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4506 住友ファーマ

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アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療薬の国内承認申請に向けた準備が進む(1)


■主要パイプラインの開発状況

アンジェス<4563>の主要開発パイプラインは、HGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴ、DNA治療ワクチンなどがある。各パイプラインの概要と今後の開発方針は以下のとおり。

1. HGF遺伝子治療薬
HGF遺伝子治療薬では血管新生作用の効果を活用して、重症虚血肢を対象とした開発を進めている。重症虚血肢とは、安静時でも疼痛を感じる重度の末梢性血管疾患を指す。血管が閉塞することによって血流が止まり、下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患となる。HGF遺伝子治療薬を血管が詰まっている部位周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって症状の改善を図る効果が期待されている。重症虚血肢の患者数は米国だけで推定50万人とみられ、このうち現在の治療法(血管内治療や外科的バイパス手術)の適応とならない患者、あるいはこれら治療法を行うリスクが高いと判断される患者数は10~20万人(国内では1~2万人)と推定されており、こうした患者を対象とした場合の市場規模は約50億ドルと推計されている。

国内では大阪大学医学部附属病院が主導となり、2014年10月より先進医療B制度を活用した医師主導型臨床研究を実施している。2017年8月1日付で、予定症例6例全ての観察期間が終了したことを発表した。現在は、これらデータの取りまとめが行われており、結果が良好であれば承認申請を2017年秋に行う予定で、順調に進めば2018年中の条件及び期限付承認制度による承認が下りる可能性がある。今回の医師主導型臨床研究は、2004?2007年に実施した第3相臨床試験の結果(40症例実施、有効性で統計的有意差が認められた)の再現性を求められたものだが、第3相臨床試験では有効性が確認されていることもあり、承認申請できる可能性は高いと同社では見ている。承認されれば国内で開発された初の遺伝子治療薬となる。なお、条件付承認を得られた段階で、マイルストーン収入を獲得できるものと弊社では見ているが、金額的には軽微と考えられる。

一方、海外では2014年10月から実施してきた第3相のグローバル臨床試験を2016年6月に中止し、現在は米国市場での承認取得を目指すべく、協業先である米スタンフォード大学※と共同で過去の臨床試験データの解析を行い、同社において新試験の計画を策定している段階にある。同社では少ない症例数かつ短期間で終了するような治験デザインを検討しており、主要評価項目も国内と同様「痛みや潰瘍の改善」としてFDA(米食品医薬品局)と協議を進めていく方針となっている。まずは国内の条件及び期限付申請を最優先に取り組んでいることから、臨床試験開始許可(IND)の申請時期及び治験の開始時期は2018年以降にずれ込む可能性がある。なお、治験はスタンフォード大学医学部を中心に限られた少数の施設で実施することを想定している。また、欧州市場については米国での開発にめどが立ったタイミングで、EMA(欧州医薬品庁)との協議を開始する意向となっている。

※スタンフォード大学医学部内にあるSLDDDRS(Stanford Laboratory for Drug, Device Development & Regulatory Science)と呼ばれる組織と協業している。SLDDDRSは、同大医学部のRonald G. Pearl教授が中心となり、革新的な医薬品・医療機器の開発戦略の構築、臨床試験に関する新たな手法の開発と推進、そのために必要なスタンフォード大他組織との連携などを手掛けている。


2. NF-κBデコイオリゴ
NF-κBデコイオリゴは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる。主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている。

(1) 椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症を適応症とした治療薬となり、患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対しても進行抑制や修復を促す効果が期待できる新タイプの腰痛治療薬として、米国での開発が進められている。米国では患者数が多いだけでなく、椎間板内注射による治療法が一般的となっており、手技に習熟している医師が多いためだ。2017年4月にFDAから第1b相臨床試験開始許可の承認が下り、2017年後半からカリフォルニア州立大学サンディエゴ校等において実施する予定となっている。症例数は24症例で、観察期間は1年となっている。同試験によってPOC※を取得できれば、ライセンスアウト交渉を進めていく方針である。

