カイオム Research Memo(2):コア技術は抗体作製技術「ADLib(R)システム」
■会社概要
(1) ADLib(R)システムとは
カイオム・バイオサイエンス<4583>のコア技術であるADLib(R)システムは、理研によって2003年に開発された抗体作製技術で、現在は同社と理研で特許を持っている。ADLib(R)システムによる抗体作製法を簡単に説明すると、まずニワトリ由来の培養細胞株であるDT40細胞が持つ抗体遺伝子の組み換えを活性化することにより、抗体タンパクの多様性を増大させ、目的の抗原に結合する細胞のみを磁気ビーズに付着して回収し、その後1週間程度培養することによって所望の抗体を獲得する、といった手順となる。
現在、上市されている抗体医薬品は、既存の抗体作製技術であるマウスハイブリドーマ法やファージディスプレイ法で作製された抗体によるもので、これら既存技術に対してADLib(R)システムが持つ主な優位点は、困難抗原への対応が可能であるということと、抗体作製にかかる期間が短いという点にある。
従来、課題とされてきた完全ヒト抗体の作製に関して、2014年3月に実用化レベルでの技術が完成したことを発表している。完全ヒトADLib(R)システムとは、DT40細胞の持つニワトリ抗体の遺伝子をヒト人工遺伝子に置換し、ヒト抗体として医薬候補抗体の取得を実現する技術となる。この完全ヒト抗体の実用化に関しては、既存法との比較で遅れていた部分でもあるだけに、今後の事業展開に向けて意義の大きい一歩であったと評価される。
本格的な事業化に向けて現在は技術導出交渉を進めているが、同社が希望する経済での技術導出を実現するためには、ファーストインクラスになり得るターゲットの抗体作製に加えて、開発スピードの速いPOCが確立されているターゲットの抗体作製が必要としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SF》
提供:フィスコ