでは抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとの併用療法による医師主導の第1/2相臨床試験を国立がん研究センター東病院ほかで開始する予定となっている。既に2017年6月に治験届けを提出済みで、9月頃から開始する見込み。症例数は28症例を予定しており、2020年7月頃の終了を目途としている。

一方、米国では切除不能な第3、4ステージのメラノーマ患者を対象とした第2相臨床試験が2017年7月から開始されている。症例数は最大50症例を予定しており、最初の15例で単剤投与試験を行い、中間解析を実施する。問題がなければ、チェックポイント阻害剤との併用による試験に進む予定となっている。医療施設は5施設で実施し、2018年前半までに15症例の試験を終えたい考えだ。観察期間は24週となっている。

その他、台湾の提携先であるMedigenと共同で2014年より、肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。既に低用量から中用量、最大用量群で各3例の投与を完了し、安全性が確認されたことから、2017年より反復投与試験(2週間おきに3回投与)を3~6症例実施し、その後にチェックポイント阻害剤との併用による第2相臨床試験を進めていく予定にしている。反復投与試験は2018年前半までに終了する見込みとなっている。同社ではこれら臨床試験の結果が、中間解析も含めて2018年中頃までには一通り判明することから、結果が良好であれば大手製薬企業とのライセンス契約交渉を本格的に開始し、早期の契約締結を目指していく考えだ。交渉先に関しては既に3~4社程度に絞り込まれているようだ。

なお、2016年11月にライセンス契約した中国のハンルイでも、中国内での臨床試験を進めるべく、GMP※に準拠した専用工場を立ち上げ、試運転を行っている段階にある。中国では2017年6月に臨床試験に関する規則を改正するとの発表が当局からなされている。具体的には、今までデータ援用が認められていなかった海外での臨床試験データについて、一定水準を満たした医療施設で実施されたものについては認めるというもの。これにより、Medigenが台湾で実施した臨床試験データを援用し、中国で第2相臨床試験から開始できることになる。ただ、規則改正の施行時期が未定なほか、その詳細についても判明していないため現時点では流動的だ。仮に、2017年内に施行されれば、2018年中頃には中国でも肝細胞がんを対象とした第2相臨床試験が開始される可能性がある。ハンルイについては現在、チェックポイント阻害剤「SHR-1210」の第3相臨床試験を行っており、今後は「SHR-1210」との併用による開発が進められていくものと予想される。

※GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品等の製造品質管理基準で、治験等で使用する薬剤は各国で定められたGMPに準拠した設備で製造する必要がある。


(3) Medigenとの共同開発契約を改定
同社では、テロメライシンの治験費用が膨らむなかで、開発費用の負担軽減を目的にMedigenとの共同開発契約の改定を2017年3月に実施した。具体的には、従来、対象を肝細胞がんのみとしていたのに対して、今回は新たに食道がんとメラノーマの共同開発権も付与した。これにより食道がん、メラノーマの研究開発費用の一定割合を今後、Medigenが負担することになる。同社にとっては治験費用の負担軽減につながるが、将来のライセンス収入の一部がMedigenに流れることを意味する。共同開発の対象地域は第3者にライセンス契約した地域以外の全世界としている。

(4) ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤の競合としては複数あるが、唯一製造販売承認されたものとしては米Amgenの「T-VEC」(Talimogene Laherparepvec (ImlygicTM))があり、2015年10月にメラノーマを適用疾患として米国で承認されている。開発中のものではタカラバイオ<4974>の「HF10」が国内でメラノーマを対象とした第2相臨床試験、膵がんを対象とした第1相臨床試験を行っているほか、米国でメラノーマを対象とした第2相臨床試験が終了し、第3相の臨床試験を計画している段階で、2018年度の承認取得を目指している。

こうしたなかで、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因になるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。

放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるように改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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