※POC(Proof of Concept):研究で予測された開発段階にある新薬の有効性をヒトで実証すること。


(2) アトピー性皮膚炎(軟膏剤)
アトピー性皮膚炎患者のうち、顔面に中等症以上の皮疹を有する患者を対象に第3相臨床試験を国内で実施してきたが、主要評価項目においてプラセボ群に対する統計学的有意差が得られなかったため2016年7月に承認申請を断念、現在は臨床試験のデータを検証し、今後の開発方針を検討している段階にある。

現状では、アトピー性皮膚炎患者の中でもある特定の症状の患者に対しては、薬効が認められるデータ結果が得られており、同症状に絞って開発を継続していく可能性もある。ただ、対象患者数は当初想定の8~9万人から数分の1程度に減少するため、仮に上市まで進んだとしても収益性の面で厳しくなる。一方、ステロイドよりも副作用が少ないといった長所を生かすことで、市場規模を拡大できる可能性もある。同社はこうした点を踏まえ、販売提携先である塩野義製薬の意向も確認しながら、今後の開発方針を決定することとしている。

(3) 改良型デコイ「キメラデコイ」の製品開発を開始
同社は2016年7月に、改良型デコイ「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、製品開発を開始したと発表した。従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、「STAT6」と「NF-κB」という炎症に関わる2つの重要な転写因子を同時に抑制する働きを持つため、従来のNF-κBデコイオリゴに比べ格段に高い炎症抑制効果を持つことが動物実験で明らかとなっている。また、生体内での安定性に優れるほか、NF-κBデコイオリゴよりも分子量が3?4割少ないため生産コストも低くなるといった長所を持つ。

同社では具体的な対象疾患として、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの炎症性疾患を想定している。なお、既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後新たに開発するものに関しては基本的に「キメラデコイ」で進めていくことになる。

3. 高血圧DNAワクチン
DNA治療ワクチンの1つとして、高血圧症を対象としたDNAワクチンの開発を進めている。大阪大学の森下教授の研究チームにより基本技術が開発されたもので、昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで、長期間安定した降圧作用を発揮するワクチンとなる。

高血圧治療薬の市場規模は国内だけでも5,000億円以上、世界では数兆円規模となっており、この一部を代替することを目指している。現在、主力の治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるが、毎日服用する必要があるほか薬価も高い。このため、発展途上国では医療経済上の問題から使用が限定的となっている。同社が開発するDNAワクチンは高薬価になると想定されるが、1回の治療で長期間の薬効が期待できるため、トータルの治療コストは低くなる可能性があり、開発に成功すれば発展途上国も含めて普及拡大が期待される。

同社では、オーストラリアにおいて2017年7月に臨床試験届けを規制当局であるTGA(薬品・医薬品行政局)に提出済みとなっている。実質的な審査機関であるHREC(Human Research Ethics Committee)の審査は既に終了しており、2017年後半から、第1/2相臨床試験を開始する予定となっている。症例数は24例で、観察期間は1年、試験の終了時期は2019年中を目途としている。安全性や副作用等の確認だけでなく有効性の確認も行うことになる。同プロジェクトに関しては潜在市場が大きいこともありグローバル製薬企業からの注目度も高い。このため、POCを取得した段階でライセンス契約が決まる可能性もあり、今後の動向が注目される。

なお、DNAワクチンに関しては出資先であるVicalと戦略的事業提携契約を締結している。アンジェスはDNAワクチン分野を、遺伝子治療薬及び核酸医薬に次ぐ第3の柱として育成していく考えで、そのためにDNAワクチンで長年の経験と広範な知識・開発ノウハウを持ち、製造設備も保有するVicalは最良のパートナーと判断したためだ。

なお、高血圧DNAワクチンについては、犬慢性心不全を対象とした動物用医薬品としての開発も、共同開発先であるDSファーマアニマルヘルス(株)※で行われている。また、東京大学医学部附属病院の寄付講座において、脳梗塞や心筋梗塞の発症率を低下させる効果があることなども研究成果として挙がっており、同病院の研究グループにて論文も発表されている。

※大日本住友製薬<4506>の子会社、2015年10月に共同開発契約締結を発表した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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