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4308 Jストリーム

東証G
374円
前日比
-5
-1.32%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
42.5 0.89 4.28 4,946
時価総額 105億円
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決算発表予定日

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Jストリーム Research Memo(6):同社が提唱してきたEVCがコロナ禍を契機に広がりを見せる


■Jストリーム<4308>の事業戦略

1. グループ経営ビジョン
スマートフォンなど動画視聴可能なデバイスを個人が常時携帯する一方、Wi-Fi環境の充実や5Gの普及などもあり、屋内外でインターネット動画を視聴する環境整備が進んでいる。テレビから離れた若者は、いつでも様々なデバイスを使って好みの動画を視聴する。SNSや社内ポータルなどの利用増加、動画を利用するコストの低下や効果の拡大が、さらに動画配信の環境を充実させる。このように動画利用のシーンが急拡大し動画配信市場は大きく伸び始めたが、コロナ禍をきっかけに、巣ごもり需要や非接触ニーズが動画配信市場の拡大に拍車をかけた。すでに動画配信は一般企業や人々の生活に組み込まれたものになっており、コロナ禍が収束した後も企業にとって重要なコミュニケーション手段になると考えられる。同社が提唱してきたEVC※の世界観が社会や企業、個人に広がりつつあるといえる。

※EVC(Enterprise Video Communications):一般企業における動画を使ったコミュニケーション。例えば、社内情報共有を目的とした動画利用など。


同社及び同社グループ各社は、こうした市場で社会のデジタル化を支援し社会の発展に貢献していくことをビジョンとしている。ニーズに合致した機能や最新テクノロジーを開発し、顧客の課題を解決する最先端の動画ソリューションカンパニーへと進化することを目指している。現在EVC領域では、医薬系企業全般で起こっているデジタルマーケティングシフトによりライブ配信が急速に伸びたほか、一般企業ではeラーニングや統合型マーケティングなどが拡大、メディア系企業ではライブイベントの配信も広がってきた。OTT※領域では、事業者の動画配信サービス参入や放送と通信の融合・再編が進んでいる。同社は急速に広がるビジネスチャンスに対し、戦略市場を医薬系企業のEVC領域、一般企業のEVC領域、そして放送業界を中心としたメディア系企業のOTT領域に3区分して事業活動を推進している。

※OTT(Over The Top):インターネットを通じてコンテンツを配信するサービスのこと。動画配信サービスや音楽配信サービスなどに代表される。



医薬系企業と一般企業のEVC領域、メディア系企業などOTT領域で事業戦略を展開
2. 事業戦略
(1) 医薬業界のEVC領域の事業戦略
EVC領域のなかで同社が最も重視しているのが、同社売上高で大きな割合を占める医薬業界である。医薬業界の中長期的課題は、薬価の引き下げや後発医薬品の普及による国内市場の競争激化、医薬品プロモーションコードの変更による非対面営業の増加である。さらに、コロナ禍の影響によりメーカーMR※の対面営業が制限され、ライブ配信、専門誌を活用した非対面営業へとプロモーション戦略を転換することが必要となっている。

※MR(Medical Representative):医師に自社の薬の成分や使用方法、効能について説明する医薬情報担当者のこと。


同社は医薬系企業や各専門医学会・医薬機器関連メーカーのWeb講演会をサポートしている。4Kといった高繊細ニーズなどにも対応しているが、さらに業界のプロモーションコスト構造の見直しにまで踏み込んで、医薬業界のデジタルマーケティングシフト支援を行おうとしている。このため、DMP※1によるWeb講演会視聴ログの活用促進、主要CMS※2へのプラグイン提供による「J-Stream Equipmedia」の機能拡張、デジタル資材のファクトリー機能の提供など、医薬系企業のプロモーション戦略の転換をサポートしていく方針だ。これによって同社の主要取引先の支店が開催するライブ配信の案件も獲得していく方針である。

※1 DMP(Data Management Platform):個人のWeb閲覧や動画視聴履歴、商品購入、問い合わせといったWeb上の行動をデータとして蓄積するプラットフォーム。これにより、各人に適切な広告を配信するなど企業のマーケティングに役立てることができる。
※2 CMS(Contents Management System):専門知識がなくてもサイトやコンテンツを構築・管理・更新できるシステム。


(2) 金融及びその他の業種のEVC領域の事業戦略
欧米企業では既に企業の動画活用が浸透している。日本企業においても顧客や株主、取引先などのステークホルダーとの効率的なコミュニケーションを図るため、動画活用の機会が増えてきた。また、動画を活用することで働き方改革やコスト削減、効果の可視化、同報性など社内的なメリットも大きく、コロナ禍をきっかけに動画配信の有効性の認知が一段と進んだことも大きな要因と言える。このため、株主総会のオンライン化など用途特化型のサービスが急速に拡大しており、動画の利用機会は今後大きく増加していくと考えられる。また、5GやIoT、VR・ARなど次世代のインターネット環境が整備されつつあり、双方向や高画質などさらなる大容量化へ向けたニーズも急速に拡大することが予想されている。

同社はこうした環境変化に先行して「J-Stream Equipmedia」に最新テクノロジーや外部連携などを組み込むことで、用途に即した高付加価値のサービスを提供してきた。さらに現在、同社サービスの届かない分野に関して、有力なSaaSプラットフォームとの連携を進めるなど協調戦略を実施しており、拡張機能プラグインによるPlayerの提供や個人視聴ログとの連携が可能となった。また、動画制作ができるSaaS※1に対しては、API※2やSDK※3による連携機能を「J-Stream Equipmedia」内に実装していく方針である。このようにして同社は、EVC領域で広がるビジネスチャンスの確保を狙っている。

※1 SaaS(Software as a Service):クラウドサービスの一種で、インターネット上でメールや文書作成などを行えるほか、複数人による編集や閲覧も可能にするといったサービス形態。インターネット上で利用するため、どのデバイスでも利用可能になる。
※2 API(Application Programming Interface):ソフトウェア開発において、機能を拡張させるために既に作成・公開されているデータやソフトウェア機能を連携させて共有できる仕組みのこと。利用者にとっては、1つのアカウントで複数のサイトにログインすることや郵便番号を入力して住所入力を容易可能とするなどのメリットがある。
※3 SDK(Software Development Kit):ソフトウェア開発を容易に行うために、必要なプログラムコードなどの下準備が一式にまとまったもの。


(3) 放送業界を中心としたOTT領域の事業戦略
5Gの普及が迫っている。2020年4月1日にはNHKが放送同時配信を本格的にスタートし、民放各局もデジタル戦略を推進する姿勢を強めており、インターネットの重要性が増している。しかし放送事業者などのコンテンツホルダーが、短期間で安定した配信システムを独自に構築するのは至難である。とはいえ、プラットフォームを外部企業に依存していては、コンテンツホルダーとして効果・効率的なマネタイズ戦略が組めず、同業との差別化もできない。したがってコンテンツホルダーは、中長期的に独自の配信システムを構築していく必要に迫られることになる。

状況をあらかじめ見据えていた同社は、従来からサポートしているネット配信基盤の構築や運用支援に加え、地上波放送品質に準拠した放送同時配信のソリューションも開始した。編成情報連携や広告挿入といった放送同時配信の基盤を「J-Stream Equipmedia」へシームレスに連携させて利便性を向上する一方、地上波広告との連動広告メニューや広告データ分析の研究開発を進めている。さらにコロナ禍で苦戦を強いられるエンタメ業界に対しては、ライブイベントの配信やマネタイズの仕組みを提案することで、同業界の収益化にも貢献している。同社は、このように放送同時配信というビジネスチャンスに踏み込むことで、コンテンツホルダーの収益化に一層貢献していく考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《EY》

 提供:フィスコ

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